表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『異世界鉄道ゆる建設記 ~鉄道マニア、線路で世界をつなぐ~』  作者: 南蛇井


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
30/94

第6話 車掌学校への招待 1. プロローグ ― 希望支線の余韻 ―

初夏の風が、線路の上をやさしく撫でていった。

かつて真新しい鉄の帯だった希望支線は、今では緑の蔦に包まれ、どこか生命の温もりを感じさせている。

列車が通らない昼下がりの線路は静かだったが、その静けさは“終わり”ではなく、“定着”の音だった。


悠真はスパナ片手に、緩んだボルトを締めていた。

油の匂いと草の香りが混ざり合い、汗ばむ額に陽光が反射する。

線路脇では、子どもたちが“トロッコまつり”の準備をしており、紙製の列車を引っ張って笑っている。


村の駅舎には新しい看板が掲げられていた。

《希望支線・ルミナ駅》――この村の誇り。

観光客が増え、駅前の屋台では「鉄道まんじゅう」「線路焼き」など妙な名物が売られている。


そんな穏やかな風景の中、リリアナは村役場で書類にペンを走らせていた。

手元にあるのは、“鉄道教義”の改訂版。かつて“神の道”とされていた鉄路を、“人の努力の象徴”として再解釈するための文書だ。


リリアナ「……“信仰から希望へ”か。言葉にするのは簡単じゃありませんね。」


小さくため息をつき、窓の外を見やる。

線路の上で作業している悠真の姿が見える。

その背に、風が吹き抜ける。


やがて、リリアナが静かに声をかけた。


「静かになりましたね。線路って、音が止まると急に寂しく感じます。」


悠真は工具を置き、額の汗を拭いながら笑った。


「でも、あの音はもう“消えた”んじゃない。今も誰かの中で響いてる。」


その言葉に、リリアナは一瞬だけ手を止めた。

風が窓を揺らし、遠くで子どもたちの笑い声が響く。


かつて“信仰の道”だった線路は、いまや“暮らしの道”となった。

人々の心に、確かに“鉄の音”が根を下ろし始めている。


――それが、すべての“次の物語”の始まりだった。


汽笛のような風の音が、静かな村に、やさしく鳴り響く。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ