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【F. 心の揺らぎ】
夜。
鉄道ギルド支部の書庫。
無数の古文書と路線図が眠る静寂の中、ランプの灯がゆらめいていた。
リリアナは分厚い帳簿を閉じ、深く息を吐く。
昼間のドタバタ――異端申請、図面騒動、信仰試験……。
すべてが、彼女にとって“理解不能”だった。
それでも――
リリアナ(心の声)
「……本気で線路を引こうとしている人なんて、もう何百年もいなかった。」
彼の描いた光の路線図を思い出す。
まるで空に祈りを刻むように、正確で、美しかった。
リリアナはそっと机の上の古文書を撫でる。
そこには、古の言葉が刻まれている。
《鉄の道を再び描く者、神の眠りを破る者なり》
リリアナ(小さく)
「“レールメイカー”……伝承の存在。」
窓の外、夜風が静かに吹き抜ける。
遠くで、森の方角に微かな光――まるで、眠っていたレールが再び脈動しているように見えた。
リリアナ(心の声)
「彼は異端者。でも……もしかしたら、“鉄の神々”が再び走るために呼んだのかも。」
ランプの炎が小さく揺れる。
その光が、彼女の瞳の奥に映る――ほんのわずかな“期待”の色。
リリアナ「……明日、もう一度、彼と話してみよう。」
彼女は机の上に、静かに車掌帽を置いた。
その仕草は、まるで“次の列車”を待つように。




