【E. 小トラブルと救済】
花びらが舞う中、“発車祭”と称されたテスト走行が始まった。
悠真は慎重に魔導トロッコのレバーを操作し、ゆっくりと動かす。
悠真「うん、順調……魔導駆動も安定して――」
その瞬間、トロッコが突然加速した。
ガタンッ! と甲高い音を立て、機体が揺れる。
村人A「ひぃっ!? 神が怒ったぁぁぁ!」
村人B「逃げろ! 鉄の蛇が暴れ出した!!」
歓喜の祭が一転、阿鼻叫喚のパニックに。
子どもが泣き、村長が祈りを捧げ、リリアナが叫ぶ。
リリアナ「非常停止っ! 止めてください悠真さん!!」
しかし悠真は慌てず、魔導CADのパネルを操作した。
指先が光を走らせ、複雑な数式が宙に浮かぶ。
悠真「落ち着け! 安全装置が作動しただけだ!」
(魔導駆動の自動ブレーキがトリガー反応を起こしただけ――!)
ガシャァン!
金属音とともに、トロッコが滑らかに停止する。
砂煙の中で悠真が息を整えると、車体は見事に無傷だった。
悠真「……ふぅ。やっぱり、旧式でも安全設計は大事だな。」
沈黙――そして次の瞬間。
村人たち「……さ、さすが“奇跡の御業”……!」
村長「安全なる停止、まさに“鉄の加護”じゃ!!」
悠真「いや、奇跡じゃなくて非常ブレーキ!! 設計思想の勝利だから!!」
村人「セッケイシソウ……! 新たな聖句だ!!」
悠真「やめて記録すんなぁぁぁぁ!」
リリアナは額を押さえつつも、ふと真顔になる。
さっきまでの混乱の中、悠真の動きは一切乱れなかった。
リリアナ(心の声)
「……あの人、本当に“鉄の道”を命の道として見ている。」
「信仰でも夢想でもない。あれは――覚悟のある技術者の目。」
彼女はそっと帽子のつばを下げ、真剣な表情で呟いた。
リリアナ「……あなたの“奇跡”なら、見てみたいかもしれません。」
悠真は聞こえないふりをして、再びレールを見つめた。
夕陽の中、錆びたレールが黄金の光を返す。
それは、確かに“希望支線”の名にふさわしい輝きだった。




