盾の使い方
サンドワームとの戦闘に少し時間を掛けたが、無事にソフィアが倒してシェリー達の場所まで戻った後、比較的時間を掛けずにホワイトゲートを見つける事ができた。
ホワイトゲートへ入り2層へ転送されてすぐに周囲を確認する。そこは岩に囲まれた洞窟みたいで、9層と似たような感じで地面に水溜りがあり、湿度も高くじめっとした空気が肌に纏わりついた。一瞬間違って9層に来たのかと思ったが、敵と遭遇した時にはその疑念は去っていった。2層の敵はフロートジェリーフィッシュ。所謂海月がフロートオクトパスと同じように空中を漂っていた。
フロートジェリーフィッシュも基本アペルが前衛を担い、ソフィアとシェリーが詠唱して《アースシールド》を使う。フロートジェリーフィッシュはその長い触手を伸ばして攻撃してきた。海月なので触手に毒を持っていそうだったが、触手がアペルに届く前に2人の《アースシールド》によって挟み込まれて潰れていった。2つを合わせる事で防御魔法から攻撃魔法に転じてしまった。その発想は無かった。俺もまだまだ《アースシールド》さんの真価を発揮できていなかったみたいだ。
それからはフロートジェリーフィシュは2人の《アースシールド》によって倒されていき、俺はシェリーの護衛しながらそこら中に《採掘》を使用し、鉱物や宝石類が出ないか頑張っていた。
そんな事をしながら進んでいると、最初は水溜まりの光の反射かと思ったがそれは間違いで、キラキラ光を反射して輝くゼリー系のモンスターが奥の方に佇んでいた。冒険者の心得(初級編)に載っていたジェムスライムではないかと思い《鑑定》を使い確認する。結果ジェムスライムで間違いなかった。周りに人は見当たらず俺達のパーティーしか居そうになかったが、人気があるモンスターと記載されていたし早く倒さねば。
「ソフィア、あのモンスター弱いし美味しいから速攻で倒して」
ソフィアに指示を出して倒しに向かってもらう。ジェムスライムは逃げる事も避けるような素振りもなく、間合いを詰めたソフィアによって倒されていった。
「何あれ弱過ぎ」
戻ってきたソフィアが呟きを漏らした。俺はジェムスライムがどういうモンスターか説明する。
「あれはジェムスライムと言って、倒した時に結構宝石類を手に入れられるらしいんだ。ソフィア何か手に入れてない?」
「ん、サファイアっていうのがあった」
ソフィアが確認すると運良く宝石をゲットしたようだ。俺のいた世界だとサファイアはルビーとかエメラルドとかと同じくらいの物として扱われる事が多かったと思うのだが、この世界ではどうなんだろう。もしサファイアも魔力の増幅量が多いのであれば、この前聞いた宝剣というのを作ってみるのも良いかもしれない。俺のスキルで作れればだが。
その後もフロートジェリーフィシュと戦いつつ進んでいく。正直フロートジェリーフィシュは触手の毒さえ喰らわなければ、1層のデザートウルフより弱い印象を受けた。単純に階層が増えれば敵が強くなる訳ではなく、トリスティアの森のダンジョンでもそうだったように、地形毎に1周したら敵が強くなるみたいだ。となると1層から進んでいって、同じ地形のフィールドが出てきた時が敵の強さの段階が上がる時だ。大丈夫だと思うが気を付けておこう。
2層も終わりが見えた。道を曲がったらすぐの所にホワイトゲートがあり、時間的にも丁度お腹が空いてきたので休憩を取る事にした。シェリーがそれぞれに御飯を分配していく。今日の昼御飯はパンに野菜や肉を挟んだサンドイッチ系の食べ物だった。シェリーが昨日のうちに作り《道具》の中に収納していたらしい。日持ちのしない食べ物を入れた事はなかったが、《道具》に収納中は腐ったり劣化が起きないらしい。
なんて便利な能力だ。それならば美味しいものを見つけたら沢山買っておいて《道具》に収納しておけば、食べたくなった時に取り出して食べる事が出来る。これはいい事を聞いた。今までダンジョン攻略に夢中で細かい所は気にしてなかった。
シェリーお手製サンドイッチを平らげて満足した所で次の階層をどうするか相談する。1層ずつ攻略しても良いがシェリー次第だ。結構レベルも上がったみたいだし、アペルの時みたいに階層を飛ばしても問題ない気がする。
「私は問題ありません。ショウジ様の意向に従います」
あーはい、そういわれると思った。なら聞くなよと言わないでくれ、念の為の確認というやつだ。そしたらまた5層に行ってフライングフィッシュで楽しくレベル上げをしよう。フライングフィッシュだったら同時に3体出てきてたし、今みたいに1体ずつよりレベルも早く上がるに違いない。
休憩を終えてホワイトゲートへ入り、転送先に5層を選択して浜辺へと転送される。浜辺を歩き始めると、早速海の方から近付いてくる反応が《探知》に引っかかる。空振りする事はもうないと思うのだが、した時の為に《結界》をシェリーの周りに展開させてフライングフィッシュを待ち受ける。海から飛び出て一直線に突撃してくるフライングフィッシュを横に回避しながらツインエッジを振るう。腕は落ちてないみたいでフライングフィッシュは真っ二つに裂かれて灰になっていった。ソフィアも同じようにして倒していたが、アペルは盾を正面に構えて待ち受けていた。前回は斜めにして砂中に埋めて対処していたが、今回は盾を垂直に構えている。しかし突撃してきたフライングフィッシュはアペルの新しい黒蟹の盾の防御力の前に屈し、貫く事無く衝突の衝撃が自分自身に帰ってきてしまい、アペルが攻撃する必要なく灰になっていってしまっていた。




