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没落令嬢vs金策  作者: yononaka


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没落令嬢vsデカくてワルいヤツ

 ぬらり、と石棺から現れた大男。

 それを確認した術士は、


「起動したな。よし、よし!

 これで勝てる。勝てるぞ。ふひははは!

 やれ、奴らを殺──」


 テンションが大いに上がり、そのままフレッシュゴーレムに命じる。

 だが、


「誰に命令している」


 フレッシュゴーレムは流暢に、生きた人間と変わらぬ発音でそう返した。


「なっ……」

「誰に、命令している。そう聞いた」


 振り向いてゴーレムを見やる術士。

 杖を向け、


「《バインド》ッ」


 行動を抑制する魔術を行使する。ゴーレムを扱うものの殆どは緊急停止のための命令(コード)を埋め込んでおくものであり、この術士も例に漏れずそれを備えていたはずだった。

 だが、


「痺れはあるが、それでも──」

「待て! あの男を見ろ! お前の名を僭称し街を好き勝手に差配しているのだぞ!

 名誉を復旧したいのならこの私に従うのが最速の道であるのだぞ!」

「僭称ゥ? なるほど。そういう絵図だったわけか。担がれたな。誰にだ。いや、わかるぞ。概ね」


 とまで言い掛けて、


「ああ、いや。それよりもまずはお前か、術士。

 何か他に言いたいことはあるか?」


 巨漢は術士へと向け直す。


「言いたいこと?

 これ以上あるものか。自我まで得るとは、ダンジョンの力の作用か?

 調べたいことはあれども問答はない、さあ! 連中を殺──」

「応」


 轟。拳が振り上げられ、下ろされる。拳一つとっても規格外。握った拳はライヒの頭ほどにもなるか。

 硬さも申し分ないのだろう。それが叩きつけられた術士は血の全てを絞られるようにして吹き出しながら潰れた。


 それからようやくして、ゆらりとライヒとノエルに視線を向ける。特に視線はノエルに強く注がれた。


「お前は……」


 ノエルの言葉に被せるように、


「お前はあのときのガキが、随分とデカくなったな。

 つまり、どれほどかまではわからんが、死んで久しいわけだ」


 にたりと笑う巨漢。

 その相手に対して、ノエルが口にした。その名を。


「ドラルディン……」


「ええと。ノエルがドラルディンで、目の前の益荒男さんもドラルディンで……。あーっと。先代とかそういう……?」


 声を発する二人のうち、後に言葉を吐いたもの。つまりはライヒを見やる。


「んん……?

 あんた、まさか……」


 状況を理解しようと努めているライヒをじつと。


「なんですの?

 ……え、お知り合いでしたっけ? えーっとォ……?」


 脳をフルスロットルに入れて検索を始める。

 それほど物覚えが悪いほうではないと思いつつ、しかし、まったく脳内検索に彼の姿形は引っかからない。


「ククク、いやいや、知らんはずさ。あのときの俺様と来たらチンピラもいいところだ。

 いやさ、アンタに憧れたおかげで強くなれたとも言えるがな」


 拳を掌にぱん、と音を鳴るように叩く。


「ライヒ・グレイトキャピタルだろ。

 見ればわかる。陽光のような黄金の髪、燃えるような感情を見せる瞳、奇跡のように整った体付き。

 なにより……、アンタの体から漂う圧倒的な暴の気配」

「最後のだけは不満がある表現ですわね。……まあ、否定はできませんけれど」


 実際に先ほど巨漢に殺された術士も彼がいなければ喧嘩剣かゴーレムのパーツを蹴り飛ばして殺していたことは間違いない。

 暴によって事件の解決を見ようとするのだと言われればその通りなのだ。

 だが、それが乱世の倣いが残る現代の作法というもの。


「アンタは英雄さ。

 俺のように力の使い方もわからんガキに、どう使えばいいかを教えてくれた。救世主だ」


 直接的に指導したという意味ではない。

 だが、どのようにして、誰に力を振るえば効率的に物事を変えられるか。よろしくない形で伝わったのがわかった。


「……はあー。なるほど、前市長絡みってわけですのね」

「ああ。絡みつっても勝手に憧れて勝手に答えを出しただけだ。その結果として」


 ぬら、と視線をノエルに向ける。


「そこのガキに殺されたがな。

 だが、不満はねえよ。そういうルールで生きてきた」


 で、と巨漢が続ける。


「先代のと言いつつそこのガキを見たってことは、今のドラルディンは」

「俺だよ。

 俺がアンタの成り代わりをしてる」

「成り代わり、ね。ハハハッ。そうか、そうか。ハハハハハッ!」


 哄笑をあげる。


「ってことは、ギュストークが牛耳っていやがるな?」

「そうだ」

「してやられたわけだ。俺様も、俺の周りも」

「……そうだろうさ」

「お前とてうまく乗せられているのに、気にならんのか」

「それは」


「あーっと、タンマタンマ。タンマですわ」


 会話に割り込むライヒ。


「わかった感じの会話やめてくださいまし。全然伝わってこないですわよ。

 わかった感禁止。カッコつけないでくださいまし。全然カッコよく見えないですわよ。一から十まで抜けなくご説明してくださいまし!

 ノエルがドラルディンだったってどういうことですの?

 ていうか、死んだ? 殺された? 成り代わり? 一から十までしっかり説明なさーい!」


 ふんぞりかえるような言葉と姿勢。居丈高とはまさにこのことを指すのだと言わんばかり。


「ライヒ、その」

「わかった、教えてやるよ。死ぬまでの話になるがな」


 つっても、とドラルディンが言葉を続けると同時に踏み込んだ。


 丸太の如き四肢から生み出された力は恐ろしい速度の踏み込みとなり、強烈な破壊力を秘めた突きが見舞われる。対象となったのはノエルではなくライヒだった。

 ライヒはすんでのところで喧嘩剣を盾として構えるが、いい具合の喧嘩剣はあっさりと砕かれ、それでも殺しきれない威力が彼女に襲いかかる。激しい衝突音と共に壁に激突させられるライヒ。


「俺様と一手交えるたびに話してやる。そうじゃなきゃつまんねえだろ」


 肩をバキバキと鳴らしながら、


「なあ、ライヒ様よォ。

 ……見せてくれ、教えてくれよ、俺様が憧れた伝説が吟遊詩人どもが作ったつまんねえ夢見話じゃねえってことをッ!!」


 ライヒに向かい更に進む。ノエルがそれをカットする為に動こうとするが、上回る速度で動いたものがある。ライヒだった。


 衝突した壁を、次は自身の踏み込み台として利用してドラルディンへと突進した。放ったのは蹴り。強烈な飛び蹴りである。

 実戦僧兵(リアルモンク)がお墨付きを与えるに充分と判断した、騎乗落地脚とも呼ばれるもの。

 中空からマナを利用して加速を付けて発する必殺の一撃。戦場において武器を失った騎士が下馬しながら敵兵を蹴り潰すことから騎士や貴族が武威を振るうような戦場においては騎乗落地脚ではなく、騎士の蹴撃(ライダー・キック)などとも呼ばれる。


 その速度がいかほどかと言えば、ライヒを突き飛ばした速度を持つドラルディンが防御姿勢を取ることができないほどのもの。


 自らが入っていた石棺に叩きつけられ、それらが砕けて土煙を上げる。


「ホーッホッホ!!

 だああぁあれが、つまんねえ没落令嬢ですってぇ!?

 この一撃が『つまる令嬢』の証明ですわッ! 毛先から足の小指の爪先までたっぷり詰まってるってェんですのよ!!」


 誰もそんなこと言っていない。支離滅裂。

 感情からのみ発せられた言葉であればそうもなる。


 だが、それもやむないこと。ドラルディンから受けた一撃は常人ならば七孔噴血して死に至るほどのもの。結構な一撃を頂戴したライヒが手加減するほどの思考の余裕など持ち合わせていない。


 しかし、余裕のなさは肉体的な損傷によってではない。

 よくもやってくれたな、という精神的な部分のもの。つまりは喧嘩意地(ゴロメンツ)に火が付いた。そういうことだった。


「最高だあァ!!」


 土煙から現れて突き進むドラルディン。


「頑丈ですわねぇッ!!」


 獰猛な笑みで返すライヒ。

 互いに構えを取り、次なる必殺を放たんとするも、そこでドラルディンは、


「……おっと。傷つけられたら過去のことを話すんだったな」


 冷静に。

 あの一撃を無傷で耐えたわけではない。

 ゴロメンツ、つまりは沸騰したアドレナリンによってありったけを込めた一撃が怪我の一つも出さないわけがないのだ。


「何から話したもんかねえ」

「あなたの話から伺いたいですわね。

 わたくしが前市長をなんとかしたあと。それなりに腐敗してたのは理解していますけれど、四大マフィアだのなんだのなんて当時はなかったはずですわよね」

「あー、そこからか」


 肩を鳴らし、騎乗落地脚で受けたダメージを回復するように呼吸を整えながらドラルディンはその辺りをうろうろと歩く。


「元々マフィアは存在していた。つっても、その頃はベイシンを中心としていた連中の出稼ぎ場としてだったがな。

 アンタが状況を動かしてから、都市にいた連中は外の悪党に喰われ続けるよりも自分たちでシノギを獲るって躍起になってな。

 それからは血みどろの戦いがそこらであったのさ」


 外部のマフィアが持っていたシノギはそうして、見事にちぎられ、分けられ、

『暴力』、『薬物』、『人間』、『密輸』に切り出された。

 切り出されたものが種類ごとに集約していき、結果としてマフィアは四つに纏まった。


「アンタは前市長の一件のあとに外に出たからわからんだろうし、表側の連中も気がついたらマフィアが四つあったって風にしか思えないだろうよ。

 なにせ前身になっていたマフィアは相当上手くやっていたし、前市長たちによって見事なほど隠蔽されてたわけだしな」


 だが、その隠蔽は失脚によって消え去った。

 マフィアは隠れ蓑を失うのであればと台頭を始めた。

 それでもマフィアが潰されなかったのは以前より続いていた運営側との癒着が強固なものだったからだ。

 前市長の後釜を担った今日(こんにち)の汚職派はそういう意味では積極的だった。


 取り決められた内容の中には運営に物申すような立場にあるようなものたちとの敵対を避けるためにアドルインの下層市民以外への直接的な接触を禁じ、

 その下層においてはあたかも治安を維持しているかのように見せたり、金を拠出させたりして都市のために動いているかのようなポーズを取らせた。


「そういうわけで、俺様が知る限りはそういうことで安定を得ていたわけだ。

 ただ、前から気に食わなかったのは──」


 と言葉の中で不意にノエルへと踏み込む。

 ノエルもまたその会話の間隙を狙わんとしていた。

 思惑は妙な噛み合い方をして互いに一撃を中空でぶつかり合わせるに至る。力と技が衝突し、烈風が吹き荒ぶ。


「よもやテメエみてえなガキに殺されるとは思わなかったってことだ」

「死んでいるのは間違いなかったわけだ」

「お陰さんでなあ。クク、しっかり殺されたぜ。流石は選ばれしもの。ガキに殺されるとは思わなかったが、理由がわかれば納得だ」


 互いに距離を取り直す。

 ライヒは追撃しなかった。彼から聞くべきことはまだ多そうだったからだ。


「聞いていれば順風満帆のように聞こえますけれど、どうしてノエルに殺されたんですの?

 弱いから……ってわけじゃありませんわよねえ。

 この数手のやり取りでわかっていることではありますけれど。

 正直、帰郷してからわたくし自身と同じくらいに練り上げられている武芸者と殴りっこになったのはあなたが初めてでしてよ」


 ヒョルド、イングラヴァなど短い期間で中々に激戦を繰り広げたし、ノエルの腕前も見はしている。

 それでも彼女が武芸者と区切りを入れたのはヒョルド以外は武芸以外の力を備えていたから。

 錬成術であれ、なんであれ。ライヒに自分とは違うと思わせる何かがあった。

 その点で言えばヒョルドやドラルディンは同族のにおいがした。


「過分なご評価に緊張するってもんだな」

「緊張してから言いなさいな」

「へっ」


 にたりと笑うと、


「今であってもコイツがガチでやりゃ俺なんぞ一瞬で片付けられるんだろうさ」


 布まみれの剣を指差しながら、


「だが、殺された理由はこいつじゃねえ。

 ギュストークの野郎から始まっている」

「組織ナンバーツーの?」


 ライヒも何度も見てきた男。ギュストーク。ナンバーツーというだけではない。

 組織全体を取り仕切る、実質的なトップとも目されているのは耳にしている。


「なるほど、随分とのしあがったわけだ。

 やつは元々幹部候補生でな、この都市の市長経験もある家柄に生まれたガキさ。どさくさ紛れで失脚して久しいらしいが」


 頷き、言葉を漏らす。

 毛並みのいいアイツはやはり使える男だったようだな、と納得したようにして言葉を続けた。


「頭の滑らかさだけじゃねえ。

 家柄が持つコネクションを動員して、都市の、ある意味での権力的な分割統治の骨子を作り上げた」

「そんなおぼっちゃまの計画であなたはどうして殺されたんですの」

「他の連中は俺様に従ってきたが、あいつだけはあれこれと野心を広げようと提言してきたが、全部蹴った。

 俺様はそんなのどうでもよかったからな。腕力で進めることができりゃそれで構わなかったんだよ。」

「クソ野郎の自己解説(カムアウト)来ましたわね」

「隠してもしょうがねえだろう」


 勢力の状況を整えるためにドラルディンの暴力を使い、見事に都市とマフィアの支配圏を分断させた。

 だが、


「殺されたんですわよね」

「ああ、そこのにな」


 ライヒはノエルを見やる。


「バカなツラを晒して聞きますけど、何があったんですの」


 ノエルはライヒからの言葉に視線を外し、しかしすぐに向け直す。

 明らかな隙であったが、ドラルディンはそこに付け入らなかった。彼にとってもまたノエルの動機には興味があったからだ。


「それが一番、近道だと思ったから」

「近道?」

「悪党どもを皆殺しにするのには、それが一番早いと直観した」


 ライヒは少し考えて、それから、


「ゴミ掃除をするんってんじゃないんですのよ。でも、そういうことなんでしょうね。ノエルがしようとしたことは」

「……そうだ」

「それを計画したのがギュストーク、と」

「それも、そうだ」


 マフィアの力で都市を支配したいギュストーク。

 悪党を一箇所にまとめて一気に、確実に消そうとしていたノエル。

 計画における最初の流血はドラルディン。

 そして、名を継いでノエルが台頭する。


(都市に来たときに流れてきていた噂よりは安定しているなあと思ったのはノエルが上にいて、ある程度悪党どもに睨みを効かせていたからですのね)


 それに加えて、


(グレイスを名乗り、セリアレのところにいったのはある意味でノエルやギュストークの手伝いを意図せずにやったってことなのですわね。

 ……ん。……んー。でも、それだと)


 気になったことは目あかしせずにはいられない。ライヒの悪癖の一つである。これで何度ダンジョンで罠を踏んだかわからない。それでもやめない。それが癖というものだった。


「セリアレのところで殴り込みに行ったんではなくて、ポールのことを聞きに行った」


 それを知るのはグレイスなので、


「──と、傭兵から聞いていますわよ」


 雑なフォロー。


「あれがあったから計画を前倒した。

 今の都市にもたらされている混沌は俺の責任でもあるから」

「何かは知らんが、もう少し穏便な手段で四つを一つに纏めるつもりだったわけだ。……くく、はははっ。そんなのうまくいくわけねーだろ、クソガキ!」


 ひとしきり笑ったあとにドラルディンがノエルの考えを一蹴した。


「法が嫌いだから悪党って呼ばれてんだ。

 誰かの意図で見事に動けるんだったら役人になってるっつーんだよ」


 がははと笑いながら、

 それに釣られるようにしてライヒもがははと笑う。


「おっしゃる通りですわね。冒険者であれ、悪党であれ、善悪の構造はあれど己の自由を求めるからその道から外れる。

 ノエル、あなたもそうでしょう。

 悪を嫌うからこそ、悪を根絶しようとした。

 そこに都市の道義は存在しない。

 他者の定めた道義のないあなたが今望んでいることはなんですの?」


 マフィアは纏まった。

 悪党を一掃する準備は完了している。

 だが、それでもなおノエルはドラルディンとしてマフィア側に付こうとしている。


 そこまできて、ようやくライヒは『ああ』と納得した。

 納得してしまった。


「……それが望みですのね」


 明確で明瞭な答えはここでは彼女は出すことはしなかった。


 都市の道義で動かない冒険者の彼女が判断する一つの法則にかつて彼女に冒険者のあり方を教えた女──グレイスの名の、その本来の持ち主が持つ『数寄と傾奇』という思想があった。

 一種のドラマを求め、望み、行動の結果の満足感を優先する無法の美学。


 ここで目明かしするのはつまらない。

 なぜなら、舞台はもう存在しているから。


「であれば話はもうありませんわ。

 ノエル」


 彼女のそうした思想をノエルはやはり直観、あるいは直感して、呼ばれたがゆえに視線だけを向けた。


「全ての決着と答え。盤上でお待ちしておりますわよ」


 端的に言えば、『逃げんなよ』だった。

 迂遠な言葉だが、それは明確な売り言葉だった。


「逃げるかよ。

 ライヒこそ、受け止める準備をしておくんだな」

「ええ。しっかりと鍛えておきますわ」


 それを聞いてノエルは少しだけ微笑む。

 思う言葉の、願っていた行動のぶつける先をようやく確定させることができたからだった。

 彼もまた、ダンジョンアタックの練習に来たつもりだったが、その意義も果たされないだろうと納得してこの場から去っていった。


「さーてと」

「一対一になったわけか?」

「道は本当に一つだけなのかしら」


 にたりと笑う。

 そこに秩序と道義。平和と安定を愛する人間の表情など一片たりともない。

 あるのは徹底的な答えへの追求。

 彼女は理解してるのだ。

 自らが出す答えそのものが、大多数の人間にとっての幸福に繋がるであろうことが。無意識でそれを選び取る。無法の美学に傾倒していようとも。


「この『俺様』まで使うつもりか、ライヒ・グレイトキャピタル」


 ノエルとは違う。直観することはない。

 だが、ドラルディンは直感する。

 あの日、死んだのはこの出会いのためだったのだと。


「取るに足らないマフィアの玉座よりも、」

「冥府渡りの手形の方が価値があると思う人間もいるでしょう」

「ククッ。違いねえ」


 ドラルディン・ファミリーは暴力を主張し、武器とし、存在意義としていた。

 その根底にあるのはドラルディンの行き場のない感情から発されたものだった。

 誰も自分の全力を受け止めきれない。自分の叫びを恫喝としか取ることができない。

 だが今、ついに意味を見出した。


 この女だ。


 この女に付いていけば、得たかったものの全てを掴むことができるのだと。

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