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【C. 新しい線の始まり】
リリアナは静かに歩み出し、掌の中の小さな笛を見つめた。
それは、かつて“祈り”を捧げるために吹いていたもの。
だが今は――違う。
彼女は唇に笛をあて、そっと息を吹き込む。
――ピィィ……。
澄んだ音が、朝の空気を貫いた。
それは悲しみでも、願いでもない。
始まりを告げる音。
音の波が丘を包むと同時に、足元の地面がふっと光を帯びる。
黒く焦げた大地の隙間から、淡い線が浮かび上がった。
その線は震えながら、ゆっくりと遠くへ伸びていく。
レールのようで、まだレールではない。
けれど確かに――未来の鉄路だった。
アルノが息を呑む。
「……また、走れるんですね。」
クラリスは微笑み、眩しそうに朝焼けを見上げた。
「今度の行き先は?」
リリアナは笛を下ろし、柔らかく答える。
「――まだ、誰も知らない。けど、それでいいの。」
光の線はゆっくりと丘を下り、焼け跡を越え、地平線の向こうへと続いていく。
それは、誰かが歩き出すたびに少しずつ形を変える“心のレール”。
そしてその上に、新しい朝が広がっていった――。




