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「半悪魔」

更新遅くてすんません

25話「半悪魔」



ソフィーは懐かしい見慣れた、何度も世話になったベットの上に寝ていた。真っ白な布団、その周りを囲う冷たそうな丸い金属の棒で出来た柵。

ベットの横には縦に長い茶色い棚があり、真ん中の段には、約16年振りに見るテレビが置かれていた。

ベットからゆっくりと起き上がる。


(やっぱり…あれ全部夢だったのかな…異世界転生とかあるわけないよね…漫画とかじゃあるまいし…)


再度眠気が波のように襲い、ソフィーはその波に逆らうことなく、横になって目を閉じた。

幸せな夢に期待して…



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



“おい、そろそろ起きたらどうだ?”


頭に響いたその声でソフィーは目を覚ました。

目覚めたのと同時に、焼ける様な、引き裂く様な痛みが身体中に走った。

特に激痛が走った右目を抑えてしまう。


「ぐっ…まだ痛い…」


「えっ、今の誰??」


ソフィーは突然の声に驚きの声を上げてしまう。


“我だ、アガレスだ。”


その声は耳に入ってきて聞こえる声では無く、頭の中に響く様に声がした。


(な、なんで…)


ソフィーは疑問を、口にすらせず、頭の中で投げかけるだけだった。だが…


“眼に魔力と共に我の記憶や人格を全て流し込んだ。少々時間がかかったが、形に出来た。”


口にしなかった質問なのに、答えが返ってきた。


(って、私の考えてること分かっちゃうのね…)


“当たり前だ。意識等様々な事が共有出来ている。まだ我にも理解し切れていない事もあるが…そのうち分かるだろう。”


(ふーん…で、ここはどこ?色々記憶に無いんだけど。)


ソフィーは辺りを見回した。

辺り一面木々が並び立ち、ソフィーが座り込んでいる場所は、何故か凄まじい衝撃波、或いは攻撃でもあったかのように数本の木が折れ、周囲に転がっていた。


“王都から南に行ったところにある樹海だ。多分見つかっては居ないだろう。”


(そ、それより、この折れてる木って…)


“あぁ、ソフィーが墜落した時の衝撃で折れたものだ。”


(やっぱりぃ〜)


予期せず森林伐採をしてしまった恥ずかしさで、誰も見ていないのに両手で顔を覆ってしまった。


“まぁ、気にするな、数十年すればまた大木が生えてくるだろう。”


(数十年…。感覚がおかしい…)


“そんなこと無かろう。エルフも長寿の種族だ。それに、我の眼を手に入れた今、寿命があるのかも計り知れん。”


(そーなんだ。それより喉乾いた。)


“なら、魔力探知で探すと良い。”


(えっ、それどうやってやるのよ。)


“自身の体内の魔力を極限まで薄くして広げる感じだ。『周辺探知(エリアスキャン)』に似てはいるが、範囲は桁違いだ。”


(なるほどね…薄く…薄く…)


『魔力探知』


薄い魔力の膜が広がり、円形に、数キロ先もの範囲の情報が入ってくる。

周辺探知(エリアスキャン)』と違い、範囲内にあるもの(生き物)の魔力等も分かるため、対象の強さ等も知る事が出来るようだ。


そして、数百メートル先に小さな小川を見つけた。


(あった。)


“だな。お前の視覚は俺も見えている。話したいことがあるから、歩きで行ってくれないか?”


(分かった。)


移動先が決まった事で、ソフィーはゆっくり立ち上がったが、脚に体重をかけた瞬間、内側から突き刺す様な痛みが走った。

激痛で立っていられず、その場で座り込んでしまった。


「はぁ…はぁ…」


“無理するな、ゆっくりで良い。我の魔力を身体がまだ拒否反応を示しているんだろう。”


(そうよね…そうじゃなきゃこの痛み説明出来ないわよね。)


“すまない、ここで話してもいいか?”


(良いけど、何?)


“我とのこれからの関係性についてだ。まだ未知数な要素が多い。

魔力眼継承はこれまで何度も見てきたし、補助をした事もある。

が、今回の様な眼の持ち主の自我を移すことが出来たという話は初めてだ。

まぁ、周りに言わなくて知らなかったという可能性もあるがな。”


(それで、私たちはこれからどうして行くのが正解なの?)


“そなたを我の主とさせてはくれないか?”


(はい?)


“あの部屋での話しを聞いて、我はお主に賭けたいと思ったんだ。人間と悪魔の対立、亜人への迫害、それを今のお主が、終わらせられるのではないかと思ったんだ。”


(根拠も無いのに、良いの?そんな事して。上手くいく保証なんて無いわよ。)


ソフィーは、柔らかい土の上に寝転んで頭の中で会話を続けた。

着ている服は既にボロボロで、背中も翼で突き破ってしまったので、気にせずに土の上に横になる事にした。


“あの、壊れかけの体、魔王も居ない、当ての無い状況だったんだ。そのままあの部屋に居るよりも、こうして新たな生活が出来る方が良い。例えそれが自身の肉体が無くともな。共に行きたいと思ったんだ。それに、今の身体に関して1人でどうにか出来ると思うか?”


(そうよね…今のこの状況すら把握出来てないよ…)


“とりあえず、分かってることを言った方が良いか?特に、右眼に関して。”


(えぇ、お願い。)


ソフィーは地面でゴロゴロしながら、アガレスの話しを聞く。


“単刀直入に言うと、主の体は悪魔へと変化しつつある。厳密には、半悪魔だな。今のところは、6割程の我の魔力が、主の魔力と一体化し、主の魔力と我の闇の魔力が、混ざって新しい魔力となっている。今の段階で闇魔法を乱用するのは危険だろう。”


(はぁ…なるほど)


なるほどと言ったものの、今のソフィーには、半分程しか理解出来ていなかった。

確かに、身体の内側に意識を向けると、これまで感じた魔力とは違う、新しい物がこれまで感じていた魔力と混ざって体を巡っていた。


“今は無理だろうが、いずれは我が生前使っていた魔法や、力、全てを使いこなせる日が来るだろう。そうなる前にに使ってしまったら、肉体が反発し、今のような痛みが更に、襲ってくるだろう。”


(ねぇねぇ、私の魔力のコントロールってアガレスの方でも出来る?)


“まだ戦闘をしていないから分からない事も多いだろうが、今の魔力の状態が分かるのを鑑みるに、恐らく可能だ。”


(じゃあさ、アガレスの方で私の闇魔法を制限して、ある程度の場所で止まるようにリミッターをしてくれないかな。怒ったりして、無意識に使ったりしないようにさ。)


“良いのか?”


(あっ、でも、何か負担をかけずに使えるのがあったら、使いたいな。翼とか…)


“なるほど…そうだな。体に負担がかからない程度で使えるようにするつもりだが、その中でも黒翼と、収納(ストレージ)と、転移は使える様にしておこう。”


(えっ??)


初めて聞くワードに戸惑ってしまった。


“大半が、悪魔達にしか使えない代物だ。知らなくて当然だ。その都度説明する。”


(初めて聞くけど…名前的に…)


“大体主の想像通りで合っていると思うぞ。後は、王都から逃げた時の様な魔法具現化も余程の事でなければ使えるだろう。こちらでも操作するから安心しろ。後、最後に1つ良いか?”


(何?)


“普段は右眼を隠した方が良い。見た目もあれだが、その眼からは、魔力の吸収と放出、肉体の固形化が行える。”


(えっ?)


“覚えてい無いかもしれないが、吸収と放出は、王宮で主も行った。

主の前世と違い、この世界の人間は、多い少ない等の個人差があるものの全員体内に魔力がある。

吸収はそれを吸い取り、相手を死に至らせる事だ。

逆に放出は相手の体内に耐えきれない量の魔力を流し込み、体を内側から破壊へと至らせる殺り方だ。

王宮では、兵士の頭が、内側から壊れていた。

放出した魔力は最後は戻せるから変わらないがな。

そして、最後に固形化だ。これは我独自のものなのだが…我が使用していた身体は、薄くなってはいたが、蛇髪族(ゴルゴーン)の血筋だったのだ。薄かった事から髪は普通だったがな。”


(蛇髪族(ゴルゴーン)って…メドゥーサとかと近いの?)


“あぁ、主の世界ではそう呼ばれていたのだな。そう思ってくれていい。

そして、その3つの力は、現段階では完全に制御しきれていない。

眼を晒していたら、視界に入った生命体に、悪影響を及ぼすかねない。

だから、布や眼帯で隠すのが賢明だろう。

悪魔にとって、眼は人間達の心臓に近い存在だ。眼から魔力を吸収し、それが身体の血管や神経、様々な方法で身体中に巡る。”


(なるほどね…眼帯か…どこかで買えたら良いけど…とりあえず今は…)


前世の記憶まで、知られている事はスルーして何か代用出来るものが無いか、自分の身の回りを見て、体を触ったが、ほとんど何も無かった。

当然だ。体1つで逃亡してきた。軍務局の寮に戻ることも叶わなかった。


(あぁ…姉さん…師匠…何も説明出来なかったな…心配してるだろうな…迷惑かけちゃったな…)


ソフィーは何も言えずに出ていってしまった事に後悔を感じながら、眼帯の代用品として、穴が空き、あちこちが擦り切れ、破れたボロボロの灰色マントの一部を、長く切り裂いた。

それを右眼を隠すように、顔に斜めに当てて髪の毛を上げて後頭部で結んだ。


(姉さん達、探してるかな…心配かけたくないんだけどな…会いたいな、会いたいな。)


色々悲観的になっていたが、気づいているであろうアガレスは何も話しかけずに、落ち着くのを待っていてくれた。


「ふぅ…」


(それで、これからどうしよう…)


“1つ気がかりがあるのだろう。色々考えているのは気づいているぞ。”


(やっぱり分かってたのね。レイ(実家のメイド)の事が心配なの。)


猫族の女性で、幼い頃からソフィーの世話をしてくれた彼女だが、ソフィーが犯罪者となってしまった今、理不尽に同罪として扱われてしまう可能性もある。

出来るのなら、助けたいところだ。


“居場所に心当たりはあるのか?”


(実家に居なかったら、もう分からない。)


“とりあえず、実家に行くか。だが、その前に、準備も兼ねて、行って欲しい所があるのだが…安心しろ。実家は転移魔法で一瞬だ。”


(やっぱり転移ってワープ系か…それで、どこに行って欲しいの?)


“かつて、一時期使用していた我の住処だ。そこに保管してある。愛武器の鎌を回収して欲しい。”



To Be Continued

設定等、新しい能力等多めで申し訳ないです。

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