10、ポスフォード侯爵家 ⑥
「………ブリジット、どうしたの?」
声が聞こえてハッと思い出す。今彼女は2人部屋でヴェラとモニカと情報交換の最中だ。先ほどから無言を貫き通していたーー考え事をしていただけだが、そんな彼女を二人が心配そうな顔で見ていた。
「ブリジットが珍しいねー。考え事しているなんてさ」
正直に謝るブリジット。情報交換中なのになんたる失態だ、と彼女は思っていた。ヴェラもブリジットが思っていることは分かっているのだが、気を入れなおすように、と注意をしておく。
「考え事をしているということは、何か情報を掴んだということでしょう?私たちには話せないことなの?」
「……そんなに頼りないかなー私たち」
ヴェラとモニカはどちらかと言うと、頼ってくれないブリジットに不満を抱いていた。人間全て完璧にできるわけではないことは、彼女たちも知っている。いかにブリジットだからとは言え、全てを抱える必要はない。
彼女たち、特にヴェラはその事をブリジットに説いていく。ブリジットは全てを完璧に行おうという節がある。それは時によっては良い事も悪い事もあるからだ。
ヴェラの話を聞いて、改めてブリジットは思う。私は他の人に頼ることを良しとしていないのではないかと。自分が判断できなければ、他の人に知恵を借りる。そんな当たり前なことを理解したようで実行はできていなかったのかもしれない、と。
「申し訳ございません」
「まあ、ブリジットは何でも出来るからさー、私の知恵なんて要らないかもしれないけど……寂しいじゃん」
モニカはへらっと笑っているように見えて、少し傷ついているようだ。眉がへの字に下がっている。
そんな彼女を見て、話すべきか迷っていたことを話すことに決めたのだった。
気のせいかもしれない、と言う前置きをした上で、今日の顛末を彼女たちに話す。
「成る程、本を触るなとね」
「本棚の掃除は侯爵様が行うって本当に趣味なのかなー?」
「と言うと?」
「なんか隠してそう」
モニカがこめかみを抑えながら目をつぶって考えている。確かに怪しさ満載だ。
「でも、この屋敷の使用人はそれを受け入れているのよね?」
「そうですね、マリーに聞いたところ、〝そんな趣味もある旦那様も素敵!〟と言ってました」
「ポスフォード侯爵様は、うちの旦那様と人気を2分されているって言ってましたしねー」
確かにダンディな顔で爽やかに言われれば、そうなんだーと思ってしまうだろうが、彼女たちはどちらかと言うとフランシスでイケメン耐性が付いている。そして3人がイケメンにあまり興味がないこともあるだろうが。
「それに、ブリジットが言っていた古代語の本?が気になるわね」
「ええ、その本以外は全て現代語で書かれておりました」
「しかも背表紙の題名が、分類と関係ない場所にある点が気になるなー」
「そうですね、魔道具の分類は別にありましたからね」
「けど、偶然って事もありえるわよね?」
「うーん、確かにー」
怪しそうな図書館ではあるが、その本だけが実際は怪しいだけであり、完全に決めつけることはできなかった。
「一応報告はすべきね、ブリジットお願いできるかしら?」
「はい、分かりました」
話し合いの最初に抱えていたモヤモヤはなくなり、ブリジットは晴れ晴れとした気持ちで去っていく。
「これでもう少し頼ってくれると良いけどね?」
「ブリジットは何でもできるから、頼るって事を忘れてるのかもー」
「私たちも出来るところを見せてブリジットに頼ってもらいましょう」
「らじゃー!」
こうして彼女たちの夜は更けていった。
次はまたフランシスの登場です。
ブリジットの過去も少しだけご紹介します。
次回は明日、更新予定です!




