3. “笛の誓い” ― 鉄道教師の儀式
――夜の校庭に、銀の線路が静かに続いていた。
月明かりの下、悠真が足を止める。視線の先で、リリアナが胸に笛を抱いて立っていた。
風がふっと吹き抜け、草木のざわめきが消える。
ただ、二人の間にだけ時間が流れていた。
悠真「……その笛、懐かしいな。」
リリアナ「ええ。あなたが“希望支線”の完成式でくださったものです。
でも今日は――この学園の“心”の発車に使います。」
リリアナは笛をそっと持ち上げる。
白銀の管が月光を受けて、まるで小さなレールのように輝いた。
悠真は一歩近づき、笛に手を添える。
指先が触れた瞬間、笛がふっと温かい光を帯びた。
悠真「……次の発車は、生徒たちの手で。」
リリアナ「ええ――これが、“笛の誓い”です。」
ふたりは静かに顔を見合わせる。
そして、同時に息を吹き込んだ。
――ピィィィィ……
夜の空気を震わせるその音は、優しく、それでいて確かな“発車信号”だった。
音が広がるたび、校舎のレールが淡く光を帯び、まるで学園そのものが呼吸を始めたかのように輝く。
風が笛の余韻を運び、満月がその軌跡を照らした。
それは、ひとつの時代の終わりと、新しい“旅立ち”の音。
――“笛の誓い”。
心の線路を、次の世代へと繋ぐ、教師たちの最後の発車信号だった。




