【B. 村人の誤解①:杭打ち=祈りの儀式】
カン……カン……カン……。
朝の静けさに、木槌の澄んだ音が響く。
悠真は手際よく木杭を打ち込み、線路の位置を示していた。
陽光を受けて額の汗が光る――その姿を、村人たちは息を呑んで見つめる。
やがて、誰からともなくひざをついた。
村人B「見よ……“鉄の祈り打ち”だ。」
村人C「聖なる音が響いておる……トントン……トン……!」
全員が頭を垂れ、手を胸に当てて跪拝する。
まるで神の儀式でも始まったかのように、空気が厳かに変わっていく。
悠真は木槌を持ったまま硬直した。
悠真「……あの、ただの目印なんですけど。」
村人B「目印――すなわち、神々の足跡を記すものか……!」
悠真「解釈が暴走してる!?」
隣でリリアナが額を押さえる。
彼女の車掌帽の影から、ため息が漏れた。
リリアナ「ちがっ……! それは信仰じゃなくて、工事です!」
悠真「宗教土木って新ジャンル作らないで!」
だが、村人たちはもう止まらない。
子どもたちまでも真似して木片を持ち、トントンと地面を叩きながら祈り始めた。
悠真は空を仰ぎ、遠い目をする。
悠真(心の声)
「……この世界、宗教と土木の境界線が薄すぎる。」
リリアナはそんな彼を見て、小さく笑う。
その笑みには、呆れ半分、そして――なぜか少しの温かさがあった。




