54日目 納骨式に着て行く服
8月24日(月)
午前4時50分
まだ薄明かりの中起き出す。
朝は力が入らない。
足を庇いながら1階に降りソファーで呆けていると外が大分明るくなって来た。
妻に挨拶をする。
ムッチおはよう、今日も一日よろしくね
今日は色々やる事があるんだ〜見守ってね
ゴミを集めゴミ置き場に向かう。
またゴミ袋が散乱している。
仕方なく整理する。
家に戻って庭の植物達に水やりをやる。
胡瓜1本を収穫し「ありがとう!」と言った。
ため息をつきソファーに座る。
静かな室内は冷蔵庫のモーター音と耳鳴りだけが聞こえた。
寂しさと切なさが自身を覆う。
仏前の遺影横にある妻の小さな写真を覗くと若く可愛い妻が笑っていた。
ムッチぃ可愛かったなぁ〜
可愛いよムッチぃ
妻の名を呼びソファーのクッションを摩り潤む目に鼻声で妻に甘える。
暫くクッションを摩っていた。
食欲がない。
今日の朝食は無理そうだ。
午前9時
昨日開封しなかった封書を開くと妻の口座が凍結により引き落とし出来なかったクレジットカードの支払い通知が入っていた。
先々月分のものらしい。
早速電話しオペレーターと話す。
オペ「はい、〇〇コールセンターのわたくし担当〇〇と申します。どう言ったご用件でしょうか?」
私「えーと、未払いの支払い口座についてお話しがありまして」
オペ「はいお伺い致します。」
私「その口座ですが先月亡くなった妻のものでして…」
オペ「それは奥さまの口座と言う事ですね」
私「はい、そうです」
オペ「そうでしたか…そんな大変な中…」
オペレーターさんの声色があきらかに変わった。
その優しい声を聞き思わず込み上げてしまい泣き声で答えはじめる。
ダメだ…まだ優しさの免疫が無い。
とても嬉しい対応なのだけど優しくされると思わず泣き崩れてしまう。
話しは終わり結局6、7月分を振り込みする事になった。
二ヶ月分は大きいが仕方ない。
午前9時半
着替えを終え郵便局へ向かう。
私だけの健康保険税の払い込みをする。
妻分を引いたものがやっと昨日届いたのだ。
払い終えたら次はショッピングモールだ!
午前10時頃
ショッピングモールに到着
妻の納骨式に着て行く黒っぽい服を買いに来た。
黒服は一杯あるが結構太めな服しか無いので質素で今の体型に合う物を選ぼう。
無地で安くて質の良い物をと店内を探し回る。
まぁこんな物かな
平服が基本の納骨式、着て行くにはちょっとカジュアルだけど普段でも着れる物を買わないとお金の無い私には死活問題だ。
妻もきっと後々の事を考えればOKを出してくれると思う。
それから納骨式で坊様に渡すお布施の無地封筒と他に普通の封筒も100均で買わないといけない。
人が亡くなるってほんとお金が掛かる。
小さい買い物一つも馬鹿に出来なくなってきた。
食材、日用品売り場に寄り必要な物を購入する。
中でもくまキャラの柔軟剤があったのでこれは買いだと思いカゴの中に入れる。
これは妻の香りなんだ。
昔からウチはくまキャラを選んでいて我が家の香りはコレと決まっていた。
昔の様にあまり手に入らない洗剤だけどね
然し最近の妻は自然派思考になり〇〇石鹸一本に変えている。
くまキャラは思い出の香りだから
此れは此れ其れは其れという事で
今度シーツ洗う時に使おう。
その他、日用品と食材を購入した。
食材、日用品売り場での買い物を終え車に向かう道中
「今回はさぁ一杯買ってしまったね」
「お金また使っちゃったよ」
「でもさぁコレ必要経費だからさぁ」
「えー仕方ないでしょ」
買い物カートを押しながらブツブツと独り言を話していた。
側から見たら完璧危ないおじさんだ。
午後2時半
家路に着く、玄関に入り大声で
ただいまー
誰も居ない住居に自分の声だけが響き物悲しさと虚しさを感じた。
リビングに入り大きな声で
ムッチ、ただいまー
当然返事は無く無性に寂しくなる。
ただいまーって言ったらおかえりーでしょ
何で応えてくれないの
おかえりーって言ってよ
無理なのは重々承知なのに…目が潤みだす。
啜り泣きながら
ほら見て、くまキャラのお人形柔軟剤だよ
ムッチの匂いがするくまキャラだよ
ねっ、可愛いでしょ
泣き崩れてソファーに座る。
あぁ全然ダメだ…なんて涙脆いだろう。
午後3時
久しぶりにドリア弁当を買ったので遅いお昼にする。
でもこんなに食べられないか、妻の生きていた頃ならペロっと平らげる弁当の大きさも今の私には大盛り過ぎる様だ。
さて食べる前に妻に食べてもらおう。
温め直したドリアを妻の写真の前に置きお先にどうぞと手のひら向けた。
その間お茶と糠漬けをテーブルに用意する。
暫くして妻の前に行くと両手を合わせ
ムッチぃ〜いただきます
をして、言い終わるとドリア弁当をリビングのテーブルに移し自分が頂いた。
半分いただき半分はまた夕飯かな
でも結局夕飯は食欲がなく食べられなかった。
午後9時頃
日本年金機構から封書が届いていたので開けてみた。
妻の年金受給の書類に不備があったようだ。
前に一度同じものを年金窓口のお姉さんの前で書いた記憶がある。
指示通り書いたはずなのに…?
どこが間違っていたのか分からぬまま赤ペン指示に従い記入し直す。
明日郵送しようかね
午後11時
そろそろ寝るかな
珍しく今日は遅い。
この二ヶ月近く夜の9時前後には悲しみ疲れで寝ていたので今日は記録更新の様だ。




