スコーピオンの大群
村の南側へ辿り着くと地平線まで埋め尽くすような数のスコーピオンの行列が視界に入ってきた。村の外に戦線があるがそれも少しずつ下がっているように見える。獣人達の戦力では次々と奥から来るスコーピオンの処理が間に合わず、戦線の所の獣人達を囲い込むかのように少しずつスコーピオンの大群が左右に広がっていっている。このままでは確実に包囲網が完成していってやられてしまうだろう。
「ソフィア、アペル。このままじゃ不味いから先に行ってる!」
俺はソフィアとアペルを置き去りにして速度を上げ村の中を駆け抜ける。最大速度で走り抜けたら瞬く間に戦線に合流してしまった。そこではスコーピオンの大群相手に、決して多いとは言えない数の獣人達が武器を振るい必死に戦っていた。
その中でも動きの良い人は1割くらいで、他の人達の中でも戦った事が全くないだろうと思える動きの獣人もほんの一握りくらい居た。村の為に決起して戦いに挑んだのだろうが、スコーピオンの攻撃をなんとか防ぐのでやっとみたいだ。だがその中の1人が対処にミスして尻尾の攻撃が掠り倒れ伏した。
他の人達は自分の戦いに精一杯でフォローに入れないのを見て、俺は毒を喰らった獣人を助けるべく疾走する。スコーピオンの尻尾が毒で倒れた獣人の背中目掛けて振り下ろされた。
くそ、間に合え!全力で駆け抜けその勢いのままスコーピオンの尻尾を斬り払う。先端を斬り落とされた尻尾は獣人の背中に刺さる事なく砂の地面に落ち、再度振られたツインエッジによって尻尾だけでなく身体もバラバラに斬り刻まれた。
毒状態の獣人に《解毒》と《治癒》を使用し、左右に広がっていっているスコーピオンの群れの片方に《エクスプロージョン》を叩き込む。スコーピオンを中心に爆発が起き、轟音とともに砂煙が舞った。スコーピオン自体はそこまで強くなさそうだった。毒にだけ注意すればなんとかなるかもしれない。
倒れている獣人を抱えて一回後方へ下がる。そこにソフィアとアペルが追いついてきた。
「ショウジその人は?」
「毒にやられてたから助けた。毒も傷も癒しておいたよ」
「隣の家のイザベラお姉ちゃんです。戦った事もないのになんでこんな所に」
「……ん、刺されたはずなのになんともない?あら、そこにいるのはアペルちゃんじゃない」
2人に説明しているとイザベラさんが目を覚ました。アペルは何故イザベラさんが戦っていたのか話を聞くが、やはり村を守る為に立ち上がったみたいだ。またこんな事が起きるから非難したほうが良いと伝えたが、彼女はこのまま戦場に残り戦う事を選んだ。
現状の戦い方では死人が出る可能性が高い。動きの良い人にイザベラさんみたいな戦い慣れていない人のフォローに入ってもらわないと駄目だ。その辺りは村長が指示を出している筈、アペルに先ほどの事と2~3人でチームを組んで戦うようにお父さんに伝えて欲しいとお願いし、追加でデスニードルスコーピオンの相手は俺達がするという事も伝えてもらう。俺が見た限りでは獣人の中の動きの良い人でも俺たちには敵わないと思う。そして俺とソフィアはその編成を整えるまでの時間稼ぎをしないといけない。
「ソフィアは獣人の人達が編成を組み直すまで俺と一緒に戦線の維持ね。アペルはお父さんに伝えたら合流で」
「分かった」
「分かりましたです」
アペルが父親の所を目指し、ソフィアが杖から短剣に持ち替える。先ほど《エクスプロージョン》で削った側をソフィアに任せ、俺は反対側に広がっていっているスコーピオンの群れを押し戻すべく突っ込んでいく。
「エクスプロージョン!!」
再びスコーピオンの群れに《エクスプロージョン》を叩き込み、倒し損ねたスコーピオンを斬り伏せて進んでいく。アペルが父親に話をつけたのか、俺とソフィアが2人でスコーピオンの群れと戦っている間に、獣人達が少人数ずつ後ろに下がっていき、編成を組んだチームが戦線に復帰してきた。それに加えてアペルも合流してきて更に戦力アップだ。だが魔物の群れがどのくらいの数か分からないが、最悪休憩の為のローテーションも必要になるかもしれない。
俺達が戦いに加わってから戦線は維持できるようになった。だがまだ問題は残っていて上位種のデスニードルスコーピオンの強さによっては戦線が崩壊しかねない。そしてその問題のデスニードルスコーピオンが近づいてきていて、スコーピオンの群れの中でもサイズが格段に大きく目立っていた。
アペルに右サイドを任せ、俺はデスニードルスコーピオンの強さを確認しに突き進む。デスニードルスコーピオンを《鑑定》すると、スキルはなかったが代わりにステータスの能力値が高く、ただのスコーピオンとは比較にならない程強いだろう。このまま戦ってより詳しく分析したい所だが、単独で前に出た為、時間を掛けるとスコーピオンに囲まれる。それは不味いので戦線の位置まで下がる。
「デスニードルスコーピオンはやっぱり強そうだった。あいつが出てきたら一気に叩く方向で。じゃないと戦線が維持出来ないかも」
デスニードルスコーピオンの強さをアペルに伝える。そして俺は右から左へスコーピオンの群れを横から強襲しつつ横断して、左側で戦っているソフィアに同じ事を伝えた。そして左側を殲滅役を俺とチェンジして、ソフィアには範囲魔法でスコーピオンの群れを薙ぎ払う役をお願いする。
ソフィアは頷き戦線の後方へと下がっていく。そして覚えたての《ホワイトブリザード》を早速使ったみたいで、砂漠なのにスコーピオンの群れの一部が猛吹雪によって真っ白になる。吹雪が収まった後に残っていたのは氷付けにされたスコーピオンの群れだった。そこに追撃で《ウィンドストーム》が放たれ、氷付けのスコーピオン達が粉々にされていく。
ソフィアがどんどん範囲魔法で殲滅してくれているが、スコーピオンの群れは一向に減る気配がない。減ってはいる筈なのだが奥からどんどん湧いて出てくる。そして奥の方に居た筈のデスニードルスコーピオンが目の前まで迫ってきていた。




