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ふく×ふく3 お化けと お寿司と 姉弟子&妹弟子  作者: こっとんこーぼー(琴音工房)


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4、戦いすんで

 戦いが終わり、心地ここちよさを感じさせる風がほほを軽く撫でていく。


 周囲から残っていた妖気が薄れていくのを感じ、

「終わったかな」

 龍星りゅうせいが辺りを見渡して告げる。

 ただ言葉とは裏腹に、警戒をいた様子はなく、なにかあればすぐにでも動き出せるようにしていた。

 

「いや、これ練習の数倍キツいんだけど……」

 刀化した神器じんぎ氷天ひょうてんを手に提げ、陽樹はるきがぼやく。

 彼も息を整えながら、龍星同様に全方向に注意を払っている。


「思ってるよりも体力と気力が持っていかれるよな」

「舞うだけならまだどうにかなるんだけどね」


「ふたりともお見事にゃ。もう妖気はひとカケラも残ってないから警戒を解いても大丈夫にゃ」

 スズノがふたりへと声をかける。


 龍星と陽樹は肩のチカラを抜いてひと息つくと、スズノの元へ向かい、

「援護してくれて助かった」

「それとみんなを守ってくれてありがとう」

 と素直な感謝を口にした。


 ふたりが述べた礼に、スズノはどこか照れくさそうに、

「どういたしましてにゃ」

 と応じる。


 陽樹は氷天を未散花みさんがへとしまい込むと、

「ソラちゃん、大丈夫?」

 空子たかこへと尋ねる。


 空子はスズノのかたわらで肩を小さく震わせていた。


「ごめんにゃ、怖い思いをさせちゃったにゃ。妖気のカケラを探すくらいなら危険はないという認識は改めたほうがよさそうだにゃ……ダーリンとハルハルも委員長になんか言葉をかけてあげて」

 スズノの言葉に、


 龍星はちらりと空子を見て、

「……いやたぶんだけど、この様子ならクーコさんは大丈夫だと思う」

 とだけ答えた。 

 彼の言葉に、陽樹もうなずいてみせる。


 ふたりのどこかそっけない態度に、

「ちょいちょいちょい、ふたりともその態度はちょっとないんじゃないかにゃ」

「少々デリカシーに欠けていますわね」

「さすがのうちもそう思うんけどな」

 スズノたちが次々と不平を口にし、


「委員長もふたりになんか言ってやるといいにゃ」

 スズノが空子に振ると、


 空子は深呼吸をしたあと、

「す……」

 と、ひと言発した。


「す?」

 スズノ、瑠璃るり琥珀こはくの3人が視線を空子に向け、次の言葉を待つ。


「す、すごかったーっ!! 鶴さん亀さんも見た? 見てた? 最初に見たときはなにかと思ったけれど、あの流体金属でできた柱みたいな状態からわたしの姿を真似るのにCGモーフィングみたいななめらかさでありながらも精巧に真似るわけじゃなくて解像度が低いミミクリーだったのが逆にリアルで本当に良かった!」


「こっちを指さして口を開くように絶叫するのも、有名な映画のワンシーンみたいですっごく感動的! ワンシーンっていうかヒロイン体験ができたのが感動っていうか。で、そのあとの樹木と両生類のキメラみたいになって触手で攻撃してくるところなんかもっと近くでもっといろいろな方向から見てみたかった!」


「動きを封じられてふたりに追い詰められたときの必死のあがきも良かったけれど、あの散り際も怪物の最後って感じで良かったよね。まあできればトドメのとき、ふたりが『くたばれバケモノ』とか『Say,hello(アーンしな)』 とかやってくれてたら最高だったのだけれども」


「そういえばアレに名前とかあるのかな、ないんだったらこっちで勝手につけてもいいよね。沼の怪物だとスワンプシングとかになるから、川縁かわべりに出現したモンスターってことでリバーサイドシングってのはどうかな? でもなんか言いにくい気がするし、ちょっといくつか候補を考えないと」


 目をきらきらと輝かせた空子の口から嬉々とした感想が次から次へ矢継やつばやに飛び出してくる。 


 怒濤どとうのごとくまくし立てる彼女に対して、スズノをはじめ瑠璃と琥珀も目を丸くし、反応に困る表情を浮かべて視線を龍星と陽樹に向ける。


「ソラちゃん、いわゆるクリーチャー……怪物とかモンスターが出てくる映画のマニアというか大ファンだから」

画面スクリーンから飛び出てきたような実物見ちゃったから、しばらくはおさまらないんじゃないかなあ」


「じゃあ、さっき委員長があげた悲鳴って……」

「うれしい悲鳴だね」

「だな」


「怪物に狙われてかなりあやうい局面だったと思いますけど……」

「根性がわりすぎだにゃ……」

「それはそう思う」


「そうすると震えてたり、声が出せずにいたのは……」

「うれしくて興奮してたんだろうな」

「だね」


「もしかして筋金すじがね入りの怪物好きだったりするかにゃ?」

「かなりだね。夏祭りで僕らと戦ったシズカさんが『上半身は人、下半身は蜘蛛の姿になったよ』って教えたときも……」

「『なんで写真撮ってこなかったの!?』ってすっごい無茶をおっしゃってくれたからね」


 空子は妖異につける名前の候補をぶつぶつとひとり呟いていたが、龍星の言葉に反応して、

「そうだ、写真! 写真を撮るの忘れてた! 動画はおろか写真撮るのを忘れるなんて、わたしのばかばかばか! あーぁ、あのレベルのクリーチャーに出会えるのだったらバイト代でボディカメラでも買っておけばよかった……ってそうか、レポート仕上げるのに街中を見てまわるんだから遭遇する可能性はゼロじゃないわけだしこのさい入手しておいたほうが……『備えあれば憂いなし』ともいうし。ああ、でも今までのバイト代で買えるかなあ……」


 熱量が落ちないままの空子を見て、

「なんというんか、人は見かけによらんというんか……」

「……意外な一面をお持ちですのね」

「委員長をフクマ探しやカケラ探しに誘うのは、別の意味で危険ということが分かったにゃ」



 そんな会話を交わしている一同がいる川原からかなり離れた土堤の上で、双眼鏡を手にし、一部始終を見ていたふたりの少女がいた。

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