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第17話 エピローグ:レールは心に残る 【A. 焼け跡の朝】
――朝靄の中、焦げた空気に混じって、かすかに鉄と雨の匂いが漂っていた。
丘の上から見下ろす首都は、まだ煙を吐いている。
切符庁があったあの大通りは、瓦礫の山と化し、かつての栄光を想わせるものは何一つ残っていなかった。
それでも――風はやさしく、どこか“再生”の香りを運んでくる。
リリアナは膝をつき、黒く焦げた瓦礫をかき分けた。
その手の中に、ひとつの本が現れる。
『時刻表の書』――燃え落ちた庁舎の中心にあった、あの“心の地図”。
表紙は煤にまみれていたが、不思議なことにページは無傷だった。
指先でそっと開くと、静かな白光が溢れだす。
そこには、一枚の新しいページ。
――何も書かれていない白紙。
だが、ページの端に、小さな光の文字が浮かび上がる。
【自由支線:未定】
その言葉を見つめた瞬間、胸の奥で何かが震えた。
焼け落ちたものの中で、確かに“未来”だけが残っていた。
リリアナはそっと笑みを浮かべ、指先でその文字をなぞる。
「……終点じゃなくて、“未定”なんですね。」
朝日が昇り始める。
瓦礫の上に差す光が、まるで新しい線路のように、ゆっくりと地平へ伸びていった――。




