逆転、全裸に追い込む
「なあ、あんたら」
俺は下着姿のまま、卓にぐいと身を乗り出した。男たちがその動きに、またどぎまぎしてのけぞる。汗だくの間抜け面が三つ、並ぶ。
「その袖の仕込み牌。いつから俺を嵌める気で、卓を囲んでた?」
三人の顔から、下卑た笑いがすうっと消えた。
「な……なんのことっすか」
「とぼけるな。配牌が都合よすぎるんだよ。それにさっきから下家のツモが早すぎる。指の動きに迷いがねえ。……素人だましのいかさまだ。中身が雀荘に二十年通ったおっさんだと知らずに、よくやるぜ。俺の目の前で」
俺は卓の下から一人の袖を掴んで、仕込み牌をずるりと引きずり出した。ぱらり、と卓にこぼれる余分な牌。動かぬ証拠。男たちが凍りついた。
「さて。いかさまがバレた以上、この勝負は無効だ。……だが、それじゃ俺の気が済まねえ」
俺はにやりと笑った。中身のおっさんの、凶悪な笑みで。
「ルールはそのまま続けよう。負けたら脱ぐ。ただし――今度は俺は、いかさま抜きのガチだ。あんたら三人まとめて、正々堂々身ぐるみ剥いでやる。文句ねえな?」
*
そこからは蹂躙だった。
いかさまを封じられた三人は、ただの麻雀の下手な男に成り下がった。対する俺は雀荘二十年、酸いも甘いも噛み分けた打ち手だ。相手の待ちを読み、危険牌を止め、和了りを的確に、静かに積み上げていく。
男たちが一枚、また一枚と脱がされていく。上着。シャツ。ズボン。さっきまでの余裕は跡形もない。今度はこいつらが汗をかき、青ざめ、震える番だった。
そして俺の怒涛の連荘の末。
三人の男は俺の前で、一糸まとわぬ全裸に追い込まれていた。隠すものもなく、卓の下にうずくまり、真っ赤になって震えている。立場が完全に逆転していた。晒す側が晒される側に。悩殺する側が、無様に縮こまる側に。
俺はその頃にはもう、きっちり服を着直していた。下着姿で寒さに震えていた俺が、今は暖かい上着の中で、優雅に熱いお茶をすすっている。形勢は完璧にひっくり返った。
「い、いかさまのこと、バラさないでください……! これ、内定先に知られたら取り消しに……! 人生、終わります……!」
全裸の男たちが、涙目で拝むように懇願した。俺はそいつらの仕込み牌を証拠としてスマホで写真に収めながら、静かに言った。
「安心しろ。今すぐバラしゃしねえ。……この写真は、あんたらが二度とこういうしょうもない舐めた真似をしないためのお守りだ。俺にも、これから同期になる女性にも、妙な気を起こしたら、その瞬間、内定先の人事に届く。……分かったな?」
男たちは涙と鼻水でぐしゃぐしゃになりながら、何度も何度も頷いた。
俺は雀荘を後にした。脱がされたぶん、きっちり利子をつけて脱がし返した。四十六年、こういう人を舐めきった手合いの鼻を明かすのだけは、我ながら得意だった。飯より旨い。
夜風が、火照った頬に心地よかった。
「……しかし、寒かったな、あの店。ほんとに危うく風邪ひくとこだった。冷房下げろっつーの」
俺は相変わらず、自分の白い下着があの三人に何をやらかしたのかは、まるでこれっぽっちも分かってはいなかった。




