【D. グランベルの葛藤】
――司令塔の窓越しに、夜空が割れていた。
雨の帳を突き抜け、光の列車が天へと昇っていく。
その軌跡は、まるで“祈りが自由へと変わる瞬間”を描くかのようだった。
通信兵が慌てた声で叫ぶ。
「総監! 封鎖線突破確認! 命令を、撃墜を――!」
だが、グランベル・カーディスは応じない。
窓の外を見据えたまま、冷たい指先で机上の鉄道規範書を閉じた。
その音は、まるで“時代”が終わる音のように重く響いた。
グランベル「……撃つな。」
部下たちが凍りつく。
雨の雫が司令塔のガラスを伝い、灯りを歪ませていた。
グランベル「彼らは、もう――神の線路を越えた。」
その声には、怒りも恐れもなかった。
あるのは、ただ静かな諦念と敬意。
目の前にあるのは、自らが否定した理想の結実。
“信仰の鉄路”を離れ、“心の道”を走り出した列車。
彼は目を細め、唇にかすかな微笑を浮かべた。
グランベル「ならば、次は……人の時代だ。」
司令塔の光が彼の頬を照らす。
その一瞬――
かつて教壇に立ち、生徒たちに“鉄道の夢”を語っていた頃の表情が、確かにそこにあった。
外では、光の列車が雲を突き抜ける。
まるで神の定めた空の線路を、自らの意志で書き換えるように――。




