第5話:希望支線、手作りで開通! ―テーマ:夢が走り出す瞬間、そして封印された神話の再起動―【A.開通前夜】
夕暮れ。
茜色の空の下、村外れのレールがかすかな輝きを帯びて伸びていた。
草の香りと鉄の匂いが混じるその場所で、悠真とリリアナ、そして村人たちが最後の確認をしている。
木で組んだ簡易ホームには、花飾りが揺れていた。
手作りの信号柱、手彫りの駅名板――そして、村人総出で磨き上げた魔導機関車“ルミナ号”。
その側面には、子どもたちが描いた“光の紋章”が淡く光っている。
悠真は工具を片手に、最後の調整を終えると深呼吸をした。
「よし、これで線形も問題なし。電力供給は……魔導変換炉、正常稼働。」
リリアナは書類の束を抱え、少し困ったように眉を寄せる。
「神官の許可印はまだですが……まあ、“神の許可”は鳴るでしょう。」
悠真は苦笑して肩をすくめた。
「物理的な意味で鳴られると困るんだけどな。」
周囲では、村人たちがわいわいと動き回っている。
柵を立てる者、旗を掲げる者、そして子どもたちは紙で作った車掌帽を被って――
「発車ー! 発車しまーす!」
と、声を合わせて遊んでいた。
その光景に、悠真はふっと笑みをこぼす。
誰も“鉄道”というものを知らなかった村で、
いま、その言葉が“夢”として根付こうとしている。
リリアナが懐から古びた帳面を取り出す。
「運行記録書」と記されたその表紙は、千年前の文献を写したものだ。
彼女は一歩前へ出て、夕陽を背に厳かに宣言した。
「この列車、“希望支線ルミナ号”。――運行を宣言します。」
その声に、風が応えるように線路を渡っていく。
草原の向こうまで、どこまでも続く“鉄の道”の上を。
まるで大地そのものが、新しい鼓動を刻み始めたかのように。




