【B. 出発準備:レールメイカーと車掌】
木造ホームに、夕陽が柔らかく差し込んでいた。
黄金色の光がレールを照らし、まるでその先に“希望”という名の未来が続いているようだった。
ルミナ号の車体が、静かに低く唸る。
鉄の心臓が、動き出す瞬間を待っている。
リリアナはプラットフォームに立ち、制服の袖を整える。
手にした車掌笛が微かに震えていた。
「……本当に、これを走らせるのですね。」
その声には、誇りと――少しの不安が混じっていた。
悠真は運転席の窓から顔を出し、いつもの笑みを浮かべる。
「うん。線路は人を繋ぐ道だ。信仰じゃなくても、きっと心を動かせる。」
リリアナは、そっと目を細めた。
「ふふ。あなたの言葉、もう村の経典になってますよ。」
悠真は額に手を当ててため息をつく。
「“公共インフラ書 第2章”とかやめて。マジで。」
そのやり取りに、周囲の村人たちがくすくすと笑う。
重い鉄の話が、いつの間にか“祭りの会話”みたいに温かい。
リリアナは深呼吸をし、笛を唇に当てた。
風の中で、制服の裾が静かに揺れる。
「……発車、用意。」
悠真はゆっくりとハンドルを握り、目の前のレールを見据える。
「進行。」
――笛の音が、空に溶けていった。
その瞬間、村中の鐘が鳴り響き、ルミナ号の車輪がゆっくりと動き出す。
レールの上に、確かに“未来”が走り始めた。




