訪問者
ドアを開けるとそこには全身黒い布を纏った“何か”が立っていた。
百合子は一瞬身構えたが、「…ゆぅりこちゃぁん」という気の抜けた甘ったるい声を聞いて『マミ』を部屋の中へ案内する。
マミはソファーにうつ伏せに倒れ込むと、黒い布から顔だけ出して、百合子を見つめる。
「また今日も見つけられなかったよぉ…」
百合子は横に腰掛け、マミの頭を撫でてやる。くせっ毛の色素の薄い茶色い髪はふわふわしていて、百合子は「よしよし」と優しく微笑んだ。
同じ“プレイヤー”であるマミは、百合子を慕ってこの世界まで付いてきたのだ。マミは、折角無理言って付いてきたのに目的を果たせないでいることを悔しがる。
「ゆっくり探しましょ」
百合子が優しく声を掛けると、マミは起き上がって纏っていた黒い布を取ると、百合子にお辞儀をする。
薄いピンク色でフリルの付いた可愛らしい服を着て
、百合子よりだいぶ幼い―――この世界で“幼女”と呼ばれるような容姿のマミは、鼻を赤くして目を潤ませている。
「ゆりこちゃぁん…ありがとぉ…」
「明日からは暫くまた一緒に探せるから、ね」
百合子が微笑むと、マミもやっと笑顔を見せた。
百合子は学校でのことを、マミは街のまわって更に探索範囲を広げたことを互いに報告し合う。
「隣町には移動できないんじゃなかった?」
「うん、一度申請を出さなきゃいけないからね。そうすると履歴が残るし見つけやすくはなるんだけど…」
マミは少し言葉を濁し、続ける。
「この世界に来る前に、ゆりこちゃんも移動の履歴は確認したでしょ?」
百合子は頷く。
「今日も確認しに行ったんだけどね、やっぱり誰一人この街から出た履歴は無かったの…」
マミは不安そうに百合子を見つめた。言わんとしていることが分かった百合子は「そういうこと…」とソファーに背中をつけて溜め息をついた。




