聞き耳だけでダンジョンテロを阻止する社長
ダンジョンテロ。
それは、世界中を巻き込み、人間だけではなくモンスターさえも狂わしてしまう重罪である。
過去に起きたダンジョンテロは、産業革命により全てを失った男性グループがダンジョンを崩壊させて一国を滅ぼしかけた。
一国が簡単に滅びてしまうほど、ダンジョンテロは凶悪なのだ。
【第5話】
「聞き耳だけでダンジョンテロを阻止する社長」
金子コーポレーションの社長室。
金子社長が今月の決算報告を見て絶望していた。
書類を見ていくたびに分かる資産。
だが、書類見ているとある事に気が付いた。
金子コーポレーションは、子会社も親会社も全てが黒字となっている事だ。
そこで金子社長は名案を思いついた。
「そうですわ! ダンジョン内でわたくしの会社を建てれば資産を減らせますわ! ダンジョン内に建てれば、モンスターがわたくしの会社の備品を盗みに来ますし、地上に行くのにも労力がかかりますし、そこで働きたい人なんて居ない……全てがマイナス! これは名案ですわ!」
さっそく思いついた案を通す為に、金子社長は秘書を呼んだ。
「秘書! 確か先日、東京に新しいダンジョンが発見されたって聞きましたの……」
「はい……ですが、それがどうなさいました?」
「そのダンジョン権……わたくしの会社が貰いますわ! 今すぐ関係各所に連絡をしなさい」
「え……ですが新ダンジョンの権利は、既存のものとは比べ物にならないほど高額ですよ? それに、実用性があるかも分かりませんし……」
「それで良いのですわ!」
「……分かりました。(また金子社長が良く分からない事してるよ……)」
「これから面白くなりますわ!」
〜2週間後〜
新しく発見されたダンジョンは爆奉ダンジョン。
世界的にも珍しい、この世にある、ありとあらゆる爆発に関わる珍しいダンジョンだ。
「おいっ……特製400グラムの、特殊ダイナマイトの用意はできたか?」
「あぁ……今回は2万個用意したぞ。これだけあれば、このダンジョンにある爆破関連の物と合わせて地盤沈下どころか、この都一帯を滅ぼせる」
「フッ……そろそろだな。我らの勇姿を……ダンジョンの抗議を……全世界へ届けるか」
「だな」
ダンジョン企業の世界的進出により、衰退した企業は数知れず、倒産した会社や失業した社会人は数多くいる。
人生がめちゃくちゃになった彼らは、ダンジョン抗議という名目で、世界中でダンジョンテロを起こしていた。
―――チャット欄―――――――――――――――
『おいっ……こいつらってまさか』
『国際テロ組織虐蝋じゃねぇか』
『早く通報しねぇと』
『通報したいけど……どうすれば良いんだよ。こいつらを特定する事はできないんだぞ!?』
『ダンジョン素材とか、ダンジョン関連の素材を使ってないから、現代ダンジョンが基盤の機械とかで特定が無理なのガチで終わってる』
『防犯カメラを片っ端から調べるったって、こいつらは妨害電波を常に放ってるし無理だぞ?』
『それに、ダンジョン内の景色は似たようなのが世界中にあるからダンジョンで特定も無理だぞ』
『やべえって』
『俺達は、どこが爆発するかも分からない恐怖に怯えないといけないのか?』
―――――――――――――――――――――――
「ハハハ。良い気味だな……毎回毎回、ダンジョンなんかを当てにするからこうなるんだぞ」
「さっそく爆破するか……って、なんだあれは」
彼らの目に映ったのは、ダンジョンの中にある巨大な社屋。
社屋には、金子コーポレーションとデカデカと書かれている。
「ダンジョン内に社屋……」
「それに金子コーポレーションか」
「最近調子に乗ってる奴らだな」
「あの建築素材……最新のダンジョン鉱か」
「最新ダンジョン鉱の強度なら、あの中に居る人が助かってしまう。見に行って居たら殺るぞ」
「あぁ……」
―――チャット欄―――――――――――――――
『金子コーポレーション!?』
『あの人ならダンジョンに会社を作りかねない』
『中に居る人早く逃げて』
『何度も何度も繰り返し通報してるのに、警察も自衛隊もまだ来ないのか……』
『ここに居る8万同接の力で、なんとかしてこいつらを止めないと』
『止めるってどうするんだよ』
―――――――――――――――――――――――
テロ組織の奴らは音を立てず、社屋にゆっくりと近付いていく。
「……この社屋は防音か」
「かなり性能が高いようだな」
「おいっ、超指向性マイクを起動しろ」
「あぁ」
『ザザ……ザザザ……』
虐蝋が使う超指向性マイクは、完全防音仕様のビルでも、音を拾えるほどの効力だった。
『か……こ社長……こ……の予算ですが……』
「あまり音を拾えないな」
「急げ。拾うのは最低限で良い。ダンジョン内に会社を建設するという事は、よっぽど防犯システムに自信があるのだろう。機を見て突撃するぞ」
「分かった」
一方で、会社前にテロ組織の一員が居ると知らない金子社長と秘書は、今後について話していた。
「金子社長……今月の予算ですが、例年よりも多いようです」
「分かりましたわ。なら今後は、(人件費を増やす為に)人員を増やして更なる技術(コストを増やす為に)を我が社に持ってきて世界進出を……」
「…………ゴホッ……ゴホッ」
「秘書? どうなさいましたの?」
「すいません社長……。昨日から少し風邪気味で……一応飲み薬を飲んでいるんですが……」
「……そ、それですわ! そのうち、世界中から薬剤師を集めて雇うのも良いですわね!」
虐蝋の超指向性マイク。
『わかり……た……こんごは……じんぎを……わがしゃに……せかいしんしゅつを……せかいじゅうからやくざを……やとう……いいです……ね』
「え? 仁義? 世界進出?」
「世界中から893を雇うだと?」
「まさかこいつら……893と繋がって……」
「いやいや……何かの間違いだろ」
金子社長と秘書の会話。
「先日インドに行って商談した会社から、我が社の事業に参加すると連絡が来ましたよ。これで我が社も世界約100カ国に進出ですね!」
「……なら、人員を配置しなさい。あの国は今不安定ですから……」
「社長! マフィンとアイスを組み合わせたデザートを食べますか? これ、今オフィス内でブームなんですよ……どうですか?」
「ありがとうですわ」
虐蝋の超指向性マイク。
『せんじつから……さんか……ひゃくかくこにしんしゅつ……じんいんを……ふあんてい……まふぃ……あ……くみあわせ……ぶーむ……』
「嘘だろ……」
「傘下が100カ国に進出?」
「マフィアとの組み合わせがブームだと?」
「流石にこれはまずくないか?」
「100カ国って……我ら虐蝋が長年同志を集めてきた成果の43カ国よりも圧倒的に多いぞ!?」
「100カ国のマフィアと合併するのか?」
―――チャット欄―――――――――――――――
『何言ってんだコイツら?』
『おいっ、なんか滝汗かいてるぞ』
『何の話だ?』
『おいっ、今さっき金子コーポレーションの過去のダンジョン権の購入履歴を見たら、ここは東京に出現した最新ダンジョンの可能性が高いぞ!』
『マジかよ』
『全員で行くぞ』
『それをここで話すなって……バレるぞ』
『いや、バレる前に爆速で行く』
『というか、こいつら……さっきからずっとチャット欄見てないぞ?』
『ここに居る12万同接の力で何とかするぞ』
―――――――――――――――――――――――
金子社長と秘書。
「おいし〜い……これは誰が作ったんですの?」
「パチンカスだよ」
「ギャップが凄いな。あの人が料理にアイスクリームとか使ってるイメージないんだけどな……」
「練習したと思いますの。でも、パチンカスさんってお料理は素人じゃなかったんですのね……」
虐蝋の超指向性マイク。
『だれ…………だ………………ぎゃ……く……ろう……ですね……』
「!?」
「おいっ……まずいぞ」
「バレた……」
「早く殺るぞ」
「いや、どうするんだよ……先手を取られたぞ」
「なら、今すぐここを爆破して……」
『ガチャンッ』
「誰だ?」
「なんだこれ……モンスター用の縛り鉄だと?」
「いつの間に……」
「ここに居るメンバー全員に……」
「国際テロ組織虐蝋……貴様らを捕縛する」
虐蝋が想定外の事態に混乱していると、配信を見ていた探索者や、警察、自衛隊達が周りを囲んで逃げられないようにして捕らえた。
◆◆◆
「秘書……今から控えている商談へ行きますわ」
「分かりました」
ダンジョン内の会社で仕事を終えた金子社長達は準備をして外に出た。
「…………え?」
金子社長が気付かない間に、外は500人以上の人達が社長を待っていた。
「あなたのおかげです」
「へ?」
「あなたが国際テロ組織……虐蝋の計画を阻止してこの東京を大爆発から守ってくれたお陰で何千万人の方が助かりました! それに、我々は遂に虐蝋のデータを取ることができました……本当に何から何まで……ありがとうございました!」
―――チャット欄―――――――――――――――
『この人は……どれだけ俺達を救うんだ』
『大手柄すぎる』
『何十年の間、手掛かりすらも掴めなかった国際テロ組織のテロを事前に止めて、テロ組織の重要なデータを提供するとか神過ぎる』
『この顔がまた良いんよな』
『かわいい』
『この人は一体どこまで先を見てるんだ』
―――――――――――――――――――――――
「今回の件で東京に住んでる方や国からお礼金が出ていますよ! お礼金額は……320億です!」
「何が起こったんですの……」
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