【C. 封鎖線との衝突】
夜の雨が、世界を黒く塗りつぶしていた。
その中で――一つの笛の音が、空を裂くように響き渡る。
ピィイイイイイ――ッ!!
クラリスの吹く操舵笛が、まるで“祈り”のように空気を震わせた。
その響きが雨粒に触れるたび、冷たい水滴が光の粒子へと変わっていく。
封鎖線の向こう、軍の照明弾が降り注ぐ夜空を、銀の機関が走り出す。
――《リヴァイアライン号》、発車。
蒸気が爆ぜ、轟音が地を揺らす。
列車の車輪がレールを掴み、鉄と魂がひとつになるように前へと突き進んだ。
雨の帳を切り裂き、封鎖灯の赤を正面から飲み込んでいく。
悠真「止められるもんなら、止めてみろ……!」
封鎖線の向こうでは、国家軍が慌てて砲門を構える。
雷鳴と混じるように、次々と砲弾が放たれる。
だが、その瞬間――アルノが列車の先頭で一枚の切符を掲げた。
それは、“未来行き切符”。
時を超える光を宿した、唯一無二の祈りの象徴。
切符が宙へと放たれると、文字が淡く輝き始める。
【自由行き】
【発車時刻:今】
【座席:すべての心】
光の文面が空に広がり、列車全体を包み込んだ。
砲弾が命中する瞬間、爆炎が弾ける――だが、爆煙の代わりに光の障壁が展開する。
それはまるで、未来そのものが列車を護るかのようだった。
車体に当たる炎が柔らかく変質し、紅から金へと変わる。
弾丸が当たるたび、火花が花弁のように舞い、空中で光の花を咲かせて消えていく。
そのたびに、車内の学生たちの胸に、希望の火が広がっていくのがわかった。
リリアナ「見て……! 線路が、描かれていく……!」
彼女の視線の先で、夜空に一本の光のレールが浮かび上がる。
それは、炎でも弾丸でも焼き払えない――人の心が描いた、永遠の軌跡。
轟音の中を、《リヴァイアライン号》は突き抜ける。
封鎖線を、信仰の壁を、そして過去の鉄律を。
列車は今、ただ一つの真実に導かれて走っていた。
「鉄道とは、心が走る道だ」――。
その信念だけを燃料に、光の列車は夜空を駆け抜けていく。




