11、体質 ①
「……と言う事でございます」
「成る程」
今フランシスはブリジットと通信機による会話中である。彼女は図書室の内部と一冊の古代語で書かれていた魔道具の本ーー正確には魔道具全集と書かれていたらしいのだが、について話していた。
フランシスはその報告を聞いて少し悩んでいた。まだ確信と言うほどの情報ではない。もう少し何かしらの情報があれば、ポスフォード侯爵を問い詰めることができるのだが。
そんな時ふと、思い出したことがあった。もしブリジットがその本の付近で仕事をしていたのなら、何かしらの違和感を覚えていても良いはずだ。
「ちなみにその本の付近で何か感じたことはあったか?」
「感じたこと、ですか……?」
最初は怪訝な声をしていたブリジットも、そう言えば、と話してくれる。背筋が凍るような不快感があったり、図書室に入った時の違和感があったりと彼に伝えてくれたのだ。
「昔同じような経験をした事がなかったか?」
「……幼い頃、一度ありました。それがどうかいたしましたか?」
何故そのような事を?と言わんばかりの声だった。この声を聞いてフランシスは、ブリジットの両親があの事件について話していない事を悟る。
「いや、何でもない。今日も報告助かった。ゆっくり休んでくれ」
「承知致しました」
こうして彼女たちの夜な夜な行われる報告会は終わったのだった。
「旦那様」
「ああ、ヨハン。今日も助かった」
「いえ、これくらいは何ともありませんよ」
ヨハンは手際よく空っぽのティーカップにお茶を入れていた。主人はもう少し頭を悩ませるだろうと、考えた結果である。
「ヨハン、ブリジットの件だが……」
「調べております、調査書をお渡しいたしましょうか?」
「頼む」
ヨハンから数枚の紙を束ねているものを渡される。これが調査書なのだ。ペラペラと報告書の文字を見るフランシス。そして知りたい報告の部分で目を止め、じっくりと読み始める。
読み終わって一息ついていたところにヨハンから声がかかる。
「彼女はその後、幼少と言う事で何も行われなかったようです」
「最終的にはそのまま放置された、と言うことか」
「そのようです」
「まあ、それが彼女にとっては良かったかもしれないな」
フランシスは顔をしかめて、手元の報告書を見る。
その報告書にはこんな事が書かれているのだ。
ーーある伯爵家に招かれたベルジェ伯爵は、妻と幼い娘たちと共に伯爵家に訪れる。
家を案内されていたベルジェ伯爵家だったが、急にある部屋の前で三女のブリジットが大泣きをしてしまった。その時の彼女の言葉は、怖い、寒い等、理解のしにくいものだったのである。季節は夏、案内は昼間行われていた。
何が起こったか理解ができなかった伯爵は彼女をあやし、案内を中止して客間に向かうと既に彼女は何事もなかったかのように笑っていた。
その後、その伯爵家には使用が禁止されている魔道具がある事が分かり、その伯爵家は処罰を受けている。その魔道具があった部屋が、三女のブリジットが大泣きした部屋だった。
そして秘密裏に一度、彼女が禁忌の魔道具に反応をしているか確認するため、ベルジェ伯爵家に陛下から遣いを出した事がある。直接見せることは叶わなかったが、当の本人は怖い、と言って遣いと顔を合わせることなく部屋にこもっていたらしい。
この事が切欠で陛下はまた遣いを送り、彼女のことを調べさせてくれとお願いをしたらしい。しかし、彼女がまだ幼少であることを理由にやんわりと保留にされて今に至るそうだ。
「流石に王族も幼少の女の子に実験をするなど、気が引けたのかもしれないな」
「その様ですね。命令ではなく、お願いからそう見るのが妥当でしょう」
「あとはこの報告書を見る限り、彼女は禁忌の魔道具に反応している可能性もある」
「そんな事がわかるのでしょうか?ブリジットさんは普通の方の様に見受けられますが……」
「可能性は否定できない。帰ってきたら確認を急ぐぞ」
「承知致しました」
ヨハンが出て行くと同時に、フランシスは机にしまっていた便箋を取り出す。そして2通手紙をしたためると、ちょうど戻ってきたヨハンに渡し、ある場所に送る様に指示をしたのだった。
ブリジット大丈夫かな、と今更思うこの頃。
次話投稿は明日を予定しております。




