ダンジョン内でパチンコ屋さんを作りましょう
金子社長は市場調査をしていた。
ダンジョンに関わる企業が過去に起こした事業を徹底的に調べ上げた。
出した結論が、やはりダンジョン産業はハイリスクハイリターンであり、事業に成功した会社は巨万の富を得る事ができ、事業に失敗した会社は末代まで続く借金を得ていることが分かった。
そして今日、金子コーポレーションの社員の一人、社内通称【世周のパチンカス】と呼ばれている人と共にパチ屋に来ていた。
〜パチ屋〜
「あ〜くっそ〜6万負けた……」
「(ダンッ)ぶっ殺してやる」
「ここの台渋すぎなんだよ」
(ここは……なんですの。まるで、この世にある負の感情を煮詰めたような光景ですわね……)
金子社長があまりの光景に混乱し、不安になったので、ここへ連れてきてくれたパチンカスの方を助け舟を出すかのように見た。
「パチンカスさん? 手を震わせてどうしましたの? もしかして身体の具合が悪いんですの?」
パチンカスは、手だけでなく全身をガタガタと震わせていた。
「これで当たれば……」
『キュインキュイン……キュキュキュキュイン』
「あ〜……気持ちぇぇぇぇぇ」
金子社長は店内の光や、パチンコの台から出る光で気分が悪くなり、一旦外に出た。
「はぁ……。ここは一体なんなんですの……。パチンカスさんは一体何のためにわたくしをここに連れてきたんですの……」
金子社長が嘆いていると、バッグの中がブルブルと震え出した。
『プルルル……プルルル』
(あら……秘書からですわ……)
『金子社長。今どこにいますか? まさかパチ屋に居ませんよね? 社内でパチンカスが社長を連れて行ったって噂を聞きましたよ?』
「……よく分かりましたわね。わたくしは今、パチンコ屋さんと言う場所に居ますの……。秘書はここがどんな場所か分かるんですの?」
『社長がそんな場所に居るなんて……今すぐ車にエンジンをかけてきます……。良いですか社長? そんな場所はもう行かないでください』
「へ?」
『そこは、快楽とお金を増やす目的で行って、結果的にお金を減らし、人生を棒に振るような計画性も生産性もない人達が行く場所です』
(お金を減らす……人生を棒に振る……)
『だから社長。今直ぐそこから離れて、近くのコンビニで待っていて…………』
「そ…それですわ」
『?』
「秘書……今直ぐ、沖縄の石垣島にある海底ダンジョンの権利を買いなさい」
『急に何を言ってるんですか社長?』
「わたくしを迎えに来た後、直ぐにでもこのダンジョン施策を始めますわよ!」
『……へ?』
(さぁ……忙しくなりますわよ)
〜2週間後〜
沖縄石垣島の海底ダンジョン。
全8階層あるダンジョンの1階に、金子社長が社員と共に来ていた。
「とうとう完成しましたわね。ここは普通に行こうとしても中々行くことができない、石垣島の海底にある地下ダンジョン……のパチンコ屋さん」
「社長……正気ですか? こんなところにパチ屋を建てて……こんなの誰も来ませんよ?」
(それが良いのですわ)
『キュインキュイン……キュキュキュキュイン』
「しゃっあ。6連続大当たりや。気持ちぇぇぇ」
金子社長が来るずっと前から、このダンジョンパチ屋に居座っている人がいた。
「……って、なんでパチンカスさんここに居ますの? いつの間に……」
「社長知らなかったんですか? 今回の事業……パチンカスの奴が一番躍起になってましたよ?」
(ま……まぁ、現役の意見も大事ですわよね)
金子社長はパチンカスの元へ向かうと、一人で盛り上がっている彼の頃合いを見て聞いた。
「パチンカスさん。この台はどんな感じですの」
「あぁ〜脳汁で溺れそう……。気持ちぃぃぃぃ」
パチンカスの脳はパチンコのことで埋まり、もはや金子社長の事など気にもしていなかった。
(聞いてませんわね。まぁ、こんなにも楽しそうにしてるんですから……ほっといておきますわ)
「さぁ……これからは、楽しい毎日が来ますわ」
「社長? ここにある台……全部最近一番人気のある台の仕様ですけど……(って聞いてないか)」
金子社長は知らなかった。
パチンカスに全てを任せてしまった事の過ちを。
〜1週間後〜
金子社長は仕事の合間に、先週開店した海底ダンジョンへと来ていた。
「さ〜て……この前できたパチンコ屋さんは、今どうなって……へっ!?」
ダンジョンに入った途端に見えたのは、第1層が満席になっているパチ屋だった。
そして、ダンジョンに入って入り口の一番近くの台で打っているのが、会社のパチンカスだった。
―――チャット欄―――――――――――――――
『当たれぇぇぇぇぇ』
『いっけぇぇぇぇぇぇ』
『今3連してるぞ』
『行けるって』
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『キュインキュイン……キュキュキュキュイン』
「あぁ〜俺の脳汁を煎じてみんなに飲ませてぇ」
―――チャット欄―――――――――――――――
『来たぁぁぁぁぁぁ』
『4連だと!?』
『まぁここからだからな』
『ここまでがテンプレ』
『ここからが天ぷら』
『おいっ……それだと、このパチ台に脳をカラッと揚げられるぞw』
『草』
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「さぁ……ここからがお楽しみの……あっ、金子社長。ご無沙汰しています!」
「…………パチンカスさん。今日は有給取ってましたよね……まさか、ここに来るためってわけじゃないですよね?」
「そうです! 俺はここに来るためにここ最近……ずっと貴重な有給を使ってました!」
「…………」
――チャット欄――――――――――――――――
『草』
『なんで平日の昼間っからできると思ったら』
『マジか……』
『みんな気付いてるか? この女の人って前々からダンジョン関連で話題になってた人だぞ』
『ほんまや』
『金子コーポレーションの社長?』
『社長直々にご登場かよ』
『ってか、このパチカス野郎……金子コーポレーションの社員かよ。いいとこで働いてんな』
『そりゃあ、こんな金溶かせるわ』
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「あの……パチンカスさん? なんでこのパチンコ屋さんに人が沢山いますの? 日本でもかなり行きにくい場所の海底ダンジョンですわよ?」
「あぁ……。それですね。実は俺、チャンネル登録者数400万人超えの、界隈では知らない人がいないとされるギャンブル系配信者なんですよ」
「へ?」
「俺が、このパチ屋と深く関わってて、ここ最近このパチ屋での配信をずっとあげてたら、エグいほどバズったんですよ。結構利益出てますよ」
「そんなの……嘘ですわ……」
―――チャット欄―――――――――――――――
『顔草』
『絶望してるやん』
『じゃあ、なんでパチ屋作ったんだよw』
『もしかして、俺達みたいなゴミカスに利益を出せるようにしたくてこの台設定にしたけど、自分に利益が出たから絶望したとか?』
『↑あり得そうで草』
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その後、金子社長がパチンカスに言われるがままに事務所に行くと、店員総出で待ち構えていた。
「初週の売り上げだけですが、すっごいですよ」
「全台、ほぼ絶え間なく来てましたよ!」
「金子社長! これが今週の売り上げです」
「このダンジョンの1階層から8階層にある全ての台……合計約16500の総売上。約300億です!」
「……最悪ですわ」




