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大好きな妻が亡くなった  作者: ゆき


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52日目 親友が来てくれた


8月22日(土)

午前8時

比較的近くに住む親友が妻に線香をあげに来てくれるそうだ。

近くと言っても5駅は離れた距離、久しぶりに会えるのでとても嬉しい。

それだけで今日と言う日は輝いて見える。

彼とは35年以上の付き合いだが私も彼もそれなりの歳になり普段からの交流はあまり無くなっていた。

私と違って彼には奥さんと二人の子供が居る。

家族サービスも半端ではないし私の方も母、義父、義母の世話で会う機会を失っていた。

一緒に酒を飲めるのも良くて1年に1回あるかどうかでほぼメールでのやり取りがほとんどだ。


妻が他界してからと言うもの物凄い孤独の中で過ごさなくてはいけなくなった。

人と話がしたい。

誰かに自分の気持ちを伝えたい。

むつみと言う最愛の妻を知ってほしい。

直に会って話しをしたい。

今日やっとそれが叶いそうだ。

こんなに嬉しい事はない。


一通りの飲食の用意は済ませてある。

あとは彼を駅まで迎えに行くだけだ。


午後0時半

そろそろ友人が来るので駅へ向かう。

駅近くの駐車場に車を止め足りない食材をスーパーで購入していると友人から電話が入る。

早速駅に向かうと懐かしい顔がそこにあった。

ちょっと恰幅の良くなった友人が立っている。

世間話をしながら駐車場へ向かい我が家へ向かった。


早速家に着くと妻の仏前に座り線香をあげてくれた。

私は思わず「良かったなームッチ、友達のNちゃんが来てくれたよ〜初めて友人がむつみに会いに来てくれたんだよ良かったな〜」とぽろぽろと涙を流しながら友人を歓迎した。


ソファーに座りまずは缶ビールを冷蔵庫から出し乾杯する。

テーブルにはウチ特製のお新香とスーパーの惣菜類が並ぶ、飲みが進むうちに私は妻が亡くなった経緯を話しはじめる。

話しが佳境に入ると涙がこぼれ落ちそれでも話しは終わらなかった。

これも一つの供養。

妻への愛を思いっきり聞かせたかった。


友人も涙を流してくれている。

そして友人も過去に亡き父と母のやり切れなかった思いが蘇り彼の話が始まった。

人は生きている以上死が必ず訪れる。

それぞれに深い悲しみがあり切っても切れぬ関係もある。

お互い泣きお互いを労った。


話題はそれぞれの現在の状況に変わり居ない友人の話になり大いに盛り上がった。

あぁ心地良いなぁそれに昔は毎日がこんな感じで楽しかった…友人の話を聞きながら当時の幸せを噛み締める。


午後3時過ぎ

朝から仕込んだウチ特性のカレーを友と食べる。

市販のカレー粉を2種類合わせたブレンドカレーだ。

この割合を出すのに色んな市販のカレーを一杯買ってやっとこの味が出来た。

妻と私のウチ特性の合作カレーだ。

私も今日は食べられそうと普通より少な目に盛り、友には普通サイズで盛ってあげた。

美味しかったのか友はおかわりを要求、勿論遠慮せずどんどん食べてと言うと喜んで食べてくれた。

その光景を見て心の中の妻に話す。


ムッチ、Nちゃんがウチのカレーを気に入って食べてくれたよ

しかもおかわりまでしてくれた。

ムッチ、良かったな

俺も嬉しいよ


友人がお土産をくれた。

上品な香りのするお線香の様だ。

ちょっと開けた箱から仄かに雅な香りが漂う。

あぁむつみがとても喜びそうだね、今となっては線香は必需品だからな

とてもありがたい。


そうだ!

幻のイチロウズモルトを飲んでもらおう!

友人に振る舞うととても喜んで飲んでもらえた。

他にも獺祭やらホニャララ賞のついた芋焼酎とか友人が来たら飲ませてあげたい物を開けお互い飲みつぶれるまで飲んだ。


妻が生きていた頃は毎日の様に晩酌していた私だったが、妻が他界してからは一滴も飲めなくなった。

飲む気が失せたと言っていいだろう。

でも今日は若い時の様にいっぱい飲んでいる。

友の力とは絶大なものだと感じた。

死の淵から救ってくれるのだから本当に感謝しかない。


気がつけば夜の9時を回っている。

いかんいかん友人には家族がいるんだ。

タクシーを呼び歩いて帰ると言う駄々っ子友人をタクシーに乗せ駅までのお金をタクシーの運転手に渡す。


「ありがとうNちゃんまた機会があったらお付き合いください」


友人と別れの挨拶をしタクシーは駅へ向かう。


家に入るとまた静けさが襲ってくる。


取り敢えず酔いが酷いので今は乗り切れる。

何とか身の回りを片付け、身支度を整えて寝床まで行き酔い潰れて寝むった。

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