反発の波紋 ――「止まらぬ心」
夜の首都。
通りに並ぶ電光掲示板が一斉に赤く染まった。
冷たい雨が石畳を濡らし、ニュースの文字が光の水面に滲む。
【速報】――政府、鉄道新設および延長を全面禁止。
【通称】“鉄道封鎖通達”
その瞬間、街のざわめきが止まった。
人々は足を止め、息を詰めるように掲示板を見上げる。
市民A「まさか……これで、新しい路線は全部止まるってことか?」
市民B「“心の列車”まで止める気かよ……!」
屋台の主人がスープ鍋の火を止め、新聞売りが手を止めた。
夜風がひゅう、と通り抜ける。
――街全体が、凍りついたようだった。
しかし、静寂は長く続かなかった。
次の瞬間、誰かが怒りをぶつけるように叫んだ。
「ふざけるな!」「鉄道は俺たちの誇りだ!」
群衆のざわめきが波紋のように広がっていく。
その裏で、地下通信網を通じて一つの声明が世界中に流れた。
発信元――“鉄道ギルド”。
彼らは民間の技師や元鉄道員で構成された、地下組織だった。
ギルド代表(音声声明)
「鉄道は、誰の所有物でもない。
それは人と人を結ぶ――“自由の道”だ!」
古びた倉庫の中、整備士たちが端末を握りしめる。
赤錆びたレールに手を置き、誓うように目を閉じる者もいた。
その手のひらには、油と希望の匂いが混じっていた。
やがて報道番組が切り替わり、学園の校章が映し出される。
“アカデミー・オブ・レール”。
そこでは、リリアナ・エルステインが記者会見に臨んでいた。
白い制服、金糸の襟章。
彼女は一歩前に出て、まっすぐカメラを見つめる。
リリアナ「線路は、国家のために造られたものではありません。
人が想いを繋ぐために存在する――それが鉄道の本質です。」
その声は、震えていなかった。
冷たい夜を裂くように、澄んで、強かった。
映像を見守る街の人々の目に、少しずつ光が戻る。
誰かが小さく呟く。
「……まだ、終わっちゃいないな。」
――こうして、“鉄道封鎖通達”は、
国家と信仰、そして人々の心の線路を分断する火種となった。




