6. 校長との対面:レールの心を継ぐ者
学園本館――。
古びた石の階段を上ると、そこはまるで鉄道博物館のようだった。
壁一面に、古代から続く列車の図面や、錆びた切符刻印機。
天井から吊るされたランプが、ゆっくりと灯りを揺らしている。
扉をノックすると、深く低い声が返ってきた。
「――入ってきたまえ。」
部屋の奥、巨大な窓の前に一人の老人が立っていた。
灰銀色の髭、整えられた軍服風の制服。
肩には古びた車掌帽――金糸で刺繍された紋章が光る。
彼こそ、この学園の創設者にして初代校長。
《グラン・ベルモント》。
かつて、神話の時代に“神鉄大路”を走破した、伝説の車掌である。
彼は背後の壁に掛けられた古いレール地図を指さしながら、静かに口を開いた。
グラン「線路は血脈。
列車は鼓動。
だが――心を繋ぐ者がいない。」
その声には、かすかな蒸気の音が混じっていた。
まるで、彼自身が今も列車の魂と共に生きているかのようだった。
悠真「……“心を繋ぐ者”、ですか。」
グラン「信仰は形を変え、技術は進歩した。
だが、人の心はどこかで置き去りにされてしまった。
レールの上を走るのは機械だけではいかん。
そこに、“想い”を乗せる者が必要なのだ。」
老人の瞳が、まっすぐに悠真を射抜く。
その深い琥珀色には、何百本もの線路が映り込んでいた。
グラン「君たちには、その“心”を教えてほしい。
技術でも、信仰でもなく――鉄道に宿る《魂》を。」
悠真は一瞬、息を呑む。
リリアナが隣でそっと頷いた。
リリアナ「……それなら、私たちの得意分野です。ね、講師殿?」
悠真「ああ。線路の上に“想い”を敷く――それなら、やってみせます。」
グランは穏やかに笑みを浮かべ、机の上の古い笛を手に取った。
金属製の笛。使い込まれたそれは、彼が現役時代に使っていたものだという。
グラン「この笛の音は、乗客の祈りとともにあった。
どうか、君たちの教室にも――その響きを忘れずに。」
窓の外で汽笛がひとつ鳴る。
夕陽が差し込み、部屋の床にレールの影が走った。
それはまるで、次の世代へと繋がる“道”を描くように――。




