第60話 「ツキトのありえない提案」
「クラッチマンとウルウェーテルについて話そう」
ブラーは自分がおちょくられているにも関わらず、どこ吹く風でさっさと続けた。
マルコ少年のときみたいに、他人のことには敏感で、自分のことは気に留めないタイプなのだろう。
そういう人柄は信用できる。
逆に怒りっぽいけれど真っ直ぐなレモネットとは良いコンビで、やはりグランデル王の目は確かなようだ。
「まずクラッチマンだが、こいつはとにかくガタイがいい。身長は、ゾゾル――お前ほどじゃないが俺よりでかく、自慢の筋肉はハンマーすら弾くとの噂だ。
しゃくれたアゴと眼帯が特徴で、遠目にもすぐ分かる。
戦斧の使い手で、ひと薙ぎで十人を斬り殺すらしい」
ヴァルゴサといい、狂暴な性格の奴って見た目も怖いんだな。
今になって思えば、バスタークやブリガンディも優しい風貌とはいいがたかったし。
「――ただ、意外にも怖がりで、幽霊のたぐいは苦手だそうだ。冗談みたいな話だが、ヤツの部下から聞いたので間違いないだろう」
ふむふむ。
しかし実際、目の前に幽霊が現れて怖くないヤツなんかいるだろうか。
心霊関係が平気っていうヤツは、ただ心霊現象を信じていないだけで、本当にいたら誰だって飛び上がると思う。
特に日本に比べて、科学という拠り所が無いこの世界においては。
などと一人どうでもいいことを考える。
「……どれも使えねぇ情報だな」
いちいちちょっかいをかけるラインデッド。
しかし彼の言い方はどこかわざとらしい気がするな。
こちらの対応をテストしているような……。だから挑発に乗っちゃいけない。
ブラーも気にしていないようだった。
「それからウルウェーテル。こいつは隣国のアンプルシアから来た『はぐれ魔法使い』だ。陰気な顔の男で、山高帽とローブを身につけている。ヴァルゴサと違い、攻撃的な魔法を使える」
「俺は魔法に疎いんだが――」気になって尋ねた。「ヴァルゴサの目くらまし程度の魔法と、ウルウェーテルの攻撃的な魔法って、具体的にどう違うんだ?」
「実のところ俺も詳しくない。魔法は門外不出の技術だから、アンプルシア国民でないと情報は限られるのだ。アンプルシアの魔法使いですら、自分がどうやって魔法を使っているのか分からない奴らが多いという」
「『魔素』が関係しているのか?」
「もちろんそうだろう。ファンダリン将軍辺りなら詳しいだろうが、魔素は万物に影響するらしいからな」
魔法は「強化魔法」、「自然魔法」、「古代魔法」に大別できるとファンダリンに教わったが、ヴァルゴサやウルウェーテルの魔法がそれぞれどこに類されるのか、よく分からない。
ふーむ。インターネットみたいな世界的な情報共有システムが無いと、情報を隠すのも嘘を流すのも簡単なんだな。
覚えておこう。
「とにかくヴァルゴサの魔法は、本当にただの目くらましだ。目の前で光が弾けるとか、一瞬『パァン!』と音がするとか――そういったたぐいのな。それでも達人の腕前に、相手の隙を作る手段が加わることは脅威だ」
体を使わない派手な猫だましみたいなものか。
「それ以上の魔法を隠している可能性は?」
レモネットが尋ねる。
「おそらく無い。ヤツが格上であるバルゲアとの戦いで手を抜くことは考えられないだろう? しかしヴァルゴサが目くらましより上位の魔法を使わなかったことは、確認が取れている」
「その確認を取った相手が嘘をついている可能性は?」
「無いだろうな。体に聞いたのだから」
平然と恐ろしいことを言うな。
しかしレモネットも「そうか」なんて平然としているところを見ると、敵を拷問にかけるのはこの世界じゃ珍しくもないらしい。
「――対してウルウェーテルの魔法は、実際に痛いそうだ。衝撃波を発生させる球体をいくつも操るという。
魔法の発動には時間がかかる。一対一なら隙を突けるかもしれないが、ヤツは臆病らしく、常に誰かと行動しているのだ。寝ているときには見張りを五人もつけるらしい」
「ふーむふむ、まとめるとこんな感じですかねぇ」
そう言ってシューシュカが部屋にある黒い板に、チョークのような尖った石でカッカッ、と字を書いた。
ロストグラフとジャルバダールは自国語と供用語が半々らしく、おおむね相手に伝わるそうだ。
ちなみに俺にはほとんど日本語に見える。たまに英語も混ざっているが。
このカラクリ、いつか解明されるんだろうか。
『ヴァルゴサ……緑色の髪と傷だらけの体/目くらましの魔法と棒術を使う/強者におもねり弱者を虐げる/備考:バルゲアにトラウマ』
『クラッチマン……しゃくれアゴに眼帯の巨漢/頑丈な体が自慢の戦斧使い/怖がりで幽霊が苦手』
『ウルウェーテル……陰気な顔に山高帽とローブ/触れると爆発する球体の魔法/臆病で一人では戦わない』
シューシュカがまとめてくれた文面を読み、俺も改めて頭の中で整理する。
俺が何をすべきか、少しずつ筋道が見えてきた気がする。
「そのほか、『ブトランテラ』には二ケタ台のランゴ持ちが十人ほどいる。名前と戦い方を書き出そう」
ブラーは一人ひとりの戦士の情報を書いて見せた。
「このバツ印がついてるヤツはなんだ?」
ラインデッドの問いに、ブラーは平然と答えた。
「その三人は俺が倒した」
「……二ケタ台のランゴ持ちを三人もか?」
「そうだ」
「数字は憶えているか?」
「『96』、『92』、『76』だったな」
思わずラインデッドはのけぞった。
「俺より上かよ……本当か? 証拠は?」
「必要ない。事実だ」
きっぱりと言い放つブラーに、ラインデッドは唸った。
「……へえぇ。本当だとしたらやるじゃねぇの。馬鹿にしたのを撤回するぜ」
すると彼は、今度は俺の方を向く。
「だとすると少なくとも『76』以上の実力があるってことだ。ゾゾルの大将を二人がかりで、しかも不意討ちにしたアンタよりよっぽど強ぇんじゃねぇか、ツキトさん?」
今度は俺にターゲットを定めたらしい。
なるほど、俺がゾゾルを倒したときの方法も気に入らなかったのか。
だがブラーが俺より強いというのは実際にそうだろうから、何も言えない。
「うちに来なよ、ブラーさん。歓迎するぜぇ」
「俺は陛下に忠義を誓った身だ。ツキト団にいるのも、ジャルバダールを解放するための一時的な組織に過ぎないと聞いたからだ」
ラインデッドは飄々と「そんならしゃーねぇ」とぼやく。
ラインデッドのちゃちゃをいなし、ブラーは議題を進める。
「――ヤツらに不利があるとすれば、その多くがバラバラの傭兵でしかない、ということだ。統率の取れたティワカンヤの国王軍などとは比べるべくもない」
「だが逆に言えば、頭を失っても大きく覇気が下がりはしないということだ」
レフティが指摘する。
「覇気は下がらなくても戦力は下がる。そうなればアタシらが手を出さなくても、他の組織から狙われるだろう」
レモネットが答える。
「富豪どもが新たな連中を雇わなきゃあな」
「雇うとしても、ヴァルゴサ並の戦士を見つけるのには時間がかかるさ。長い猶予を与えなければ、弱体化させたまま崩壊させられる」
ラインデッドのぼやきに俺が返す。
「あやふやな言い回しだなぁ。弱体化させるにはヴァルゴサたちトップの三人を倒さなきゃならない。さらに組織自体を壊滅させるには千人近くの残党狩りをしなきゃならない。誰がやるんだそれを?」
「その話題はもうちょっと待とうじゃないか。ブラー、ブトランテラの他の戦力と、連中の活動について教えてほしい」
「分かった」
ヴァルゴサ、クラッチマン、ウルウェーテルのトップ三人。
そして二ケタ台のランゴ持ち十人ほど。
それ以外の兵士は、それほど精鋭というわけではないようだった。数合わせ的な印象が強い。
問題はヤツらの素行の方だった。
「――基本的には小さな組織にちょっかいをかけて、抵抗戦力を削ったり、その組織の家族を奴隷にしたり、強いヤツは配下に置いたりするのが主な活動だ。狙う先が少なくなると、王都を出てオアシスまで手を伸ばしたりする。
奴隷になるのは子供、配下になるのは大人の男がほとんどだ。奴隷になった子供はブトランテラが手を組んでいる組織の幹部に売ったり、見せしめで殺したりする。
もちろんランゴが高い連中から、彼らを玩具としてもてあそぶのだ」
この発言に、俺やレモネットだけじゃない、ラインデッドやレフティも押し黙ったのが印象的だった。
「こ……殺す? 年端も行かねぇ、何の罪もねぇ小っちゃい子供をですかい?」
イシカンが目を丸くすると、ブラーはうなずいた。
ゾゾルも大きなため息をつき、眉をひそめる。
「俺様たちも正義の味方じゃねぇ。殺しはたくさんやってきたが……あくまで殺していいと思ったヤツだけだ。子供なんざ金をもらってもやりたくねぇが、そうでない連中もいるらしい」
「……とんでもねぇヤツらだと思っちゃいましたが、想像以上の悪党ですねぇ」
悪党が悪党に震撼している。
あまり口を出してこなかったキヌエドも、これには顔を歪めた。
「……ヴァルゴサ以外の、クラッチマンやウルウェーテルもか?」
俺が尋ねると、ブラーは「もちろんだ」と答える。
「最も陰惨なのがウルウェーテルだ。ヤツは得意の魔法で子供を脅かすのが趣味らしい。トラウマになるまで何度も何度も爆発を味わわせて、自我を壊す。そうすると抵抗しなくなるから高く売れるらしい」
「……」
「クラッチマンはおぞましい変態野郎だ。子供の体に自分の名前を彫るのが趣味らしい。一生残る傷をな。子供がその傷を見るたび、自分のことを思い出すというのが無性に快感だそうだ。その分価値が落ちるから、わざと人気の無い子供を――」
――ガァン!
机を蹴ったのはラインデッドだった。
「……反吐が出るぜ」
その薄暗い顔は、さっきまでの軽薄な明るい男とは違い、彼の本当の性格を表しているようだった。
「まったく同感だ。コイツと同じ意見なのが気に入らないが」
先ほどと同じようにレフティが言うと、ラインデッドはハッとしてすぐに明るい顔を取り戻した。
「――……またまたレフティちゃんてば、本当につれないなァ」
この二人、案外いいコンビなのかもしれない。
だが、彼が机を蹴らなければ、蹴飛ばしていたのは俺だったろう。
ニュトは俺の隣でおとなしく座っている。
たまに俺の方をちらりと見る。
俺は、ニュトがブトランテラの連中に爆発魔法を当てられたり、その体に連中の名前を彫られるのを想像してしまった。
ふつふつと血液が沸く。
実際――そうなる可能性だって無くはないのだ。俺たちがヤツらに負けてしまえば、ニュトは捕虜になることも考えられる。
旅に連れて行く以上、そうした危険は覚悟してきた。
だからこそ、絶対に負けてはならない。
「――さてと。それではブラーさんから大体の情報をもらったところで、ゾゾルさんたちからの質問を受けたいと思いますが……いかがですか?」
シューシュカが会議を進行すると、まずゾゾルが俺に確認をとる。
「……ツキトさん。アンタがブトランテラを潰そうってのは本気なんで?」
「……そりゃ、じゃなきゃこんな会議を開いたりしないさ」
ふむ、と彼はひとつ唸って、「しかし」と続けた。
「連中は強い。想像以上のクソ野郎どもだったってのは分かったが、一方的に倒す手立てが無ぇでしょう。
ヴァルゴサ、クラッチマン、ウルウェーテルの三人を倒し、さらに千人の残党を殲滅する――ちょっと前の話に戻しますが、これが出来てりゃ、ナヨカトル率いる抵抗軍も、ナンバースリーの組織である『神火』もさっさと連中を片付けてるはずだ」
「それが質問でいいのか?」
「はい?」
俺が訊くと、ゾゾルは片眉を上げた。
「ヤツらと戦うっていう前提は、ゾゾルたちの組織として賛成だと受け取っていいんだな」
「……そりゃ状況次第だ。勝てるならもちろん潰したいですとも」
「まどろっこしいぜ」
鋭い声を飛ばしてきたのはラインデッドだ。金髪をぐしゃぐしゃと無造作に掻き上げ、ニヤリと唇を歪める。
「ツキトさん、そもそもアンタらにゃ荷が重いって話なんだろう? アンタらが成り上がるため、特にタチの悪いブトランテラを餌にして、俺たちの力を頼りに来た。――それがこの話し合いの全容だ。
そうならそうとさっさと言ってくれや。俺も暴れてぇからよ」
「――ゾゾル様の言う通り、こちらの戦力を維持したまま正面からぶつかって勝てる相手じゃない」
ラインデッドの啖呵を継いで、レフティが分析する。
「だが、我らの同輩の多くをブトランテラ討伐につぎ込めば勝機はゼロじゃない。もちろん多くの犠牲は出るだろうし、迂遠な戦略を強いられるだろうがな」
「しかし例え勝っても俺様たちに旨味が無けりゃ、それは本当の勝利じゃねぇですぜ、ツキトさん。ただの潰し合いだ。そうなりゃ得するのはさらに上の連中でさぁ。ティワカンヤの野郎とかね」
ゾゾルも乗り気じゃない。
当然だ。
「それとも何か?」
ラインデッドが俺を見て嘲笑った。
「ツキトのダンナ、アンタが敵さんをぶちのめしてくれるとでも言うのかい?」
「そうだ」
「ほら見ろ、結局俺たち頼みで……――ええっ?」
ラインデッドが驚愕に目を剥く。
「……い、いや……悪ぃ、よく聞こえなかった。……ツキトさん、アンタが直接ブトランテラの連中とやり合うってのか?」
「ああ、そうだ」
その場にいた皆が、驚きの目を向けた。
ゾゾルも、レフティも、イシカンやキヌエドも……さらには、レモネットとブラーも。
たった一人、すでに全幅の信頼を寄せてくれているニュトを除いて。
「もちろん、俺一人じゃ無理だ。皆の力を借りることになると思う」
「な……なんだよ、やっぱりな。大勢で戦う際に、アンタも前線に加わるってだけの話だろ?」
「クラッチマンとウルウェーテルは俺が独りでやろう」
そう言うと、今度こそラインデッドは「はあぁ?」と声を上げた。
馬鹿にされたと思ったのだろう。
「ツキトのダンナ……言っちゃ悪いが、服で隠そうと大して立派な体じゃねぇのは分かってるぜ。背も低いし、今だって隙だらけだ。魔法も詳しくないんだろう? そんなアンタが、腕っ節で昇り詰めてきた二人を倒すってのかい?」
「ああ。本当はヴァルゴサもやりたいところだが、そっちはブラーの仇だからな。手伝うだけでトドメは譲るよ」
すると今度はブラーの方がギョロリと俺を睨んだ。
「ツキト……ヴァルゴサを甘く見るな。ヤツは性格こそねじくれているが、戦いにおいては慎重で隙が無い。ラインデッドの言うとおり、俺にはお前が強者には見えん。求心力はあるみたいだが……戦いは俺たちに任せろ」
「ヴァルゴサはバスタークより強いのか?」
その名前を出すと、ブラーはピクリと動きを止めた。
「……バスターク将軍と? ツキト、特使に抱えあげられて日が浅いとはいえ、ロストグラフ国民なら六王兵を知らないわけじゃないだろう。バスターク将軍の強さは別格だ。傭兵ごときが敵う相手じゃない」
「そうだろうな。そのバスタークに、俺は勝ったことがある」
「なっ――!」
ブラーはギョロリとした目をさらに目一杯開いた。
レモネットも、他の全員もだ。さすが六王兵、他国にも名が売れている。
いや、そもそもバスタークが六王兵に重用されたのはジャルバダールとの戦が元だったか?
「非公式だけどな」
「う……嘘だろう?」
「国に戻ったらすぐにバレるような嘘をついてどうする」
まあ多少盛ってはいるが。正しくはアイツの方から負けってことにしただけだからな。
でもこういう場では強い発言が大事なのだ。プレゼン力である。
「い、いや、ちょっと待て」と、今度はレモネットが恐る恐る尋ねてくる。
「それが本当だとしたら、どうして今まで誰にも知られず……武術大会で名を聞くこともなかったんだ? 突然特使に重用された経緯といい、ツキト、お前って……」
「……だが、ツキトなら本当にやれるかもしれねぇな」
皆がざわつく中、どっしりと腕を組んで唸ったのはゾゾルだった。
「俺はどうやってツキトにやられたのか分からねぇ。だからラインデッドたちには不意討ちって伝わっちまったみてぇだが、もっと予測もつかねぇような力を持ってる気がする。ツキトよ、アンタがクラッチマンとウルウェーテルを倒せるってんなら俺は信じますぜ」
「都合の良いときだけ助け船を出しやがって」
苦笑しながら皮肉ってやる。
「だ、だけどよォ、ゾゾルの大将……本当にそんなことが……」
「私も信じられません。どうもこのツキトという男は、ゾゾル様をほだしたことも含めて詐欺師であるようにしか思えない」
ラインデッドとレフティはまだ懐疑的だ。
というより、バスターク云々の発言でより一層不信を買ってしまった感じか?
ついでに言えば、そのせいでブラーとレモネットまでが複雑な表情だ。まあロストグラフの兵士にとって六王兵は特別な存在だしな。
「バスターク」とか呼び捨てにしちゃったし。わざとだけど。
だったら、ここでとっておきの殺し文句だ。
「――いいか、この計画ならアンタらには何のデメリットも無い」
その発言に、ゾゾルたちは口をつぐむ。
実際のところ、利益、不利益の話は一番重要なのだ。
「失敗したところで俺一人が死ぬだけだし、そうなったらツキト団は……そうだな、シューシュカ団とでも名を変えて存続すればいい」
「ふにゃっ! 私ですかぁ?」
「ちゅきと、しんじゃダメ」
「安心してくれ、ニュト。だからこそ俺は死なない。
……どうだ? これで成功したら儲けものだし、俺を信じてくれるだろう? たしかにアンタらはその道の玄人だ、実力がモノを言う世界で生きてきた。説得させるには実力を示さなきゃいけないみたいだ。俺にやらせてみないか?」
場は静まり返っていた。
きっと頭が追い付いていないのだろう。色々と隠し事をしている俺のせいなのだから、しょうがないといえばしょうがない。
「――フ、決まりだな」
ゾゾルが頷いた。
「ツキト……アンタにこの戦いの幕開けを任せやしょう」
「大将!」
「ゾゾル様……!」
「お前らも文句は無ぇだろう。散々ツキトを口だけ野郎だと罵ったんだ。こいつぁそれに対するツキトからの返答だぜ。
攻め込むってんなら人数が多いに越したことはねぇんだ。それをこの男は、自分の仲間と俺様たちをひとつにまとめ上げるために、たった一人で無理をしようとしてる。
啖呵を切ったお前たちを、あの細腕ひとつで抑えようとしてるんだ。まったく大したタマだよ」
「詳しく解説してくれるなよ、恥ずかしい」
「とにかく」と言って、俺は全員のを見渡した。
「――俺が一人でクラッチマンとウルウェーテルを倒す。万が一捕まろうとも、ゾゾルたちに繋がる情報を漏らすことはないし、確実に逃げられると誓おう。睨み合いを続ける組織の一角に、俺たちが風穴を開けてやろうじゃないか」
――パチパチパチ!
嬉しそうに派手な拍手をしたのはシューシュカだった。
ニュトも小さく応援してくれる。
ジャルバダールを、引いては魔女を救うためというだけじゃない。
この世の中には生かしておいちゃいけない奴らがいる。
そんな連中がのうのうとのさばっている現状を――変えてやるのだ。




