ダンジョン内で地下駐車場を作りましょう
(今日はどうやって資産を減らしましょうか。この間は結局、資産が増えてしまって……)
「あ〜もうっ。なりふり構っていられませんわ」
丸1日を使って金子社長は、視察という名目で色んな場所を巡り、案は無いのかと探し回った。
『カァ〜……カァ〜……カァ〜』
「社長。もう日が落ちかけています。早く会社に戻りましょう。大事な商談が控えています」
「……そうね。一旦会社に戻って、控えている商談を進めて、それから案を考え……っえ!?」
その時、金子社長の目に映ったのは、自分達が停めている最初の30分は無料になる駐車場とは違い、最初から有料だったが故にすっからかんとなった薄暗く、3階もある駐車場だった。
「そ……それですわ!」
「金子社長?」
「今すぐにでも、伊豆大島にある海産ダンジョンの全階層にあるダンジョン権を取得しなさい」
「え? ですが、伊豆大島のダンジョンは本当に何もありませんよ? 5階層までしかありませんし……取れる素材も討伐禁止の法で価値がほぼ無くなった魚系統のモンスターしか居ませんよ?」
「問題ありませんわ!」
「は……はぁ。金子社長が言うなら言う通りにしますけど……(金子社長は何がしたいんだか)」
〜1週間後〜
金子社長達は、大事な商談を終わらせた後、伊豆大島にある海産ダンジョンの2階層に来ていた。
「金子社長。ここに何かあるんですか? 俺を含めて4人、何も無い伊豆大島のダンジョンに連れてきて……秘書は何か知ってるのか?(チラッ)」
社員が秘書に目を向けると秘書は目を逸らした。
「今回のダンジョン施策は、民間企業がやっているただのダンジョン商売ではありませんの」
「は……はぁ」
「そう。今回のわたくしは、ここに居る【開発部門筆頭】の『エンジンソンさん』と共同開発しながら、完成させましたのよ!」
「研究とは、51%の結果と49%の過程である」
「…………」
エンジンソンの言葉に秘書は呆れていたが、社員は反応した。
「駄目ー。開発を担当している社員が、発明の偉人の名言を汚したら絶対駄目ー」
「何を言ってますの? エンジンソンさんは、かの有名な発明家……エジソンの子孫ですのよ?」
「あぁ……子孫だった……」
「じゃあ、私は新たな発明に戻らせてもらいます。実験……解明……発明……楽しみだなぁ」
「いってらっしゃいですわ」
エンジンソンが居なくなると、金子社長は肩にかけていたバッグから機材を取り出して、配信をする準備をした。
「それじゃあ早速……配信をしますわよ」
「ところで金子社長はここで何をしようとしていたんですか? 価値なんてほぼ無いですよね?」
「今から説明しますわ」
『ポチッ』
―――チャット欄―――――――――――――――
『今度はなんだ?』
『伊豆大島で地下駐車場だと?』
『あそこって資産価値がほぼ無いだろ』
『ってか、なんで配信してるんだ?』
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(今回は、全く資産価値が無いダンジョンでの地下駐車場ですわ。建設費で資産を減らし、維持費で更に資産を減らし、国に多額のお金を払う事でダンジョンを一次的に借りる『ダンジョン権』を持つことで資産を減らす。三重式資減ですわ)
「皆さん……今回の私は、以前と違いますわよ」
―――チャット欄―――――――――――――――
『ちょっと俺、家近いから行ってみるわ』
『勇者だなお前』
『大型客船で行くにはどれくらい掛かるんだ?』
『割に合わないだろ……俺も行ってみよ』
『今から行くとしたら早くても22時か……』
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(チャット欄に何人かここに来るって言ってる人が居ますわね。ですが、これを見れば恐らく誰もがここに来る気も失せますのよ)
「そろそろですわね」
『ブゥゥゥゥン』
なにやら遠くから何やら鈍い音が近付いてきた。
『いらっしゃいませ。駐車券をお取りください』
―――チャット欄―――――――――――――――
『なんだこの聞き馴染みのある声は』
『は? 車の音がしねぇか?』
『ってか、この景色……』
『嘘だろ。ダンジョン内なのに地面にコンクリートがあって、白線が描いてあると思ったら……』
『まさか……』
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『バーが上がります。ご注意ください』
『ブゥゥゥゥン……ガチャッ』
何台か車が止まり、中から出てきたのは、全身が日焼けしている老人達だった。
「美怜ちゃん。先週ダンジョン権を取得したと思ったらもうこんな駐車場が……それにダンジョン内の有料カーゲートもしっかり機能しとるわい」
「そのカーゲートは、エンジンソンさんという方が作って下さったの。ダンジョン内でもほぼ永久的に使える優れものですのよ!」
「そんな凄いものを、老い先短いわしらの為に作ってくださるなんて……」
「……町内会のおじいちゃん。この度はわたくしの呼びかけに応じて下さってありがとうですわ。それと、ダンジョンの権利をわたくし達が買えるようにしてくれて本当にありがとうですわ」
「こちらこそじゃよ」
―――チャット欄―――――――――――――――
『ダンジョン内にカーゲートだと?』
『車の出入りができるってことか……でも、このダンジョンでカーゲートは流石に……』
『しかもあれ……見た感じ最初から有料だぞ』
『誰が行くんだ?』
『さっきの奴らも知ったら行かないだろ』
『皆ご老人だ……』
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(良い調子ですわ。このまま噂が広まると、ただ資産が減るだけでなく、資産価値が無いダンジョンとは言え、民間企業が勝手に有料化にしたとして日本中で炎上するに違いないですわ……)
金子社長がガッツポーズをしていると、老人がどんどん集まっていき、大型車両も増えていった。
「よっちゃん。今日の潮風はどうじゃわい」
「今日は大漁の予感じゃな」
「ほ〜れ、よっちゃんや。漁船を運ぶぞ〜!」
「あいよ〜」
―――チャット欄―――――――――――――――
『は? まさかこの駐車場って……』
『ここで漁業をするのか?』
『いや、利益でねぇだろ』
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(え……いつの間に人が集まって……一体、何が起こってるんですの?)
「町内会のおじさん。有料のカーゲートを設置したのに、ここで漁をしてますの? ここで漁をするよりも、漁港でした方がいいのではなくて」
「あ〜そうじゃそうじゃ。美怜ちゃんに、一番大事な事を言ってなかったんじゃ」
『バッシャ〜ン(網で水の中を掻き回す音)』
「このダンジョンは、世界にここだけにしかない絶品の塩や、唯一無二の真珠が採れるんじゃ。今まで説明しなくて悪かったの」
「嘘でしょ……」
『パカッ』
「ほれ真珠じゃ。それと、これがうち原産の塩……『塩求め』じゃ」
―――チャット欄―――――――――――――――
『おいおいマジかよ……』
『嘘だろ? 塩求めってここが原産だったのか』
『塩求めつったら、一キロ七万円は超えるぞ?』
『真珠デカすぎだろ……』
『真珠の光沢えっぐ……』
『これを加工したら魔装具にできるんじゃね?』
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『プーッ……プーッ……プーッ……プーッ……』
「美怜ちゃんが地下駐車場を作ってくれたおかげで、始めて漁船を運べたわい。これからはこの伊豆大島の産業がもっと豊かになるんじゃろうな」
「ありがとね美怜ちゃん」
「ありがとね」
「嘘で……ですわよね」
―――チャット欄―――――――――――――――
『これも見据えていたってことか?』
『現地の人が言ってなかった事の全てを理解していたのか……』
『いや無いだろ。本人も今知ったって感じの顔してたじゃねぇか』
『それこそ無いだろ。普通に考えても、海産ダンジョンに地下駐車場作るのは、メリットがあまりにも絞られすぎてる』
『それな』
『企業がやる事であり得るとしたら、海産ダンジョンの流通を良くするためぐらいしか無くね?』
『やっぱそうよな』
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〜3日後の社長室〜
「金子社長が作った地下駐車場の利益は凄い事になってますよ。常に2800台止まれる駐車場は満員なので3日間の総利益……4億6000万円です」
(ま……まぁ、まだギリギリ耐えた方ですわ。取り敢えず安心しました。……今すぐにでもダンジョン権を町内会に返して対策を……)
『ガチャッ(扉が開く音)』
「町内会からのお礼金が届きました」
「へっ?」
「その金額は……約25億円です」
「最悪ですわ…………」




