5日目 資産の行方と葬儀打ち合せ
7月6日(月)
午前4時半頃
珍しく足攣りがそれ程でもない状態で早朝を迎える。
寝るのが早い分起きるのも早い。
しかし妻の夢は見られなかった。
妻が亡くなってからと言うもの記憶に残る夢が見れず朝起きるとため息と共に寂しさが募る。
1階に降り彷徨いながら着替えを済ませゴミをまとめる。
ちなみに今日は燃えるゴミの日だ。
葬儀屋から貰ったお悔やみノートに沿ってそろそろ妻が資産運用していた物、こくみん共済、各種年金に預金など探し出し対処していく。
幾つか出て来た。
結構な額が解約と共に下りるようだ。
結構な額と言っても無駄に使えば70歳になる前に底がつく程度の物。
妻が何処までの物をどれだけ作ったのかまたそれは何処にあるのか全く分からない。
人が突然亡くなり伴侶に何も伝えていなければ必然的にこう言う状態になる。
これは長くなりそうだ。
どちらにせよ今の時間では各所へ連絡しても意味は無いので営業時間内に電話してみよう。
午前6時
先程集めたゴミをゴミ置き場に持って行く。
今日は妻と私の布団を干そう。
妻は布団の敷き方にはこだわりがある人だった。
とにかくシワが嫌いでシワを見ただけでよく伸ばしていた。
私は寝られれば何でも良いのだが彼女は少しでもヨレているだけで気になって寝むれないらしい。
ベランダに布団を並べ終え私はとても満足した。
寝室は彼女が亡くなった場所でもありその場所を見る度に心が締め付けられた。
なので布団を敷き直してあげればきっと妻も喜んでくれるはずだ。
午前9時半頃
兄夫婦が車で迎えに来てくれた。
今日はこれから葬儀の打ち合せだ。
葬儀社に着くとまずは妻に会いに行く。
今回も私一人だ。
ムッチぃ寂しかったか?
俺は物凄く寂しいよ
孤独でねほんと辛いんよ…
ムッチぃが恋しくて愛おしい
会いたいよ〜会いに来てよ〜
頬を摩り自分の頬もあてる
手を握り摩ってあげる
ぽつりぽつりと頬から水滴が溢れ落ちる
妻を見ているだけで涙が溢れ出す。
ほんと見ているだけで胸の奥が締め付けられて物凄く痛く苦しくなる。
霊安室を出ると既に打合せの場所に兄が座っていた。
程なくして葬儀社の営業の人が来る。
始まりの時間からあれをやってこれをやって火葬場は何時頃でと時間事にやる事を説明される。
契約書の他オプション類チラシや予定表などをまとめたバインダーをもらう。
次は献花の事、出席人数と色々話しをした。
何だか頭に入って来ない。
とても実感が無い。
故人の生前写真の話しになった。
仏前に飾る物だ。
妻は写真に写りたがらない人だった。
結婚前後の写真は一杯あったが50歳を越えた頃から自身の老いを感じたのか殆ど写真の前に顔を出さなくなっていた。
今にして思えば残された私にはそれが宝物になっていたと思う。
でも無いのである。
また、老いた自分を皆には見せたく無いとも感じた。
なので比較的若く見え綺麗に写っている上から撮った物を採用した。
でもコレは正面からの写真には置き換えられない。
なので加工に回すらしい。
打ち合せは終わり
また妻に会わせてもらう事になった。
二人の時間は多分コレが最後なのかもしれない。
兄夫婦も忙しいだろうし私も色々ある。
葬儀前日はお清めに死化粧もしなくてはいけないだろう。
ゆっくり彼女といられるのは今しか無いのだ。
霊安室にて
今は静かに妻を堪能したい。
頬をなで手を触り静かに眺める。
首下の死斑がとても痛々しく可哀想に思えた。
死化粧をしてもらい綺麗になるだろうか?
ぽつりぽつりと妻の装束に私の涙が溢れる。
「あっ、いけないむつみに掛かる」
テッシュを取り出し涙を拭い鼻をかむ
手を摩り妻の名を優しく何度も言う。
ムッチぃ愛してるよ
また来るから待っててね
兄が外で待っていてくれた。
兄から「礼服はどうする?」と言われ「レンタルにするか迷い中です」と答えると兄が「じゃー今から見に行こう」と言う事になった。
紳士服専門店の前に到着する。
兄は自身のYシャツを購入する様だ。
私は礼服を覗いて見た。
た、高!
スーツだけで平均8万〜10万円はする。
こんなに高いものなの??
さすがにコレは無いと思い買うのは諦めた。
午後3時頃
兄夫婦に家まで送ってもらい深々と礼をして別れる。
まずは布団の取り込みだ。
フカフカになっている。
妻の布団はキチンと整頓しぴっちり綺麗に敷けたと思う。
私の方は適当だ。
妻は喜んでくれるかな
誰も居ない寝室で
「ムッチどうよ」
「どうよコレ」
と居ないはずの妻に話しかける。
ありがとうは聞こえない。
でも言ってくれたと信じたい。
礼服レンタルを注文する。
セットで7、8千円ってところか
まぁコレならと頼むことにした。
コレが後に大間違いだと気づくが後の祭りだ。
ソファーから立つと立ちくらみで目眩がした。
やばい無理してでも腹に何か入れないと、簡易味噌汁に生わかめを刻んだ物を入れタンパク源として胡麻を一杯入れ自分で育てた玉ねぎも刻んでそこにお湯を注いだ。
これなら食べられる。
普通に作る味噌汁より劣るがこれはこれで心も体も温まる。
さて、妻運用資金の探索を開始する。
色々怪しい戸棚や資料の積み重ねいかにも何か入ってそうな箱など掃除機片手に色々探してみる。
取り敢えず資料類の中にそれらしい物が幾つか出て来たが他は全く見つからなかった。
昨日見つけたこくみん共済に電話し今後取り揃える物などを聞く。
この時点で妻の解約が決まる。
とにかく見つかった怪しい物は電話しヒットした物から解約が決まる。
午後5時頃
3件程で受付時間が終わったので連絡はここまでだ。
其々の担当者さんから優しい言葉を掛けられた。
その度に思わず涙が溢れてしまう。
嫌味な言葉は掛けられたくは無いが優しい言葉に免疫が無いので涙は避けられない。
今後色んな所に電話しなくてはいけない。
一体どれだけ涙を流すのだろう。
各機関に必要なもの
・私と妻の戸籍謄本(妻除籍付)
・妻の生誕から今現在の戸籍謄本
・私と妻の現在の住民票(妻除籍付)
・私の印鑑証明
・私の免許証の写し
・義父の生誕から今現在の戸籍謄本
・義母の生誕から今現在の戸籍謄本
・義父の印鑑証明
・義母の印鑑証明
・妻の死亡診断書の写し
・マイナンバーが無いので私の通知カード
・私の口座
全ての銀行や保険会社がこれら全部を必要とする訳では無いが大手は結構用意させられた。
私が携われない義父母に関しては兄夫婦にお願いしないといけない。
色々まとめていたら既に夜になってしまった。
今日も酷く疲れた。




