第2章 勝利宣言!!
深夜、町の大通りをロープで胴体を巻かれ、ドラコンゾンビに牽かれている中年の男・魔王オカモトの姿を見て、町中の人々は驚愕した。
町の人々「あの狂犬オカモトが、あんな無様な姿で殺されている!!」
「あの魔王・オカモトの死体の後ろを歩いている男と女が殺したというのか!!」
「魔王・オカモトには魔法が効かないはず。ということは、武器は持ってないから、あの二人は武道の達人だな、たぶん。」
「男は背が高いがガリガリで、女は普通の綺麗系。たぶん、男の方はボクサーで、女の方は合気道だと俺は睨んだぜ。」
様々な憶測が、町中に響き渡った。
キャサリンは小声で言った。
キャサリン「言えない、とても言えないわ。鍵を掛け忘れてビールで酔っ払い、全裸でこたつに入って寝ているオカモトを、台所にあった包丁で刺して倒したなんて、とても言えないわ。」
魔王・ルーファス「キャサリン、闘いとはそういうものだ。この圧倒的な無傷の勝利、まさしく魔王らしい勝利だ。」
キャサリン「いやいやいやいや、ただの押し込み殺人だから。しかも強盗つき。」
そんなキャサリンの言葉を無視して、ルーファスは高々と大声で、勝利の雄叫びをあげた。
魔王・ルーファス「俺は魔王・ルーファス!!俺がこの魔王・オカモトを倒した!!一瞬だった!!もう少し骨のある奴だと思ったが、失望したよ!!準備運動にもならなかったぜ!!」
町の人々「おお!!あいつが今、噂の世界征服をしようとしている魔王・ルーファスか!!」
「凄い!!凄すぎる、魔王・ルーファス!!」
「あの狂犬オカモトを瞬殺だなんて!!魔王・ルーファス、凄すぎる!!」
町中の人々は恐れおののき、道の端々に避け始めた。
キャサリン「そういえば、さっき帰り際にサブリーダーに車のこと聞いたんだけど、リースなんだって。」
魔王・ルーファス「リースだと?」
キャサリンは、右手と左膝をあげて、CMの桜井日奈子の真似をした。
キャサリン「こんなポーズで、一生新車に乗ろう!!って叫んでた。」
魔王・ルーファス「何が一生新車に乗ろうだ!!歳考えてもの言えや!!心は満タンじゃないくせに!!」
キャサリン「サブリーダーは、男よりお金が好きだから、いいんじゃない?」
魔王・ルーファス「クソッあのお金で耳栓を買おうと思ったのに、クソ腹立つ!!」
ルーファスは、再び全裸でロープに巻かれて牽かれている、魔王・オカモトの死体の腹に蹴りを何発もぶちこみ始めた。
魔王・ルーファス「うおおおお!!死ねボケ!!クソが!!うおおおお!!」
町中の人々「うおっまだ魔王・ルーファスは、暴れ足りないというのか!!」
「魔王・オカモトを倒しても、まだ体力が有り余っているということなのか!!」
「魔王・ルーファス、恐ろしい!!恐ろしすぎる!!」
キャサリン「ちょ、ちょっとルーファス、止めなさいよ。血が飛び散って、私のドレスにつくじゃない。」
魔王・ルーファス「チッしょうがねえなあ。」
ルーファスは魔王・オカモトを蹴るのをやめて、大声で叫んだ。
魔王・ルーファス「今日からこの町は俺の物だ!!お前らも、野良猫も野良犬の命も全部!!全部だ!!俺の言うことを聞けば、悪いようにはしない!!」
その言葉を聞いて、町中の人々はひざまづいた。
町中の人々「分かりました!!魔王・ルーファス様!!」
「私達は、あなた様には絶対逆らいません!!」
「だから、どうか!!どうか命だけは!!」
魔王・ルーファス「なかなか物分かりのいい町だな。」
キャサリン「よく言うわね、ただの押し込み強盗殺人なのに。」
魔王・ルーファス「キャサリン、闘いとはそういうものだ。」
ルーファスとキャサリンは、仲良く手を繋いで、笑いながら町を出た。
町の外へ出ると馬車が現れたので、ドラゴンゾンビは魔王・オカモトを縛ったロープを外し、馬車を自分の背中にセッティングした。
ドラゴンゾンビ「魔王様、オカモトの死体はどうします?」
ルーファスは周りを少し見渡し、生ゴミ置き場と書かれた幅2m,高さ3mほどの金網籠を見つけた。
魔王・ルーファス「あそこだ、あそこが生ゴミを出すところだ。あそこに放り込んでおけ。」
ドラゴンゾンビは、金網の籠の中に魔王・オカモトの死体を投げ入れた。
魔王・ルーファス「さて、帰るか。」
キャサリン「そうね、疲れたわ。ルーファス、寝ないでね。あなたのイビキ、うるさすぎだから。」
魔王・ルーファス「お前の方がうるさいって!!」
そう言いながら、二人は馬車の中に入り、ドラゴンゾンビはカサブランカの街を目指して歩き始めた。
それから間もなくして、どこからか野良犬やカラス達が集まり、魔王・オカモトの死体を食い散らかし始めた。




