撤退
「しーちゃん!」
アペルは避難していたはずだが、シェリーがやられたのを見て飛び出してきてしまったみたいだ。倒れているシェリーに駆け寄っていく。
俺もようやく硬直が解けて動けるようになった。俺もシェリーの所へ向かいたいがグリムリーパーがそれを許してくれない。俺はグリムリーパーの攻撃を対処しつつ《スキル》のウィンドウを開いて《念話》を取得した。
『アペル聞こえる?シェリーの容態はどう!?』
『ええと、聞こえてるです?身体に傷とかはなくて、呼吸はしているです。多分気を失っているだけみたいです』
『分かった。グリムリーパーを抑えているうちにシェリーを連れて避難して!』
《怨念魔術》で精神の方に攻撃を受けて気絶してしまった感じか。呼吸はしているから命に別状はなさそうだけど、アペルも戦えなくてシェリーも戦えなくなったとすると、ここは一旦撤退した方が良いだろう。
「あれ?グリムリーパーが消えたと思ったらショウジと戦ってる」
ソフィアも正気に戻ったみたいだ。
『ソフィア聞こえる?今《念話》で話し掛けてる』
『うん、聞こえる』
『とりあえず詳しい話は後でする。シェリーがやられてアペルが避難させてるから、そこに合流してイジェクトストーンで撤退するよ。先に行ってイジェクトストーンを使っておいて。俺はグリムリーパーの隙を見つけて飛び込むから』
『分かった。シェリーは大丈夫?』
『多分気絶しているだけみたいだけど、念の為に《治癒》を使いたいから早く!』
視界の端でソフィアがアペル達の方へ駆けていくのが見えた。それを見届けつつグリムリーパーの大鎌を回避していく。暫くするとソフィアの掛けていった方向から白い光が放たれた。ソフィアがイジェクトストーンを使用したホワイトゲートから放たれる光なのだろう。
ソフィア達が逃げ切るまでの時間を稼ぎつつ、俺が逃げる時はどうしたら良いかを考える。一瞬でもいいからグリムリーパーの動きを止めないときっと逃げられないだろう。拘束系のスキルは《スチールワイヤー》くらいしか思い付かない。後は《グラビティフィールド》で移動の妨害くらいか。廃墟のフィールドは建物がある分《スチールワイヤー》が張り巡らせやすく、逃げるのだけであれば地形の利はこちらにある。
《探知》反応からソフィア達の反応が消えた。無事に撤退出来たみたいだ。それでは俺も逃げる事にしよう。まずは《グラビティフィールド》でグリムリーパーの機動力を落とし、《フレイムブレス》を放つ。グリムリーパーは前回と同じように大鎌を回転させ盾代わりにするが、《グラビティフィールド》の影響で動きにキレがなく、完全には防ぎきれていないみたいで徐々にダメージを与えていたが、その間に《スチールワイヤー》を廃墟の間に張り巡らせて逃げる準備を整えた。
《フレイムブレス》の切れ目に攻撃から逃走に切り替える。グリムリーパーが追ってこようとするが、そこには既に数多の極太な鋼線が張り巡らせてあった。それらに手間取っている間にグリムリーパーを全速力で置き去りにし、光を放っているホワイトゲートに飛び込んだ。ウィンドウに表示された項目を急いで選んでダンジョンの外に出る。
「シェリー!」
外に出た所で急いでシェリーに《治癒》を使い具合を確かめた。息はしている。目立った外傷もない。本当にただ気を失っているだけのようだった。
「ショウジ、シェリーの容態は?」
「うん、大丈夫そう。暫くしたら目を覚ますんじゃないかな。とりあえず今日は宿に帰ろう」
シェリーを背負い街に向かう。まだ昼を過ぎたくらいで帰るには早い時間帯だったが、シェリーがこの状態では継続するのは無理だろう。今日はもう終わりにして、シェリーの体調を確認してから再戦かな。
「こ、ここは……?」
「しーちゃん気が付いたです!?」
街に向かう途中でシェリーが目を覚ました。身体に異常はなかったが、《怨念魔術》の効果が全く分からなかったから、もしかしたらこのまま目を覚まさないのではとも思っていたのだが、どうやら杞憂で終わってくれたみたいだ。本当に無事で良かった。
「グリムリーパーに手酷くやられて撤退したんだよ」
「そうでしたか。ご迷惑をおかけして申し訳ございませんでした」
「いや、あれは仕方ないよ。本当なら俺達が食い止めないといけなかったんだけど、俺もソフィアも見事にやられてたしね。シェリー、ごめん」
「それなら一番はあたしが戦えなかったのがいけなかったです。次は戦えるようにどうにかしてお化けを克服したいです!」
アペルも戦えなかった事を後悔してトラウマの克服すると宣言をした。
「それならグリムリーパーにリベンジする前にアペルのトラウマを克服しようか」
グリムリーパー戦にアペルも加わってくれるなら心強い。今回の失態を反省して、次はきっちりと対策を立てた上でリベンジだ。それにグリムリーパーの使う《怨念魔術》がどういった魔法なのかを調べないといけない。宿に帰ってシェリーを休ませて、俺は余った時間で冒険者ギルドに行こうと思ったのだった。




