3. 弁当部チーム登場:まさかの挑戦者
――会場がざわめいた。
最後の出場チーム、その名も――弁当部「駅弁聖団」。
彼女たちが押して登場したのは、他チームとは一線を画す車両だった。
金属ではなく、漆塗りの木製ボディ。
屋根には小さな蒸籠が並び、車体の側面には「食の旅を、心に」と書かれている。
そしてスタートラインに立った瞬間、ふわりと湯気と香りが漂った。
リリアナ「……これは、列車というより……昼食?」
悠真「いや、香りで観客の心を引きつけてる。心理的推進力だ。」
リリアナ「そんな理屈あるんですか。」
弁当部長・ミナが前に出て、胸を張る。
ミナ「私たちは、お弁当を“届けるために”走ります!
鉄道が人を運ぶなら――私たちは“想いと味”を運ぶんです!」
審査員「……運送目的、明確でよし。」
スタートの汽笛が鳴る。
彼女たちは息を合わせ、両手で車両を押す。
ギシ、ギシ、と音を立てながら進むたび、蓋が少し開いて――
湯気が舞い、香ばしい香りが観客席に広がる。
観客A「うわ、鶏めしの匂いだ……!」
観客B「腹減ってきた……がんばれ弁当列車ー!」
笑いと歓声が混じる中、彼女たちは地道に進み続ける。
他チームのような派手な加速も、魔導効果もない。
ただ、まっすぐ、丁寧に。
中盤、コース脇で小さな子どもが泣いているのを見つけ、
ミナが立ち止まった。
仲間「ミナ先輩、止まったらタイム落ちます!」
ミナ「いいの。届ける方が先。」
彼女は弁当箱を一つ差し出し、微笑む。
ミナ「おなか、すいたでしょ? これ、特製“笑顔の駅弁”だよ。」
子どもが涙を拭いて笑う。
その笑顔を見て、観客席から自然と拍手が起こった。
悠真(小声で)「止まったらタイム落ちるのに……」
リリアナ(微笑して)「でも、見てください。あの子の笑顔。」
弁当列車は再び動き出す。
その速度は遅くても――確かに“心”を運んでいた。
香りと笑顔を残しながら、彼女たちの列車はゆっくりとゴールへ向かう。




