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21話

 衣装係の件から一夜明けた頃、

私はある使用人の証言を耳にした。


夜番に立っていた、下働きのメイドだという。

人目につかぬよう、私は彼女を小さな控え室に呼んだ。

彼女は落ち着かない様子で、指先を何度も擦り合わせている。


「見間違いだったら、ごめんなさい……」


そう前置きしてから、彼女はポツポツと語り出した。


「あの日……王子殿下の誕生パーティーの夜です。夜半過ぎ、廊下を巡回していたとき――」


その廊下は、ミア様の私室へと続く区画だった。


「部屋の前の燭台が、一本だけ消えていたんです。不思議に思って近づいたら……」


彼女はごくりと唾を飲み込む。


「扉が、静かに開いて……中から誰かが出てきました」


「誰なの?」


私が問いかけると、彼女は首を横に振った。


「顔は……よく見えませんでした。フードのようなものを被っていて……」


それでも、覚えていることはあるらしい。


「背は……男性にしては、少し低めだったと思います。歩き方も、音を立てないようにしている感じで……」


「使用人?」


「……分かりません。でも、下働きの者ではないと思います」


理由を聞くと、彼女は小さく声を落とした。


「立ち姿が……あまりにも、堂々としていました」


使用人特有の、控えめな身のこなしではなかった。


「その人は、どこへ?」


「北側の廊下を曲がって……闇の中に消えました」


 北側――それは、使用人区域とは反対の方向になる。


「そのあと、ミア様の部屋は?」


「……灯りは、ついていませんでした」


 つまり。


「誰かが、夜中に私の部屋へ入り、用を済ませて、黙って出ていった」


 私はそう結論づけた。

ヴィクトルは腕を組み、低く言う。


「目撃者が一人だけ、顔は不明。ですが、場所と時間が問題ですね」


「ええ。ドレスが消えた夜と、ぴったり重なる」


 偶然にしては、出来すぎている。

ミアの部屋から出てきた人物。

衣装係の嘘。消えたドレス。

――点と点が、ようやく線になり始めていた。


 そして私は、嫌な予感を抑えきれずにいた。


 この件、“ただの盗難”では終わらない。

そんな確信だけが、夜の廊下の冷えた空気のように、じわじわと胸に広がっていた。


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