【B. 悠真の言葉】
焦げた風を切って、背後からゆっくりとした足音が近づく。
リリアナが振り返ると、そこに立っていたのは悠真だった。
破れた制服の袖から、焼け焦げた布がはためく。
しかし、その瞳には疲れよりも、確かな誇りの光が宿っていた。
彼は無言のまま、丘のふもと――昨夜の戦場を見下ろす。
その視線の先には、黒く焼けた線路と、まだ空に漂う淡い光の筋。
まるで夜を越えた列車の残像が、空に線を描いているようだった。
悠真「……線路は、走る者が決める。
神でも、国家でもない――“心”がな。」
その声は、かすれながらも力強く、リリアナの胸の奥に響いた。
リリアナはそっと時刻表を閉じる。
手の中に残る温もりは、もう“命令書”ではなく、“約束”のようだった。
少し離れた場所から、クラリスとアルノが姿を現す。
二人もまた、戦火をくぐった傷を抱えながら、それでも笑っていた。
クラリス「やっと、終点についたんですかね?」
リリアナ「いいえ……まだ“始発”です。」
三人は並んで空を見上げた。
朝焼けの向こう、光の残滓がゆっくりと溶けていく。
それは確かに、昨夜――“自由行き列車”が描いた軌跡の残光だった。
風が吹く。
その風の音が、まるで遠い汽笛のように、優しく彼らの背を押していった――。




