348 拘束と王子
勇者の封域に入ってから、数日が経過した。
中庭の井戸から、ボロボロになったトランが這い出てくる。
その後ろには、同じく満身創痍のアレフ。
しかし、何故かその瞳だけは美しく、力強い輝きを放っていた。
「……疲れたな」
「はい。もう、クタクタです」
「はは、全くだ」
アレフがふと思い出したように尋ねる。
「あの、ダルグさんは?」
「ああ、収納の中だ。さすがに王城であの姿は目立つからな」
「ははは、そうですね」
二人は、どこか穏やかな雰囲気を纏う。
「……うまい物、食いたいな」
「……」
その時
――グゥ〜。
静かな中庭に、王子から音が響く。
二人は顔を見合わせ、声を上げて笑った。
だが、その平穏は突如として破られる。
「――捕らえろ!」
鋭い号令とともに、武装した騎士団が二人を包囲した。
標的は…
「王子誘拐の罪で、貴様を拘束する」
突きつけられる刃。
トラン。
トランは抵抗せず、ただ沈黙する。
「えっ……!?」
あまりの急展開に、アレフがうろたえる。
そこへ、一人の上級貴族が悠然と姿を現した。
第一王子の陣営に属する男だ。
「アレフ王子、ご安心ください。曲者はたった今、捕らえました」
アレフは必死に声を上げる。
「違うのです! その者は私の使用人で、護衛で……!」
その言葉は遮られる。
「騙されていたのでしょう。あのような得体の知れない冒険者、王子を私利私欲のために利用していたに違いありません!」
王子の言葉を遮り、貴族は独善的に言い放つ。
……しかし、その言い分もあながち間違いではない…
アレフは、黙って拘束されるトランを見つめた。
……。
……。
何故
…
(何故、トランさんが…)
…
(何故)
…
アレフの手が、腰の剣に触れる。
視線を落とし、
アレフは叫ぶ
「その方は……トランさんは……!」
「……?」
「私の、大切な友人です!!」
…
一瞬の静寂。
…
次の瞬間、貴族は嘲笑を浮かべた。
「は? 冒険者が友人? ははは、ご冗談を」
その笑い声が響く中、アレフは静かに剣へ手をかけた。
――ザッ。
わずかな駆動音。
直後、ドサッという重苦しい音が重なった。
「な……っ!?」
貴族の顔が引きつる。
両脇に控えていた精鋭の護衛二人が、一歩も動けぬまま地に伏していた。
アレフが「何か」をしたのだ。
アレフは、剣を鞘に納めたままの状態で、二人の護衛を瞬時に無力化した。
そして――。
アレフは剣を引き抜き、貴族の鼻先に突きつける。
「すぐに拘束を解け。トランさんに……私の友人に、これ以上の無礼は許さん!」
こんばんは
ベルグとトランの話しを
別タイトルで作るか予定です。
よければ、見てみてください。




