表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『異世界鉄道ゆる建設記 ~鉄道マニア、線路で世界をつなぐ~』  作者: 南蛇井


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
78/94

【B. グランベルの到来】

 轟音とともに、廃駅の静寂が裂けた。

 月光の下、黒鉄の車体がホームに滑り込む。

 軍列車――その灯は冷たく、まるで夜そのものを押し退けるように強く輝いていた。


 蒸気が吹き上がり、鉄と油の匂いがあたりを満たす。

 開いた車両の扉から、一人の男が降り立った。


 鋼の外套を羽織り、背には古びた書物――“鉄道規範書”を背負っている。

 国家交通庁長官、グランベル・カーディス総監。

 その足取りは、まるで重い時代そのものを踏みしめるように、音を立てて近づいてくる。


 「久しいな、悠真。……いや、“教え子”と呼ぶべきか。」

 静かな声が、冷気の中で響いた。


 悠真は唇の端をわずかに歪めた。

 「先生――あんたが、まだその名を覚えていたとはな。」


 二人の間を、風が通り抜ける。

 その一瞬に、過ぎ去った年月と、崩れた信念の距離が見えるようだった。


 かつて彼らは同じ鉄道学院で“鉄路の神学”を学び、夢を語り合った仲だった。

 だが――ある日を境に、道は分かれた。

 悠真は「鉄道は心の自由だ」と説き、

 グランベルは「鉄道は神の秩序だ」と信じた。


 今、その二つの思想が、錆びたホームの上で再び交差する。


 「お前が説いた“自由の鉄道”は、民を惑わせた。」

 グランベルの瞳が、氷のように光る。

 「線路は祈りの道。人が勝手に引けば、世界は乱れる。」


 悠真は一歩、前に出た。

 「違う。鉄道は神のものじゃない。」

 低く、だが確かな声。

 「走る者が信じ、繋ぐ者が築く――それが、人の道だ!」


 言葉がぶつかり合う。

 次の瞬間、軍列車の蒸気が一斉に吹き上がった。

 二人の間を、白い霧が覆い尽くす。


 まるで――“神と人”を隔てる、見えぬ境界線のように。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ