【D. 裏切りの告発】
翌朝。
灰の匂いがまだ街に残る時間、首都全域の魔導通信塔に同じ映像が流れた。
ニュースキャスターの無機質な声が、冷たく響く。
「速報です。昨日、首都切符庁において――“鉄道信仰復活派”による放火事件が発生しました。
現場には、アカデミー・オブ・レール所属、リリアナ・クロウベルの姿も確認されています。」
画面には、燃え上がる庁舎。
その中を走り抜ける一人の女性のシルエット――
抱えた本、燃える切符、そして笛の音。
報道はそれを、“反逆の儀式”として編集していた。
「彼女は鉄道を信仰の象徴として再興を目論み、国家資産を焼却した疑いがあります。
政府は本日、彼女を“鉄道過激派の首謀者”として正式に指名しました。」
市民たちの間にざわめきが広がる。
店の前、停車した電車の車内、食堂のモニター――
どこも同じ言葉が流れ、同じ沈黙が落ちていった。
「……嘘だろ。リリアナ先生が?」
「まさか、あの“切符庁の守り人”が……?」
真実を知る者たちは、声を失った。
そして政府庁舎の奥、暗闇の中で一人の男が映像を見下ろしている。
グランベル総監。
その口元が、ゆっくりと歪む。
「信仰を守ろうとする者は、信仰に滅ぶ。
いいか――これが“秩序”だ。」
画面は黒くフェードアウト。
その最後に映るのは、燃え残った一枚の切符。
――そこには、リリアナの筆跡で書かれていた。
『まだ、旅は終わらない。』




