第11話 終盤:笛の誓い 1. 夜の静寂 ― レールの下に流れる“心音”
――夜風が、静寂を運んでいた。
学園祭の喧噪がすっかり消えた校庭。
月明かりに照らされた一本のレールが、銀糸のように地面を貫いている。
まるで、夜空と地上を結ぶ“ひとすじの道”のようだった。
悠真は、その線路をゆっくりと歩いていた。
靴底が砂利を踏むたび、かすかな音が響く。
彼は手をポケットに入れ、継ぎ目を確かめるように目を細める。
「……祭りのあとってのは、いいもんだな。」
風が通り抜け、遠くで鉄塔が軋む音がした。
その音はどこか、笛の余韻にも似ている。
まるで、祭りを終えた線路がまだ夢を見ているかのように――。
悠真(心の声)「鉄道ってやつは、不思議だ。
誰も走ってなくても、まだ“鼓動”が残ってる。」
沈黙の中に、たしかな“心音”があった。
それは、昼間ここを走り抜けた生徒たちの笑い声の残響。
そして――鉄道を愛する者たちの“想い”そのものだった。
ふと、背後から柔らかな足音が聞こえる。
振り返ると、月を背にしたひとりの少女が立っていた。
白い外套の裾が風に揺れ、銀髪が夜気をすべる。
手には一本の笛。彼女――リリアナ・グレイスは、微笑を浮かべていた。
リリアナ「あなたの線路は、生きていますね。
今日の生徒たちの笑顔……まるでレールの灯りのようでした。」
悠真は息を呑み、そしてゆっくり頷いた。
夜の月光が、二人の間のレールに反射してきらめく。
その光はまるで、まだ見ぬ列車の“約束された発車”を告げる合図のようだった。




