漆黒の防具
外はまだ明るく夕暮れまでは時間がありそうだった。トリスティアの森を出てティーリアの街に向かって街道をソフィアと並んで歩く。
「街に戻ったら冒険者ギルドに行って守護者の情報を集めよう。挑戦はそれからだから明日かな」
「明日が楽しみ」
「俺も楽しみだよ」
10層には最後に出口を守っている守護者がいる。要はボスだ。守護者と戦うのは初めてなので、準備は念入りにしておきたい。
街に辿り着き、冒険者ギルドへ向かう。冒険者ギルドの中に入ると、早めに帰ってきたおかげか人もそんなに多くなく空いていた。カウンターに居るプリメラさんを見つけてあいさつをする。
「ショウジさん、今日はどうされたのですか?」
「今日はダンジョンの攻略が9層まで終わったので、10層の守護者の事を教えてもらいにきました」
「もう9層まで攻略ですか、相変わらずすごいですね」
ちょっと待っててくださいと言い残して、プリメラさんは資料を探しに奥へ行ってしまった。そして戻ってくるとそこにはティーリアの街の南にあるダンジョンの資料だった。全くもって同じという訳にはいかないだろうが、参考にはなるだろう。
今行ってる東のダンジョンが終わったら、南のダンジョンの方へ移るだろうから、ネタバレを防ぐためにボスの所だけ話を聞く。だが守護者は倒されてから1日経つと復活するらしく、何度でも戦えるらしい。
普通のモンスターより強いが、倒した時に手に入る物もレアな物があり、冒険者が頻繁に倒している。その為になかなか出会う事はないそうだ。
守護者がどういったモンスターかを聞くのはやめて、レベル30くらいのペアで戦って勝てるか聞いてみた。プリメラさんの返答は厳しいかもしれないとの事で、もし挑戦するなら脱出用のアイテムを用意した方が良いだろうと言われた。そのアイテムはイジェクトストーンと言って、それを砕くと一時的に砕いた場所に白い膜、正式名称ホワイトゲートを作り出すらしい。ちなみに入り口はブラックゲートと言う。
イジェクトストーンは冒険者ギルドで売っているという。値段は結構高いらしいが、ダンジョンに行くなら1個はもって行きたい。値段を聞いてみたが、盗賊の所持金やら報酬やらで懐の温かくなっている俺には、問題なく買える値段だった。1個あればパーティーメンバー全員脱出可能らしいのだが、どちらでも使用できるように2個購入して、そのうちの1個をソフィアに渡す。
「危ないと思ったらすぐ使ってくれていいからね」
ソフィアが頷きイジェクトストーンを受け取って《道具》に仕舞う。俺も失くさないようにイジェクトストーンを《道具》に仕舞った。守護者の詳細を聞かないのならば、後は明日挑戦するのみだ。イジェクトストーンがあるから安心して挑戦できる。後はダンジョンで溜まった素材を買い取ってもらったり、クエストを更新して冒険者ギルドを出る。冒険者ギルドを出た後は装備屋へ向かう。一応装備屋のおっちゃんにもアドバイスを貰いに行く為だ。装備屋に入りおっちゃんに挨拶する。
「おっちゃん、また来たよー」
「おう、誰かと思ったらあんちゃんか。どうだい、ダンジョンの方は順調かい?」
「それが明日10層に行くから、守護者との戦いも考えて今の装備で大丈夫かなーと思って」
「あんちゃん10層って、いくらなんでも早過ぎじゃないかい?」
おっちゃんが驚いて聞き返してくるが、事実なのだから仕方がない。それよりもこの攻略ペースは普通じゃないのか、これから気を付けてゆっくり攻略して行ったほうがいいだろうか。ただソフィアがそれを許してくれるかどうかだな。逆にさっさと深層の人の来なさそうな所まで駆け抜けたほうが、他の冒険者の記憶に残りにくいかもしれないと考え、それもありだなと思う。
興奮しているおっちゃんを宥めて、これからも使っていける防具がないか聞く。ソフィアの方は防具は新調したばかりなのでそれで問題ないそうだ。俺の方の防具はせっかく貰った物なのだが10層に行くならばより良い物に変えた方がいいらしい。おっちゃんが見繕ってくれた物を持ってきてくれた。そこには黒を基調にした防具がいくつかあった。
「これはうちで扱ってる中ではかなり上位の物でな、値段はちと高いがダークネスウルフの素材から作られた防具だ。漆黒の毛並みは生半可な刃物じゃ通りもしねぇ。更には装備者の能力値を底上げする能力付きだ」
なんか滅茶苦茶強そうな防具が出てきた。ダークネスウルフって名前からして超強そうなんですけど、そんなモンスターの素材で作った防具とかかなり高いのではないだろうか。おっちゃんに値段を聞いてみると、予想通り値段が高く今までの装備の金額とは比べ物にならない。
「まぁ値段は結構するがもう10層とか行くくらいだ、この先も長いこと使えるから防具はしっかりしたのを買っておきな。武器は例のやつで問題ないだろうしな」
「わかったよ、それじゃこの防具を貰うよ」
盗賊討伐で手に入ったお金が結構なくなってしまうが、かなり良い装備なのは間違いないだろう。漆黒の防具はスキルがついている為ランク的には《特別級》らしい。装備してみるとステータスに防具の能力《漆黒狼の寵愛》が表示されていて、更に能力値のAGIの部分が跳ね上がっていた。《鑑定》して装備を調べてみると《漆黒狼の寵愛》は装備者のAGIを+20%上昇させ、状態異常の毒を無効化する能力らしい。装備のもともとの防御力も高そうだし、攻撃を避け損なっても大分軽減してくれそうだ。下級冒険者になったとはいえ、冒険者になってからまだ日が浅いのにこんなに良い装備を着けてもいいのだろうか。
「あんちゃん似合ってるぜ」
「ショウジかっこいい」
「なんか俺には勿体無い気がするけど、ありがとう」
「そういえばエルフの嬢ちゃんの武器はどうする?杖は前ので良いとして、護身用の短剣は新しいのにするかい?」
防具に気を取られて武器の方を忘れていた。ソフィアがグラディウスをおっちゃんに見せる。ダンジョンで鋼鉄を集めて《精錬》したのを話した。
「この武器なら問題ないな。次の20層の守護者の前には変えた方が良いかもしれないが今はこれで十分だ。防具は結構良いやつだが30層前には見直した方が良いかもな。後は何かレア素材を手に入れたら持ってこい。格安で装備を作ってやるぜ」
「わかった。何か手に入れたら作ってもらいに来るよ」
おっちゃんに別れを告げて装備屋を出る。外は丁度日が傾きオレンジ色に染まり始めていた。用事は済ませた俺とソフィアは、明日の守護者戦に心躍らせながら一緒に宿へ向かうのだった。




