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眠る少年トラン  作者: たみ
349/351

349 王子と王子


「――その拘束を解け」

静寂を切り裂く、冷徹な声。





今、この国で最も注目を集める。




次期国王と目される男。




「なっ……!?」

「っ!」

そこに立っていたのは、第一王子その人であった。




「兄上……!」

驚愕に目を見開くアレフ。




対照的に、先ほどまで息巻いていた貴族は目に見えて動揺し、滝のような汗を流し始めた。



「な、なぜ……こちらに……」



「……」

第一王子は答えず、ただ鋭い眼光で貴族を射抜く。



その威圧感だけで、貴族の心臓は跳ね上がり、思考は白く塗りつぶされた。



「誰の許可を得て、私の弟の……『友人』を拘束した?」

第一王子の視線が、一瞬だけトランに向けられる。




「こ、これは誤解です! 第一王子! 全くの誤解なのです……っ!」

必死に弁明を重ねる貴族。



それを見た第一王子は、短く言葉を返した。

「……。ああ、わかった」






その言葉を聞き、貴族の顔に安堵の色が浮かぶ。「理解された」と、そう信じ込んだのだ。






しかし、現実は残酷だった。


「連れて行け」

「はっ!」


王子の側近と騎士たちが即座に動き出す。



安堵の表情のまま、貴族は何が起きたのか理解できぬうちに、どこかへと連行されていった。

……。

静寂が戻る。




第一王子はゆっくりと、弟であるアレフを見つめた。

「……兄上」



歩み寄る第一王子。

彼は無骨な、しかし温かい手をアレフの頭へと置いた。

「強くなったな」

「えっ……?」

予想だにしない言葉に、アレフは言葉を失う。



.



一方、トランの周囲にいた騎士たちも、いつの間にかその場を離れ、拘束は解かれていた。

第一王子は、静かにトランへと向き直る。



「トランと言ったか……」

「はっ! 国王陛下!」

トランは最大級の敬礼を捧げる。本人は、文字通り命がけで必死だ。






「……王子だ」

「はっ! 王子! トランであります!」

慌てて言い直すトラン。



「弟のこと……感謝する」

第一王子は、周囲に悟られぬよう、わずかに頭を下げた。




「……」

それだけ言い残すと、第一王子は颯爽と去っていった。




その後ろ姿を、二人は眺める。





やがて、トランがアレフの方を向き、その頭をポンポンと叩いた。



「アレフ。……強くなったな」




「……はいっ!」









十三章終わり

こんばんは

いつもありがとうございます。


別タイトルで、「ベルグの夏休み」という

騎士学生時代の話しを書きました。

よければ見てみてください!

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