【F. 締め:信仰でも、信頼でも】
夕暮れの空が茜色に染まり、草原を包み込む。
村の外れに延びる一本のレールが、光を受けて柔らかく輝いていた。
長さはたった百メートル。
それでも、千年の時を越えて“鉄の道”が再び大地に息づいた瞬間だった。
悠真はスパナを置き、肩の汗を拭う。
隣ではリリアナが帽子を抱え、静かにその光景を見つめている。
リリアナ「……たとえ彼らが誤解しても、あなたの道は“希望”になっていますね。」
悠真「信仰でも構わない。走れば、それでいい。」
子どもたちが、まだ温もりの残るレールに手を伸ばす。
笑顔がこぼれ、誰もがその“鉄の線”を不思議そうに撫でていた。
その様子を見ながら、リリアナがふと微笑む。
リリアナ「……あなたの言う“公共インフラ”、少しだけ分かった気がします。」
悠真「お、理解者が増えた。」
リリアナ「ええ。“神の道”とは違って、誰かを繋ぐ道なんですね。」
風が吹き抜け、レールがわずかに鳴った。
カーン、と澄んだ音が空へ吸い込まれていく。
まるでこの世界の“神々”が笑っているかのように。
リリアナ「――それで、次はどの村に“布教”しますか?」
悠真「布教言うな! あくまで工事!! 施工だから!!」
リリアナはクスッと笑い、帽子を軽く掲げる。
リリアナ「了解しました、“施工巡礼者”さん。」
悠真「ややこしい言葉を生み出すなってば!!」
二人の掛け合いに、子どもたちが笑い声を上げる。
その瞬間――
風の中で、“汽笛のような音”が微かに響いた。
悠真とリリアナが顔を見合わせる。
まるでどこか遠くで、古の列車が再び目を覚ましたかのようだった。
悠真「……聞こえたか?」
リリアナ「ええ。“始発の合図”ですね。」
レールの向こうに沈む夕陽が、金色の道を描く。
それは、信仰でも奇跡でもない。
ただ、人と人を繋ぐ“信頼の道”――希望支線、始発。
第4話・幕。




