色つきウルフ
翌朝、朝食も取り終わりダンジョンに行く前に準備と確認をしていると、《道具》に冒険者の心得を見つけて、シェリーに渡すのを忘れていたのに気が付いた。
「シェリー、渡したい物があるんだ」
《道具》から冒険者の心得3冊セットを取り出して渡す。シェリーは文字の読み書きは出来るらしく、その本を使ってソフィアに文字の読み書きの勉強を教えてくれないかお願いする。シェリーはこれを快諾してくれて、夜の空いた時間に少しずつだが勉強する事になった。
シェリーからお昼ご飯のパンを受け取り、その時に新しい防具に気付いていたシェリーがお似合いですよと褒めてくれた。いつでも人に褒められるというのは嬉しいもので、新しい装備を早く試したくなってくる。それに今日はまだ見ぬ守護者との戦いになることはほぼ間違いないだろう。誰も知らないダンジョンなのだから討伐されていることはないと考えて良い。ソフィアもやる気に満ちていて早く出発しようと急かしてくる。俺も同じ気持ちだったので早々に支度を終え、ソフィアと宿を出てダンジョンへ向かった。
トリスティアの森のダンジョンに着き、ブラックゲートを通って10層へ転送されると、そこは草原が広がっていた。運が良い。草原なら周囲に何もないし魔法も思いっきり使える。
手始めにモンスターを探してそちらに向かう。今回はサーベルウルフ2体に加えてアースウルフが1体混ざっていた。《鑑定》の結果で《土魔術》のレベル1を所持しるのも分かった。
ここに来てモンスターが魔法を使ってくるようになったかぁ。守護者とかも使ってくるかもしれないので、ここでアースウルフ相手に練習しておこう。
アースウルフは近付いては来ず、サーベルウルフに斬り込もうとすると《アースシールド》を使って援護してきた。攻撃系じゃないだけマシだがそれでも《アースシールド》が邪魔してきて正直面倒くさい。だがこちらは2人いるので、俺が相手しているサーベルウルフを援護している間に、ソフィアの方は戦闘が終了している。サーベルウルフを片付けたソフィアはアースウルフのほうへと駆け出した。
ソフィアがアースウルフを抑えている間に俺の方のサーベルウルフを処理する。そのままソフィアに合流しようとしたがソフィアがそれを制止する。一人で戦ってみたいらしい。意欲が高いというか、相変わらずのバトルジャンキーっぷりである。
ソフィアとアースウルフの戦いを眺めながら自分が戦う時のシュミレートをしてみる。そういえば《アースシールド》は《採掘》で簡単に破壊できるんだった。ソフィアとの戦闘を見ている分には、アースウルフの動きはサーベルウルフより速いが、対応できない速度ではない。うん、問題なく倒せる。
ソフィアがアースウルフを倒したが、悔しそうな顔で帰ってきた。《アースシールド》に手こずっていて、最終的には《ホーリービーム》で土の盾ごと貫通させてアースウルフを倒していた。防御に徹されていた為につい魔法を使ってしまったみたいだ。
要練習だな。戦っているうちに対処の仕方も思いつくだろう。次のモンスターを見つけそちらへ向かった。だがそこに居たのはサーベルウルフ2体は同じだが、アースウルフではなくファイヤウルフだった。もちろんファイヤウルフを《鑑定》すると、所持スキルにはレベル1の《火魔術》があった。さっきのアースウルフは毛並みが土色だったが、今度のファイヤウルフは燃えるような赤色だ。ファイヤウルフは近付いてくる最中にも《ファイヤーアロー》を飛ばしてきた。
「避けろ!」
俺とソフィアは飛んでくる《ファイヤアロー》を横へ飛び回避する。間合いを詰めるとファイヤウルフはアースウルフと違い、サーベルウルフと連携して襲ってきた。サーベルウルフ1体が俺を牽制して攻めてこない。その間にもう1体のサーベルウルフとファイヤウルフで、ソフィアを先に片付ける作戦みたいだ。ソフィアはサーベルタイガーとファイヤウルフの攻撃に加え《ファイヤアロー》を回避しつつ、身体能力の低いサーベルタイガーをカウンターで倒すチャンスを伺っているみたいだった。
攻撃してこようとしないサーベルウルフに《ファイヤジャベリン》を放ってみる。単発ではやはり余裕で避けられてしまった。ソフィアみたいに相手の動きを予測して、詰め将棋みたいに追い込めるだろうか。使用する魔力から魔法を《ファイヤアロー》に切り替えてとりあえずやってみよう。《ファイヤアロー》を幾つも生成し1つ目を放つと同時に、サーベルウルフが避けそうな所にも狙いをつけて放っていく。更にそこから避けそうな場所にって駄目だ、頭がおかしくなりそうだ。何手も先を読むなんて一体どういった思考回路があればできるんだろう。
慣れない事は諦めてサーベルウルフを倒そう。まだ他に試してない事もあるしね。サーベルウルフは近付いてこようとしないし、間合いを詰めようにも向こうもその分下がるだけで何も変わらない。遠距離からの魔法も範囲魔法なら問題ないが、単体魔法は当てるためには頭がおかしくなりそうだ。ここで試していなかった新しい装備で上昇した、俺の速度を試してみる事にする。サーベルウルフに向かって本気で間合いを詰めてみる。一瞬にして間合いが詰まり、サーベルウルフが目の前に迫る。サーベルウルフは驚き硬直して動けないでいた所を斬り伏せる。
思っていたより早く動けて驚きだ。20%も上昇したのだ、当たり前か。これからはこの速さに慣れていかないといけないなと思いつつ、ソフィアの方はどうなっただろうと目を向ける。なんとかサーベルウルフは倒したみたいで、ファイヤウルフと対峙していた。
ファイヤウルフが《ファイヤアロー》を放ち、避けた所を狙ってソフィアに飛び掛かる。ソフィアは空中で身体を捻りそれを避け、捻ったことによる回転運動を利用してカウンターで横薙ぎにグラディウスを振るう。ソフィアのカウンターは深くは入らず、再び対峙するソフィアとファイヤウルフ。次はソフィアから仕掛けた。ファイヤウルフは近付いてくるソフィアに向けて《ファイヤアロー》を放つが、ソフィアはそれを避けながら間合いを詰めていく。ファイヤウルフが間合いを取ろうとするが、それ以上の速さで間合いを詰めて《デルタスラッシュ》を放った。ファイヤウルフは《デルタスラッシュ》を避けきれず灰になっていった。
その後アースウルフやファイヤウルフ以外にも《水魔術》を所持しているウォーターウルフに、《風魔術》を所持しているウィンドウルフもいた。闇や光はいなかったが、今後出てきそうな感じではある。ソフィアはソフィアでアースウルフに魔法なしでリベンジも完了し、いよいよ守護者戦に行こうという話になり、ホワイトゲートを見つけてそちらへ向かった。




