12日目 理不尽な凍結と思い出を天界に贈る
7月13日(月)
午前4時頃
夢を見た気がする。
痛む足を摩り内容を思い浮かべるが分からない。
痛みに記憶を奪われたか…
「ムッチ、来てくれていたならごめんな」
暗がりの中独り言を呟く
胸の奥がズンと沈んでいくのが分かる
言い様のない孤独感に耐えられず隣りの妻の布団を摩り出す。
片足を庇いながら1階に降りトイレ、水飲みといつものルーティンだけはこなす。
ソファーに座り足つりが治るのを待って雨戸を開けた。
先ずは妻に挨拶だ!
線香をあげお燐を鳴らす。
「ムッチ、おはよう」
「今日はね私とむつみの古い服や1階のいらないキャンプ用具なんかをクリーンセンターへ持って行くよ」
「これはねお焚き上げだよ」
「燃えて綺麗になると思う」
「そちらに贈るので着てみてね」
妻にと言うより自分に言い聞かせているのだと分かっていた。
罪悪感を消したいが為の姑息な言い訳だ。
昨日まとめた袋をまじまじと眺める。
ペタンと仏前の前にへたり込む
ポロポロと涙が止まらない。
辛い、痛い…とても耐えられない。
見ているだけで心が苦しい。
午前6時頃
燃えるゴミを集めゴミ置き場へ持って行く。
またか…網からゴミが出ており早速カラスに突かれている。
まだ散乱していないので網の中に入れ自分のゴミも入れた。
そして網の配置を整えた。
妻なら絶対そうする精神で沈んだ気持ちを抑え何とか対処した。
午前10時
妻の資産運用を整理する。
電話し切れていなかった所に電話した。
例の最初に配偶者確認も無く勝手に通帳凍結した大手の銀行だ。
何度か電話して分かった事がある。
担当になったのはどうやら新人らしき対応をとる女性銀行事務員だった。
何だか話が二転三転したりと物凄く不安が残る。
私「なので先程から言っている様に義父はほとんど目が見えず義母は寝たきりでボケて話も出来ない状態だと言っているじゃないですか」
銀行「いえ、ですからその場合義父、義母さま本人に当行に来て頂いて確認が取れればですね…」
全く話にならない。
話しているうちに何だか悔しくて涙が込み上げてきた。
普通に考えて行ける訳無いだろ
受け付ける気が全く感じられないし支離滅裂だ。
決まって
銀行「それにつきましては当行の専門部署と上の者から話しを聞くのでお待ち願えますか?」
って言うが後日談になるけど率先して電話が掛かって来た事が無いのだ。
いや1、2度はあったでも結局はこちらが電話しないと話しは進まなかった。
何なんだこの人は愛を全く感じない。
人がどんな気持ちであなたの勤め先に電話をしているのか分からないのだろか
妻が亡くなってまだ2週間も経って無いんだ。
コレはむつみ名義だけどウチの財産なんだ。
断る姿勢を見せる前にもっと人に寄り添う姿勢を見せてほしかった。
この人、断り方をもっと勉強するべきだと思う。
物凄く疲れた。
こんなのばっかなのかな銀行って…
午前11時頃
地方銀行に電話する。
本人確認後、この時点でむつみの通帳凍結がされる。
とても親切な対応で途中何度も私の事を心配し労う言葉に私は泣きながら対応をする。
大手と地方ではその背景の重さで対応も変わるとは思うがこう言う風に人に寄り添う姿勢があるのか無いのかで人の器が違って見える。
一通り用意する物を教えてもらい後日記入する為の封書が届く旨を聞き電話を切った。
始終泣きっぱなしだが気持ち良く話しが出来たと思う。
午後0時半
クリーンセンターに行く。
約束は午後2時からだけど運転に自信が無いので早めに出たい。
それに思い出ある荷物がチラつきとても落ち着いてはいられない。
沢山の荷物を車に詰め込み一路クリーンセンターへ向かうことに
午後1時
到着すると1時間も前に着いてしまった。
今館内に入れるのは何時〜何時までの看板が見えた。
勝手に入ってはダメなのかな?
仕方なく近くの河川敷の広い場所で時間が来るまで待つことにした。
車外へ出ると外はジリジリと暑い。
うっ失敗している。
マジで暑くて辛い。
クーラーの効く車内に戻るも時間を持て余す。
出たり入ったりを繰り返す。
やっと時間になりクリーンセンターへ向かう。
500円ぐらいだった。
物凄い量だったがこの程度の値段で済んで良かった。
でもまた来る必要はありそうだ。
ウチはどんだけゴミ屋敷だったんだ。
まぁ全て自分が悪いんだが
服は燃やして天に行くもの
本来なら野焼きにでもするべきだが今の日本に農家以外出来る場所は無い。
これが今の時代の野焼きと自分に言い聞かせる。
コレで妻も天界で服が選べる
きっと今は若かりし歳になっているだろうし
喜んでもらえると嬉しい。
午後3時
再び妻運用資金の洗い出しと整理をする。
分かった物の仕分け作業。
妻は書類がバラバラでも分かっていたかもしれないが私は全く分からん!
同じ物、同じ内容、同じ会社とクリップでまとめ透明ファイルにまとめる。
凄い量になった。
まとめたところで後々捨てる物も一杯ある。
が、今は全てを確認しないとだ。
午後8時
大分妻が運用していた物が分かってきた。
私が当面生活する上で何とかなる気もする。
が、相続税でどうなるかの不安もあり全く先が読めない。
やはり不安は取り除けない。
今日も疲れた。
静かな部屋
作業を終えると部屋の静けさが襲って来る。
だからと言って何か動画配信やサブスクを見る気にもなれない。
恋しくて寂しくて辛い…
妻の名を呼びまた会いたい会いたいとソファーの上で涙を流し駄々をこねる。
そして暫くソファーで呆然とする。
発作の様に毎日訪れる心の痛みがほんと辛い。
午後9時
さて、そろそろ寝よう。
仏前に座り手を合わせる。
ムッチぃ、おやすみなさい
慣れない事ばかりで疲れたよ
今日も一日ありがとうございました




