ヘスペル王国へ
「ショウジ様、そろそろお時間ですので起きて下さい」
「もう朝かぁ。シェリー、おはよう」
翌日早朝、日の出前にシェリーが起こしてくれた。目覚ましとかもないのによく起きれるなと思いつつ、ベッドから何とか抜け出しテーブルの椅子に座る。そこにシェリーがお茶を用意してくれるので、お茶を飲みつつ意識の覚醒を待つ。
ソフィアはまだ眠っているらしく、シェリーが起こすがまったく起きなくて時間が過ぎていく。まさかここまでソフィアが起きれないとは思っていなかった。毎朝起きた時眠そうにしていたが低血圧なのだろう。流石にそろそろ宿を出ないと日が昇ってきてしまうので、仕方なくシェリーに着替えさせてもらってソフィアを背負って行く事にした。
宿を出てソフィアを背負ったまま街中を歩いていく。朝早かったのが幸いして人に見られたりとかはなかったが、東門にいたタランドーさんにはばっちり見られた。
「タランドーさん、おはようございます」
「おう、朝から仲良いねぇと思ったらエルフのお嬢さんは寝てるのか」
「朝が苦手みたいで起きれなかったんですよ」
「そうか、それなら馬車の中で寝かせておいてあげな。すぐ出発するぞ」
お言葉に甘えて馬車の中に入りソフィアを寝かせようとすると、シェリーが布を取り出して馬車の中に敷いてくれたので、その上にソフィアを寝かせた。その後軽くシェリー達をタランドーさんに紹介して出発する。
シェリーとソフィアが馬車の中、俺とタランドーさんが御者台に座り、ヘスペル王国に続く街道を進んでいく。出発してからずっと周りは草木のみで、建物など何もない風景が続いている。そして思っていたより馬車が揺れる。数時間も経つと悪い予想が当たり、気持ち悪くなってきた。
その頃にはソフィアが起きていて、御者台の見張りを交代してもらった。馬車の中から外に顔を出し何時リバースしても良いようにするが、シェリーがずっと背中をさすってくれたので何とか堪えられている。タランドーさんは慣れたら酔わなくなると言ってくれたが、これでは護衛の依頼を全う出来ていない。
少し早めの昼休憩となり、ようやく一時的にだが揺れる馬車から解放された俺は草原の上に横になっていた。みんなは昼御飯を食べているが、俺は食べたら完全にリバースするだろうから辞退した。俺が辞退するとシェリーも辞退すると言い出したが、そこはご主人様の命令という事でちゃんと食べてもらった。
昼休憩も終わる頃、ようやく気分も落ち着き少しだけ胃袋に食べ物を入れ、また馬車に乗って走り出す。暫くして乗り物酔いがやって来るが、前回よりは辛くなくシェリーと会話して時間を過ごす。
そこで前にお願いしていた調べ事、《鑑定》の妨害か誤認させるようなスキルがないか探してもらっていた。結果は《鑑定》を遮断する指輪っていうのが存在しているらしい。正確には《結界》のスキルを持った指輪だ。装備者を《結界》で護り、一定の攻撃までは無効化するらしく、その効果で《鑑定》も遮断しているみたいだ。ただし物凄く高価らしい。スキル付きの防具を買ったがそれもかなりの値段だったし、指輪で更にスキルの効果が凄いのだからもっとするだろう。
空に浮かぶオレンジ色の太陽が完全に沈みきる少し前の時間帯、その日の移動をやめて野宿の準備に取り掛かる。日が昇っている時間帯は移動の時間にあて、夜はゆっくり休む。だが夜の見張りは必要なので、シェリーの話を聞いた後は、気持ちも悪かったし仮眠を取っていた。晩御飯を食べて食休みをした後、皆は馬車の中で睡眠を取り始めた。《スキル》のウィンドウを開いて眺めつつ、一人でどうやって時間を潰そうかと思っていると、馬車からシェリーが戻ってきた。
「シェリーは寝なくていいの?」
「ショウジ様を放って先に寝るなんてありえません。ソフィアさんがちゃんと起きれるように寝かしつけていました」
確かに今日の朝起きれなかったソフィアが起きてくれないと俺が寝れなくなってしまう。グッジョブだシェリー。その日の夜はシェリーのおかげで眠気に襲われても何とか起きて朝を迎える事が出来た。
「ショウジ君、お疲れ様。夜は長かっただろう、馬車でゆっくり休むといい」
「ほんと眠くてきつかったです。シェリーが居なかったら寝てしまってた所ですよ」
タランドーさんが起きてきて挨拶をする。そしてシェリーはソフィアを起こしに向かい、俺も後を追った。ソフィアは布に包まってて声を掛けてもなかなか起きなかったが、朝食の準備が出来ると起きてくれた。深夜にシェリーが夜食を用意してくれたので、特に空腹感はなく圧倒的に睡魔の方が勝っていたので、ソフィアに後を任せて眠りに就いた。
目が覚めると丁度昼間の休憩時で皆で昼御飯を食べゆっくり寛ぐ。ソフィアはすっかりタランドーさんに打ち解けたみたいで良く喋っていた。昼休憩も終わり再び馬車での移動が始まった。また夜の見張りは俺がやる事にして今のうちにもっと睡眠を取るべく昼寝をする。
日が昇っているうちは完全にソフィアに任せて、日が沈んでいるときは交代して俺が見張る。そんな事を繰り返しているうちにいつの間にかヘスペル王国に入国していた。途中で村や国境の検問もあったりしたそうだが俺は寝ていて気付かなかった。そして今目の前には目的地であるヘスペル王国の首都、ヘルグミルの街が広がっていた。




