EP-017 SYNC ERROR: 普通じゃない日常
眠い目を擦りながら、朝食のテーブルにつく。
それはいつもの日常とは異なっていた。
お母さんと二人だけ——ではなく、もう一人……。そう、真堂蓮がいた。
そうだった。昨日から真堂が泊まっているんだった。
わたしたちを護るためとはいえ、年頃の女の子がいる家に若い男性が泊まるのってどうなの? ってお母さんに愚痴ったけど、「あなたは普通にしていなさい」と取り合ってもらえなかった。お母さんは平気なんだろうか? その顔は無表情で、何も読み取れなかった。
「おはよーございます。愛衣ちゃん。お寝坊さんだねえ。若いのに、昨日の疲れがまだ取れないか?」
真堂の軽口がカンに触る。
席を立って、洗面所に向かう。
真堂が、「どうしたの?」って聞いてきたので、「顔洗ってくる」と答えた。
別に、真堂が気になるわけではない。
ただ、お母さん以外の人に、寝起きのだらしない姿を晒したくなかっただけだ。
顔を洗い、できるだけ念入りに髪を整える。
普段、あまり意識してないから、どこまでやれば綺麗に見えるのかわからなかった。
いいかげんにしなさいと、お母さんに怒られて仕方なく食卓に戻る。
真堂の目が、わたしの身体をじろじろ見るので、気持ち悪くなって「なんですか?」と冷たく言い放つ。
「いやあ、寝起きのきみもいいけど、がんばったきみも可愛いなあってね」
ピキッ。
なんでこの人は、わたしのカンに触るようなことを言うのだろうか?
別に、あんたのために頑張ったわけじゃないのに。
それはそれとして、この人には聞きたいことがあった。
「あのー、真堂さん、聞きたいことがあるんですが——」
「んー? 彼女はいないよ。今ならフリーさ。お買い得だよ」
ニヤニヤしながら、なに言ってんの? この人。
「そんなに睨まないでよ。冗談だよ。よくあるやつ。お約束だよ」
なにこのめんどくさい大人。
「もしかして、わかってやってます?」
「なんのことかな?」
「はぁ……。もういいです」
どうせ、まともに取り合うつもりはなさそうだった。
「愛衣、早く食べないと、遅刻するわよ」
お母さんから、かけられた日常的な言葉にふと泣きそうになった。
顔を隠しながら、椅子に座って大人しく食パンを齧る。
「俺は学校には付いていかないけど、心配はいらない。きみの周りに警護の者がいるからね。安心していいよ」
真堂が来ないのは正直助かる。
けど、警護の者って、やっぱりわたし見張られているんだよね。これって。
シンクロアは、昨日からずっと黙ったままだし。
なんか息が詰まる。
さっさと朝食を食べて、学校に向かう。
真堂の見送りは無視して、お母さんに「いってきます」を言う。
「シンクロア……」
通学路の途中で、シンクロアに呼びかけたけど、返事はない。
それはきっと、見えないけど、周りにD-5の人たちがいるからなんだ。
シンクロアをわたしが持っていることを、彼らに悟られてはいけないんだ。
家に真堂がそのまま来てしまったので、お母さんとも結局ろくに話ができずじまいになってる。
「シンクロア、返事できるようになったら呼びかけて」
わたしにはわからないけど、きっとシンクロアにはわかるはず。
周囲に彼らがいるかどうかを。
しかし、学校に着いてしばらくしても、シンクロアからの応答はなかった……




