4. 終盤:リリアナの回想(静かな一幕)
夕暮れ。
校庭には、夕陽を反射して淡く光る線路模型が伸びていた。
講義を終えた生徒たちが、笑いながらトロッコの部品を磨いている。
笛を吹く者はいない。
ただ、鉄と風の音だけが、穏やかに流れていた。
窓辺に立つリリアナは、静かにその光景を見つめる。
手には、悠真が黒板に書いた「鉄道=約束」の文字を写したノート。
リリアナ(心の声)
「祈りでも、奇跡でもない。
けれど――あの子たちがレールを繋ぐたび、心は確かに通じている。」
思えば、この世界の鉄道はずっと“神の領域”だった。
祈れば走り、捧げれば光る。
でも今、祈りの代わりに手が動き、信仰の代わりに笑顔がある。
――それは、まるで“希望支線”で見た光景の再現だった。
背後から足音。
振り返ると、悠真が片手に工具箱を持って立っていた。
作業着の袖には油が滲み、いつも通りの無骨な笑顔。
悠真「なあリリアナ。あの子たち……少しずつ、走り始めてるな。」
リリアナ「ええ。あなたの“約束”が、みんなの中に根づいているんですよ。」
悠真は少しだけ照れくさそうに笑う。
悠真「約束か……。俺はただ、まっすぐに線を引いてるだけなんだけどな。」
リリアナ「その線が、心を結ぶんです。祈りよりも、確かな力で。」
風が校舎を抜け、どこか遠くで汽笛が鳴った。
まるで――今日の授業を祝福するように。
リリアナはそっとノートを閉じる。
夕陽の中、校庭の線路模型がきらりと光り、
それがまるで未来へと続く“道標”のように見えた。
――この学園にも、また一つの“希望支線”が生まれようとしていた。




