デスニードルスコーピオン
俺は現れたデスニードルスコーピオンに向かって駆け出す。前回は《鑑定》する為にある程度近づいたが、間近で見ると名前の由来が良く分かる特徴があった。鋏の部分はそれとは別に外側に貫く為の巨大な杭のようなものがあり、尻尾の先端も同じようになっていた。
デスニードルスコーピオンを観察しているとソフィアとアペルが合流してきた。アペルには尻尾の攻撃に注意を促し前衛をやってもらう。ただしアペルには回避と防御に専念してもらい、攻撃はソフィアの魔法と俺が背後から斬りまくる。そして出来ればまず先に尻尾を斬り落としたい。そうすればアペルもより戦いやすくなるだろう。
2人に作戦を伝えデスニードルスコーピオンを見ると、姿勢を低くし構えるように尻尾の先端をこちらに向けるのが見えた。その瞬間デスニードルスコーピオンの尻尾の先端が、まるで弾丸を放ったかのように射出される。アペルはその時、他の戦っている獣人達に目を配っていて気付いていない。ソフィアは気付いてはいるようだが、手には魔法の為に杖を所持していて対処が出来なく、また飛んでくる尻尾の先の速度も速く魔法も間に合わないだろう。
俺は飛来する尻尾の先端に向かって踏み込み《スラッシュ》を放つ。飛んでくる物を斬るのはフライングフィッシュで慣れていた為、なんとか斬る事が出来た。縦に一閃された尻尾の先端は真っ二つに裂け、左右に広がり地面の砂の中に突き刺さった。
「アペル、余所見は禁物だよ。ソフィアも今の攻撃は気を付けてね」
「ごめんなさいです」
「大丈夫。あれくらいなら避けれる」
俺は2人に注意を促してスコーピオンの群れに突っ込む。同時にソフィアが《ホワイドブリザード》と《ウィンドストーム》の氷結粉々コンボでスコーピオンを蹴散らし、デススコーピオンまでの道を切り開いてくれた。途中でアペルが追い付いてきて、一緒にデスニードルスコーピオンの下まで突き進む。
再びこちらに向けてデスニードルスコーピオンが尻尾の先端を飛ばしてきた。今度はアペルが俺の前に躍り出て盾を翳し、フライングフィッシュの時と同じようにそれを防ぐ。デスニードルスコーピオンを確認すると、尻尾の先端は既に新しいのが生え始めていた。連射は出来ないがかなりの頻度では撃ってきそうだ。アペルが盾を前に翳したまま突撃する。
「シールドバッシュ!!」
アペルの盾がデスニードルスコーピオンの頭を襲うが、鋏によってそれを阻まれてしまう。だが、それが狙いだ。アペルはデスニードルスコーピオンの視界を遮る事が目的だったのだ。俺はそれに合わせてデスニードルスコーピオンの背後へ回り込み、尻尾の付け根に《クロスインパクト》を叩き込んだ。斬り刻まれた尻尾が砂上に落ち、それと同時に怒り狂ったデスニードルスコーピオンが振り返りざまに鋏で薙ぎ払ってくる。俺はそれをバックステップで回避しカウンターを決めようとするが、振るったツインエッジはデスニードルスコーピオンの鋏を浅く切り裂くだけに終わった。
敵の狙いは完全に俺に移っていた。荒れ狂ったデスニードルスコーピオンがひたすら俺を攻撃をしてくるが、それを避け続け攻撃のタイミングを伺う。ソフィアが《ホワイトブリザード》で周りのスコーピオンを処理してくれているので目の前の戦いだけに集中出来た。そして反対側に居るアペルが《シャープスラッシュ》を放ち、それを喰らって怯んだ所に《クロスインパクト》を叩き込む。デスニードルスコーピオンの鋏を両方斬り落とし顔面に向かって《フレイムブレス》を放つ。鋏で防御できなくなった所に弱点の火属性の魔法にやられ、デスニードルスコーピオンは灰になっていった。
俺達がデスニードルスコーピオンを倒した事によって、後ろの獣人達から雄叫びのような歓声が聞こえてきた。一気に士気も向上したようで戦線が徐々にだが上がっていっている。俺達も再び左右後方に分かれてスコーピオンの群れを一掃していくが、デスニードルスコーピオンは1体だけではなく何体か確認されていた筈でまだ安心は出来ない。
スコーピオンの群れは途切れることなく襲ってくる。どのくらい時間が経ったか分からないが、既に日は沈み周囲は暗くなっていた。今の所致命的なミスはないが、疲労も溜まってきている今は何時ミスが起きてもおかしくない。このまま戦っていくのであれば、どこかのタイミングで休息を取る必要があるだろう。
今スコーピオンの群れを横断してアペルの所へ行き、休憩のローテーションをしようと提案する。まずはアペルが休憩を取り、その後にソフィア、俺という順番で休憩をとる事にした。アペルには後方に下がるのと同時にお父さんにも休憩のローテーションを組んだ方がいいと進言してもらおう。ただ、獣人側も人数が少ない為ローテーションは厳しいかもしれない。避難所に居たガベル達が加わってくれれば今の戦線に居る人達と入れ替わりですぐ戦えそうなのだが。
流石に殲滅効率を上げる為に範囲魔法を使いまくって魔力回復剤をたくさん飲んでも、ローテーションの間中ずっと続けるのは難しいだろう。アペルに少しの間敵を任せ打開策がないか考える。あんまりネタバレでやりたくなかったが、《スキル》のウィンドウを開き《鑑定》を使用して打開策になりそうなスキルを探す。そこで俺は見つけてしまった。それは打開策になると同時に、俺が前から欲しかった能力を持っているスキルだった。




