ダンジョンをコンクリートで埋めましょう
工事中のビル前の道を1人の女性が歩いていた。
女性の名前は、金子美怜。
社長令嬢だ。
(う〜ん……どうやって資産を減らしましょうか。父と契約したからには減らさないと……)
『ガッガッガッガッガッガーーー(工事音)』
(ん……何の音ですの?)
金子社長が音のする方を見ると、工事現場で作業している作業員の姿があった。
「オーライ。オーライ。OK。そこにコンクリートを流して。おいっ、こっちを手伝えるか?」
「分かりました先輩」
(コンクリート……ミキサー車……埋め立て……)
金子社長は深々と考えた。
「そうですわ!」
金子社長はポケットからスマホを取り出すと、自分の会社の秘書に電話をかけた。
『プルルル……プルルルル……(電話の音)』
「ごめん……。急で悪いけど、うちの子会社に建設会社が25社ぐらいありませんでしたっけ?」
『ありますよ……。確か26社ほど』
「じゃあ、その建設会社に依頼して、今動員できる建設員と、動かせるものを全て動かしなさい」
『は……はぁ。しかし社長。一体それは何に使うので? ビルの建設なら既に行っていますよ?』
「それは後で説明しますわ。今はとりあえず、わたくしが言った通りにしなさい」
『……分かりました』
〜次の日〜
大阪のとあるダンジョン前にて、『ただいま工事中』と書かれた看板が、大量に置かれていた。
『ブォォォォォォォォォォォン』
『ブォォォォォォォォォォォン』
「流石に凄い眺めですね……金子社長。まさかここで、ミキサー車を約480台も稼働するとは」
「先程、このダンジョンにモンスターが集まったと聞きましたわ。では早速、わたくしの子会社のミキサー車をフル稼働して生配信をしますわ!」
金子社長はそう言うと、機材の準備をした。
「えっ社長……その機材ってまさか。大丈夫なんですか……取り返しの付かない事になりますよ」
「大丈夫ですわ」
金子社長は黙々と機材の準備をしていく。
(ダンジョン関係の法律は厳しい……。だから一発で倒産できますわ。それに、この配信を見に来た人達の力があれば……一気に世界中に拡散されて、炎上して、絶対に倒産できますわ)
「それじゃあ、配信開始ですわ(ポチッ)」
―――チャット欄―――――――――――――――
『おいおい……マジかよ。ダンジョンをコンクリートで埋め立てとか……何やってんだこいつら』
『日本を潰す気か……』
『タイトル詐欺かと思ったらなんだよこれ……』
『ミキサー車の数エグすぎだろ……』
―――――――――――――――――――――――
「社長。早速ですが、同接1万を記録しました」
金子社長は、片目でチャット欄を覗くと頷き、この場にいる全作業員に聞こえる声を出した。
「それじゃあ皆さん。早速ですが、ダンジョンにコンクリートの投下を……お願いしますわ!」
『ブォォォォォォォォォォォン』
『ピーッピーッピーッピーッ』
―――チャット欄―――――――――――――――
『おいおい……こいつらマジでやりやがった』
『流石に止めないとまずいんじゃぁ……』
『これ、良く承諾されたな……。あっ、違法行為だから、無断でしてるのか……』
『ダンジョンをコンクリートで埋め立てたら、モンスターが数100……数1000体は死ぬだろ……』
『モンスター賠償金いくらだよ……』
―――――――――――――――――――――――
「ダンジョンコンクリート埋め立て部隊の第一波は終わりですわ。第二波も第一波に続きなさい」
―――チャット欄―――――――――――――――
『流石にやべぇな』
『なんでこの場の誰も止めねぇんだよ』
『大胆すぎるだろ……』
『なんで堂々としてるんだよ』
―――――――――――――――――――――――
(チャット欄の様子は……良い感じですわね)
「第三波も続きなさい!」
『ブォォォォォォォォォォォン』
『ブォォォォォォォォォォォン』
―――チャット欄―――――――――――――――
『ってか……今思ったけど、ここって……仁徳天皇陵古墳前のダンジョンじゃないか?』
『え? 嘘だろ?』
『……マジや』
『空気変わったな』
『この人は救世主か?』
『ん? 救世主ってどういう事や?』
『この仁徳天皇陵古墳前のダンジョンは、昨日から、人を殺し続けた極悪でヤバいモンスター達が集まって、外で暴れようと画策してるんだよ』
『それで今朝、ダンジョンを探索して素材を集める人達……探索者の中で、討伐チームが組まれてたんだけど、正直状況は壊滅的だった……』
『つまり……この人って』
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(さ〜て、今のチャット欄の様子は……先程の様子だと100%通報されてますわよね……一体どうなってます……の)
「え……何で私達が賞賛されてますの?」
金子社長が目にしたのは、思い描いていたのとは違う、賞賛一色のチャット欄だった。
―――チャット欄―――――――――――――――
『つまり……この人は誰も犠牲を出さないように、ダンジョンをコンクリートで埋め立てて、被害を最小限に抑えているってことか?』
『リスクが大き過ぎる事を俺達探索者……ここに住んでる一般人の為にやってくれたのか……』
『流石にそれはないと思ったけど、どう考えてもダンジョン内にコンクリートを流す意味がそれしか思いつかないんだよなぁ……』
『神かよ……』
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(あれ……なんか雲行きが怪しくなってません?)
金子社長は直ぐにチャット欄から目を離してこの場にいる全員に伝えた。
「全員ストーップ。ミキサー車を止めなさーい」
「無理ですよ社長。もうこれだけの数を動員して、フル稼働させてるんですから」
(やらかしましたわ……一体どうすれば……)
金子社長が焦ったその時だった。
『ウーウーウーウー』
(サイレン?)
気が付けば、目の前にパトカーが何10台も止まり、ただ事じゃない雰囲気を醸し出していた。
『ガチャッ』
中からは必死な形相をした警察官が出てきた。
「貴方は何てことをしてくれるんですか。ただ事じゃすみませんよ。貴方って人はほんとに……」
(もしかしてこれは……賠償金ですの?)
金子社長が期待に胸を馳せたその時だった。
「本当に……ありがとうございます!」
「へ?」
「実は、このダンジョン内に集まった極悪なモンスターは、私達警察や、自衛隊も関わる筈でした。それでも生きて帰れる確率は0%に近いって……ですが、貴方がダンジョンが埋め立てられたことによりモンスターの討伐だけでなく、モンスターとの戦闘による地盤沈下の可能性も無くなりました! 本当に……ありがとうございます」
「…………嘘」
―――チャット欄―――――――――――――――
『草』
『この人エグいな』
『この人の会社の資産は大丈夫なのか?』
『まぁ何にせよ……救世主やな』
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その後、金子社長はミキサー車を止めようとしたが力及ばず、仁徳天皇陵古墳前のダンジョンは完全に埋め立てられ、その光景を眺めていることしかできなかった。
〜後日〜
(まぁ何にせよ……一応資産は減りましたから……今回は良しと言うことで……)
金子社長が社長室で仕事をしていると、昨日一緒していた秘書が大量の紙を持ってきた。
「社長。この間のダンジョン埋め立ての件。周辺の地域や討伐隊の人たちからものすごい額のお礼金と感謝状が届いていますよ」
「へっ? お礼金? いくらですの?」
「お礼金額は……約320億です!」
「最悪ですわ……」




