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怨念魔術

 宿に帰ってシェリーを休ませ、俺とソフィアは冒険者ギルドにやってきていた。シェリーは大丈夫だと言っていたのだが、アペルはそれを聞き入れず、シェリーの世話をする為に宿に残った。


「プリメラさん、21層のフィールドボスに完敗してきました。グリムリーパー、あれ強過ぎじゃないですか?」


「ええ!?もう21層まで行ってしまっているんですか?この前のクリアしたダンジョンが確か13層で、迷宮主を倒したばかりじゃないですか。まだあれから2日しか経ってないですよ?」


 プリメラさんが驚きの声を上げた。確かにちょっとペースが速かったかもしれないが、他の冒険者達でまともに戦えないから仕方がなかった。


「13層から19層まで他の冒険者達が多くて、1日で終わらせちゃったんですよ」


「その日はモンスターと全く戦えなかった」


「それで今日は20層から始めたんですけど、守護者も居なくてそのまま21層に行ったら、グリムリーパーが出てきたんですよ」


 俺は昨日と今日の大体の流れを説明した。冒険者が沢山居てモンスターとの遭遇自体がままならないから、人の少なくなるであろう下層を目指したのだ。


「グリムリーパーは30層までの中で一番厄介ですからね。特に《幽体》を持っているのと《怨念魔術》ですね。一気にそこまで行ってしまわれたのでしたら対策もされてなかったのでは?」


「そうなんですよ。それで対策がないか聞きたかったんです。それとは別で21層以外で幽霊系のモンスターが出る所ってないですか?」


 やっぱり《怨念魔術》に対抗する為の手段があるみたいだ。それとアペルのトラウマを克服する為に21層に行ってグリムリーパーと再会するのも嫌だし、他の所で手頃な幽霊系のモンスターが出るか聞いてみた。そんな所があるのならアペルがトラウマを克服するまで出来ればそちらに行きたい。そんな考えもプリメラさんに伝えた。


「では、まず対策からですが、教会の強力なお守りを装備して頂ければ幽霊系のモンスターが使用してくる《怨念魔術》のうち、身動きが取れなくなる《パラライズカース》と幻覚を見せられる《幻惑》は防げます。この2つは目が合う事でその相手に使用できる魔法で、目を合わせなければ喰らう事はないのですが、やはり簡単なのはお守りを身に付ける事ですね」

 

 この国にも教会が存在するという。そこで購入出来るお守りが21層から出現してくる幽霊系のモンスターの使う《怨念魔術》の対策に必須らしいのだ。しかも俺がやられた魔法が《パラライズカース》だろう。一種の麻痺に近い異常状態だった。ソフィアは何も居ない所で戦っていたし、あの時は《幻惑》を喰らっていたのだろう。しかしその対策のお守りが結構なお値段らしく、その金銭を貯める為に20層までの間でレベル上げを兼ねて滞在する冒険者達が多いという事だった。


 それとシェリーがやられた時の事を伝えた。亀裂を入れたはずの頭蓋骨や手首が、シェリーが襲われた後その痕跡がなくなっていた。


「それは多分《ソウルドレイン》でしょうね。相手の生命力を奪って使用者のものにする魔法です」


 《ソウルドレイン》生命力を奪うだけなのに傷が回復していたのは相手が《霊体》だからだろうか。それにしても《怨念魔術》本当に厄介過ぎる。


「話を戻しますね。次は21層以外で幽霊系のモンスターが出る所という事ですが、近場にモンスターの数もそんなに出ない良い所があります。それがこちらのクエストです」


 プリメラさんがそう言ってクエストの依頼書が貼ってある所から持ってきたものを読んでみると、そこに記載されていたのは幽霊屋敷の原因の追究と解決だった。その幽霊屋敷は北側の区域に建つとある屋敷らしいのだが、今まで何人もの冒険者達がクエストを受けて挑戦したらしい。しかし、いくらモンスターを倒しても次の日には再びモンスターが出現するらしくキリがないのだとか。通常の幽霊屋敷ならモンスターの討伐で大体解決するらしいのだが、この屋敷はそれに当てはまらないらしく、それで解決以外に原因の追究も記載されるようになったのだという。


「でもこの幽霊屋敷、いつまで建っても解決しないので、今では屋敷の持ち主さんも諦め状態なんですよね」 


 でもその幽霊屋敷のおかげでアペルのトラウマ克服訓練が出来る。今までの冒険者達が解決出来なかったのだから、俺達が失敗しても文句は言われないだろう。解決が目的ではないので利用するようで申し訳ないが、俺達はそのクエストを受ける事にした。


「それでしたら御屋敷にはいつ頃向かわれます?」


「シェリーの具合にもよるけど、駄目だったら一応明日にでも行ってみて、場所の確認とどういう屋敷か見ておこうかな」


「では御屋敷までご案内しますので、明日また冒険者ギルドに来てください。あと大丈夫なはずですがそれまでには教会でお守りを購入する事をお勧めします」


 俺もそう思っていた所で、この後その協会へ足を運んでお守りを購入するつもりだ。最後にプリメラさんから教会のある場所を聞いて冒険者ギルドを出た。


 協会は西の区域にあるらしく、区域を上下に分ける形で中央を通るメインストリート沿いに建っているそうだ。西の区域に足を踏み入れるのは初めてで、南の区域は冒険者が多かったが、西の区域は老人や子供などの戦いとはかけ離れた人達が多く、冒険者っぽい人達は全然見当たらなかった。そんな区域の中で中央に位置する一番大きな建物、それが教会だった。

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