第14話 「裏切りと告発 ― 切符庁の炎」【A. 焚書命令】
職員長老「違う! これは希望の記録だ! 行き先のない人々に、夢を与えるための――!」
・職員たちが必死に抵抗するが、火炎魔導器が点火され、庁舎の一角が炎に包まれる。 ラノベ化
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【A. 焚書命令】
――ラノベ調本文――
首都・エルディアの中心区にそびえる「切符庁本館」。
かつて“鉄道信仰の心臓部”と呼ばれたその建物は、古代鉄路の意匠を受け継ぐ壮麗な石造りだった。
壁面には旅路の詩が刻まれ、中央ホールには無数の“魂の切符”が積み上げられている。
それは人々の願い、出発の誓い、失われた約束――**「心の記録」**だった。
だが今、その祈りの殿堂を包囲する影がある。
黒い制服に身を包んだ治安部隊が、冷たい魔導銃を構えて立ち並んでいた。
先頭に立つのは、銀髪の壮年――国家交通庁直属、治安部隊長レンド。
「グランベル総監の命により、ここに通達する!」
「本庁が保管する“切符”は、すべて虚偽の信仰物と見なす! 即時焼却せよ!」
その声は、無機質な拡声魔導器を通して響きわたる。
ホールの奥にいた職員たちは、一瞬、言葉を失った。
そして老職員が震える手で机を叩き、かすれた声を上げる。
「な……なんという暴挙だ! これは民の希望を刻む記録だぞ!
行き先を失った人々に、もう一度“明日”を見せるための切符なんだ!」
だがその叫びは、冷笑とともに踏みつぶされた。
「希望? 幻想の間違いだ。国家の認可なく旅立つことなど許されん。
お前たちは秩序を乱す呪符をばらまいた罪人だ!」
レンドが合図を送る。
瞬間、兵士たちの手に握られた火炎魔導器が起動した。
赤い魔法陣が床に浮かび、炎が奔流のように天へと噴き上がる。
――轟音。
炎はたちまち紙の山を飲み込み、願いの文が一枚、また一枚と焦げ落ちていく。
焦げる香とともに、ホールの空気が歪む。
それはまるで、人々の夢が焼かれていく音だった。
老職員は崩れ落ち、燃え盛る切符を見上げながらつぶやいた。
「……レールの神よ、どうか彼らの行き先を奪わないでくれ……」
だが、炎は答えなかった。
切符庁本館――人の想いを記す聖域が、国家の命によって燃やされていく。
それは“信仰の終焉”を告げる、最初の焚書の夜だった。




